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第21話 武衛将軍に昇進したし、しばらくは洛陽にいるか

 さて、張奐に従って戦った俺は羽林中郎将から四品の武衛将軍に昇格した。


 禄高は2000石なので変わらないのだが四品というと日本の正四位・従四位相当なので結構高い官位なのだな。


 そしてここまで官位が上がるとそれなりの目を向けられるから不思議なものだ。


 せっかくなので街角の民衆の噂や商人達の声を聞いて、現状の漢王朝・宦官・清流派・各地の軍閥などについて情報を入手してみることにしよう。


 まずは新たな天子の評判だが先帝の桓帝には男子がなく、同じ名門の河間王家出身であったことから、桓帝の皇后の竇妙、大将軍竇武、太尉陳蕃らにより擁立されたのはいいのだが彼の家は傍流だった上、父も早くに死んでおり母と二人で貧しい暮らしに耐えて生活していたそうだ。


 なので後ろ盾になるような公卿もおらずそれ故に竇氏や大将軍となった竇武には都合が良かったからこそ彼が擁立されたのだが、後漢の皇室の財産は、先代の桓帝が使い尽してほぼ空っぽになっていた。


 元々桓帝は最も位の低い采女の田聖を皇后に立てたかったらしいが、田聖が卑賤の出自であったことから太尉の陳蕃に反対され、貴人の竇妙が名目上の皇后に選ばれた経緯があった。


 そのために竇妙は桓帝に相手にされておらず、桓帝が亡くなって皇太后となった竇妙は、桓帝の棺の前で田聖を殺し、他の后たちも皆殺しにしたらしい。


 よくある話でもあるがなかなかに後宮の権力争いも血なまぐさい。


 その後、竇武と陳蕃が宦官を粛清しようとしたが、竇妙のせいで中途半端になり結局竇武と陳蕃は殺され、竇妙は殺されはしなかったものの、捕らえられて幽閉され以後は政治に口をだすことはできなくなった。


 史実だと監禁されたまま死ぬことになったがおそらくそうなるだろうし自分の行動の結果だから誰も責めることはできまい。


 そして竇妙が幽閉された後は霊帝の実母である董氏が代わって皇太后の権力を得ることになり、天子は母である董太后が発案した官位を金で売るという政策を行った。


 日本の戦国時代で正親町天皇が同じ様に官位を金で売るようになっていったのに似てるな。


 これにより、それまで影で行われていた官位の売買が公に行われ誰でも金さえ出せばかえるようになり、とんでもないモラルハザードを招いた。


 なぜなら銭で官職を得ることができるとなると、官職に就く者はより高い官職を求めて民衆に重い税を課し、銭を払って官職を得た者はその払った銭のもとを取るため赴任した場所でさらに民衆から銭を搾り取る悪循環に陥ってしまったからだ。


 ちなみにこの売官制度によって官位を買った者の中には曹操の父曹嵩がいて一億銭で三公である太尉の官職を彼は買っている。


 諡の「霊」には「宦官のかげにいて何をしたのかよくわからない存在だった」という意味合いがあるようだが彼のせいで後漢は滅んだようなものだ。


「やれやれ全くもって困ったものだな」


 これにより民心は漢王朝より完全に離反し、反乱が頻発するようになった。


 この後は手が回らなくなり涼州や并州の異民族の侵入や反乱で一部の地域を手放したりもするようになるくらいだ。


 宦官については清流派の弾圧に乗り出しつつあるようだ。


 そして清流派の士大夫の名士達は評価の高い天下の名士にそれぞれ位階、称号をつけて、位階を上から『三君』『八俊』『八顧』『八及』『八廚』と呼んだりしているようだ。


 史実では『八俊』 の筆頭である李膺は故郷に帰ったらしい。


 それ故に涼州三明の張奐や段熲、皇甫規以外の地方豪族に推薦された武官も殆ど地元に帰ってしまい、実質的な軍事力も低下しているようだ、その結果が黄巾の乱で明確になるんだけどな。


 俺はそっと呟く。


「やはり漢王室の命運は尽きつつあるらしいな」


 それでもなんとか俺が後にたどる運命を変えられるようにするしかあるまい。

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