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第2話 子供のうちにやれることは殆ど無いな

 さて、乳児の間に自分の意志でできることはほとんどないから、暫くの間は眠る、授乳、排泄、眠るの繰り返し、まともに発声もできす体を動かすことも出来ないってのは案外辛いもんだな。


「今度の子供は元気に育ってもらいたものだな」


「きっと大丈夫ですよ」


 両親の会話を考えればやはり兄として生まれたはずの人物はもう死んでいるようだ。


 生まれたものの半分が成人まで生き残れば良い方である時代だからこれはしょうがない。


 最も、父親がそれなりに地位があり金もある家なので、屋敷などはそれなりに良いものだし、産着も麻ではなく絹糸の良いものを着せてもらってる。暖を取るための薪などにも困ってないのはとても助かるし、両親も割と普通な人物だと思う。


 無論、この時代の役人というのはある程度小ずるくないとやってられないわけだが、漢民族は異民族であり蛮族である羌族に対する偏見が強いのが普通なのだけど、このあたりには漢族と羌族の混血の人間も少なくないためか、そういった者たちに対しての差別も無く扱ってるようだ。


 馬騰の父親である馬平は羌族の娘を妻としていたので馬騰は混血なわけだったりするが、そこまで珍しいことでもないらしいな。


 もっとも、異民族に対しても偏見を持たないというのは、董卓が洛陽に入った後に実力主義を用いたものの、結局は生まれた家柄・血筋・名声・教養などを優先とする漢の政治形態に従い董卓を見下す連中に嫌気が差して暴君になるわけだけど。


 日本の戦国時代でいうなら董卓は三好長慶的ポジションだといってもいいだろう。


 祖父が宦官であるという理由でやはり叩かれた曹操が実力主義で結果的に成功したのは、董卓と反董卓連合軍の戦いでどさくさ紛れに各地の有力な豪族が殺されたり、袁紹と袁術の仲間割れと袁術が偽皇帝となったことで袁家の権威を落とし、それにより漢室の権威そのものを失墜させたのもあるはずだが。


 そのうち段々と筋肉もついていき、十ヶ月ほどで歩けるようになれた。


「すごいねー、もう歩けるなんて」


 そういう母親にてへと笑って答える。


「あーい」


 大したことでなくても何かができた時に褒めてくれる親というのはいいものだ。


 それが「自己肯定感」につながって、自信を持って行動をできるようになるのだから。


 もっとも社会というものは汚いものだということも知っておくことは本当は必要なことなんだとも思うけどな。

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