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第37話 とりあえず出来ることからやっていこう

 さて、この時代においては一部の豪商の屋敷や官庁の建物、穀物倉庫などを除くと一般庶民の家はだいたい竪穴式住居だったりする。


 これは竪穴式住居が木材の高い加工技術を必要としない、必要な木材が少ないということや夏でも冬でもほぼ一定の温度を確保でき、食糧の保存性も高いというメリットもあったりするからで、日本でも竪穴式住居が室町時代ぐらいまで使われていた場所があった。


 また、湿気の多い場所だと夏はジメジメする欠点があったりするが比較的乾燥している場所では夏も涼しく過ごせるというメリットもあったりする。


 遊牧民の場合はパオと呼ばれる大きなテントだったりもするので基本的にプライバシーとかは殆ど無いのだが。


「これについては改善の余地は今のところはないかな……」


 鉄製の木工工具もある程度はあるとは言え板を作ったりするのは実は結構大変なのである。


 もっとも戦車や馬車の軸を大した工具もなしに手作りで作ってしまうくらいには木工技術もあるわけなんだけど、これはむしろ職人技と言うべきかな。


 この時代は戦車は廃れているが荷物を運んだりするのに馬車は普通に使われてる。


 日本と違って平らな場所が多い中国ではその運用もしやすいし、場合によっては馬の変わりに驢馬や牛などが使われる場合もあるが。


「これについても大きな改良の余地はないか」


 サスペンションとか軸受(ベアリング)とかの、馬車側の改良の余地や道路の舗装などやれないこともないというものはあるんだが、コストパフォーマンスを考えるとそこまで優先するものでもないと思う。


「むしろ街道の治安維持を優先だな」


 涼州でも国境警備と見張りをやっていたことがあったが、この時代は銅臭政治と揶揄され、官職を得るために賄賂が横行して、その賄賂分を取り戻すために農民などから搾取をしてる連中が多かったから、農民も逃散したり反乱を起こしたりすることが多かった、でそうなれば野盗山賊のたぐいも増えるわけで、治安も悪くなってくるわけさ。


「行軍訓練にもなるし兵士の街道の巡回警備はやらせるべきだろうな」


 賈詡は俺の言葉にうなずく。


「それはよろしい考えかと」


 どんな時代でも兵站と兵士の行軍速度というのは重要なものであるがどうせ長距離を歩く訓練もしなければならないのであればある程度の集団である程度の距離を歩き回る巡検を行わせるのは役に立つだろう。


「履物もきちんと用意せなばならぬか」


 賈詡は俺の言葉にうなずく。


「そうした方が良いかと」


 後漢の履物の事情として、草鞋(わらじ)か暖かい場所では裸足がふつう。


 しかし正規軍の兵士用装備としては麻のゲートルや靴下なども支給されている。


 機動力の高い軍隊の維持には足の履物などは重要なんだが、これも革を使ったローマ式サンダルのほうがいいかもな。


 草鞋は簡単に潰れてしまうし


 巡検の際には馬に乗る者もいれば徒歩のものもいる感じでいいだろうけど混ぜた上で運用するより、騎兵は伝令とか後詰めに使うほうがいいかもな。


 このあたり馬のために必要な食糧である馬匹と水を手に入れるのがちょっと大変だったりもするからある程度は歩兵も必要になってくるしな。


 それから武器防具に関してはそれなりに位の高い指揮官用には両手持ちで青銅製の矛や刀をもたせ、部曲を持つレベルのものには鍛造した両手持ちの鋼の矛や鋼の刀ももたせ、一般の兵士には銑鉄を鋳型で固めた大量生産の鉾と皮を膠でに固めた手持ちの盾も持たせて、鎧は上級指揮官は魚鱗甲・下級指揮官は金属の札甲・兵士は膠鎧を配ってなるべく鎧を安上がりにはするようにしてみた。


 流石に全部に高級な武器は無理だし少しずつ試行錯誤をしていこうかな。


「あとは治水灌漑の整備もさせるか」


 中国は川はたくさんあるがまっ平らな土地なので、農業用水の利用に難がある地域が多く、基本的には天水に頼る場所が多い。


 更にこの時代は豪族が荘園を持つ事が多く、そういった場所では治水などをできない場合も多かったりする。


「やれやれ、あれこれ問題が山積みだな」


 まあ、まだ大きな反乱が起きてないだけマシかも知れないがしばらくあとに江南では会稽あたりで大規模な反乱が起こるはずなんで、涼州・并州・幽州は鮮卑の侵略に悩みつつ荊州や揚州などは反乱に悩んでるはずなので、そろそろいろいろときな臭くなりそうだ。

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