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第5話 幼いときからリーダーシップを身に着けておくは大事

 さて、俺は数えで7歳になった。


 両親の会話などからようやく今が何年なのかもわかり始め今は永憙元年(145年)。


 昨年の建康元年(144年)に順帝が崩御し、わずか2歳で沖帝が即位したが幼少のため当然政治などはできず、外戚の梁氏により朝政が掌握され、漢王朝の腐敗と民衆の負担増による不満により各地で叛乱が発生しているらしい。


 そして沖帝は正月早々病死し、また新しい皇帝が即位したらしいな。


 沖帝の死因は外戚の梁冀による毒死であるという噂もあるようだが、3歳の皇帝をわざわざ毒殺する必要性もない気がする。


 そして即位した今上帝もすぐに殺されてしまったはずで、もはや皇帝に権威など残っていないというのが実情なわけだ。


 本当に日本でいう室町幕府の末期に、似ているような気がする。


 それはさておき3歳から続けて行っていた馬術・弓術・格闘術・蹴鞠の成果は出ていて俺は同年代ではそれらの腕が最も立つ者としてガキの集団のリーダーに上り詰めた。


 そして今日は同年代の子供同士での蹴鞠の試合だ。


「よし、今日も勝つ!」


「おおっ!」


 馬術・弓術・格闘術は個人の能力に過ぎないが蹴鞠に関していえば司令塔として誰がどう役割を持って、どのように動いているかを把握する必要がある。


 これはすなわち戦場で指揮を取るために必要な要素でもあるわけだ。


 無論この時代では武器防具が貧弱なこともあって個人的な武勇も重要なのだが戦国時代以降は集団戦における指揮能力も大事になっている。


「右手が薄い、そっちから攻撃をかけろ!」


「了解!」


 そもそもスポーツというのは基本的には戦争を単純化させたものであることが多い。


 蹴鞠はお互いの陣地を取り合うという意味でも十分代理戦争であるし、人間をどう動かすかで攻撃や守備をうまく行うかという実践的訓練の場でもあると思う。


 象棋という将棋のもとになった盤上ゲームもあるが実戦ではのんびり考えながら完全に意図通り動く人間などいないからな。


「中と左に入れ!」


「了解!」


「了解!」


 その点蹴鞠は刻一刻と変わる状況に対してそれを把握してわかりやすく行動を指示して、うけた側も指示の意味するところを理解できるようにしないといけない。


 指示に対しての判断力とそれを行動に移す瞬発力は大事だ。


 そしてそれは格闘術などの別の分野にも適用される。


 ライフキネティックを代表とするシナプソロジーは「2つのことを同時に行う」「左右で違う動きをする」などで脳を鍛える。


 脳筋などと言われるが様々な情報と様々な選択肢から最も正解と思われる行動を瞬時に判断し、実際行動に移すというのは大事なことだ。


 だから、成人するくらいまでは基礎的運動能力や判断能力を完全に身につけておきたいな。


 知識だけ頭に入れても実戦では多分役に立たないだろうし、筋肉をつけようとしてもある程度の年齢までは体を壊しやすくなるだろうから逆効果だろうし。


 細かく攻守が入れ替わるというのは攻撃を行いながらも守備の薄い場所を作らないようにしたりしないといけないとか全員が前に出てしまっては簡単にカウンターを食らう、だからといって守りながらも次の攻撃の機会を作りゴールを狙い続けなければならないし、実戦は限られた時間の中で行われるわけでもない。


 とはいえ今回の試合も無事勝ったが、ある程度人生経験がある人間がやってるのだからずるなのも間違いはない。


「よーし今回も勝ったな」


「そうですね!」


「俺達に敵はないですよ」


 そんなことを簡単にいうチームの連中に俺は言う。


「いやいや、そんなに甘くないぞ。

 実際ならば年が若いからなどという理由で手加減などしてくれんのだからな」


 そういう俺に不思議そうに聞いてくるやつがいた。


「仲穎は一体何と戦ってるんだよ?」


「この先に起こる未来という運命かな」


「いや意味わからんぞ」


 まあ意味はわからんよな。


 これから先に世は乱れて党錮の禁などが原因で黄巾の乱が起こりその後にいろいろ面倒なことになって、最終的に俺は最悪の暴君に成り果てるなんて言っても信じられるわけがない。


 だからといっておそらく未来は大きく変わることはないだろう。


 なにせ俺は中央とつながりのある立場ではない上に腐敗は頂点に達しているのだから普通に考えれば漢王朝の存続は不可能なのだから。


 俺がおとなしくしていたところで韓遂などの反乱は起きるだろうしな。

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