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第174話 宗教団体による医療行為は禁止としようか

 さて、国家大学での儒教と識字教育の切り離しに伴い、医療についても学校で教えることにした。


「となれば宗教による治療行為は禁止せなばな」


 曹操や曹丕は淫祠邪教(いんしじゃきょう)と呼ばれた民間宗教の布教を禁止し、その祠を破壊して強制的な布施の徴収をやめさせた。


 淫祠邪教には有名なところで太平道、五斗米道、仏教などが含まれているが細かいところを追うときりがない。


 中国の古い宗教である道教は、哲学でもあったが、 神仙の術を行う仙人や方士が行なう咒禁などは哲学ではなく「方術(呪術)」なので現世利益を必要とする。


 そして冀州を中心に主に中原で勢力を拡大した太平道は治療と除災に関わる方術を主体として、医療行為を行い民衆から人気を得ていた。


 これは『太平清領書』を病人に読み聞かせ、吉凶や禍福は当人の日頃の行いから起こり、善行の積み重ねが長寿につながるとおしえ、静かな部屋での内省を行わせながら、呪符を焼いた灰を混ぜた水「符水」を飲ませて病を治すというものでおそらく符水自体には治癒の効果はないが、十分じゃ無い栄養を取らせて休養を取らせることで病が治ったものも多かっただろう。


 房中術についても触れられていたので若い頃の曹操は淫祠邪教として弾圧したようだ。


 だが最終的に十余年で数十万の信者を得て、太平道は黄巾の乱を興したがそれは失敗に終わって実質的に滅んだ。


 もっともその呪術的な行為の宗教組織とは関係なく、各地で黄巾残党はしぶとく残り続けたが。


 一方の五斗米道は房中術を積極的に取り入れていった。


 仙人とされる左慈は房中術をよくしたとされており、房中術は長生術のひとつで、不老長寿を目指すことにあったがこのあたりはインド仏教の影響などもあるかもしれない


 五斗米道では入信儀礼であると同時に男女陰陽の気の交流と天地の気を交わらせることによる中道を目指す救済儀礼でもあったが、道教では男は陽で女は陰であるため、人は陰陽の交わりを絶ってはならず、陰陽が交わらなくなると気が滞り病気になりやすく長生できなくなるとしたわけだが、本来淫蕩に耽って快楽を追い求めるようなことはせず、節制して養生と体力の強化に努め、交わるには女性を心ゆくまで楽しませ補益することが重要であるとされているがこれが守られていたかは怪しい。


 逆に肉体や肉食を不浄として性欲に否定的な仏教は社会的生産性の低下につながることから中国の古代王朝では特に弾圧された。


「そりゃ性行為は駄目、結婚も駄目をみんながやったら国が成り立たんからな」


 また牛肉を食べない代わりに牛乳をたくさん飲むインドと違い、牛肉は食べるが牛乳などは飲まない中国では肉食禁止も実情に合わなかった。


「肉を食べて乳を飲まない地域には合わない考えだよな」


 五斗米道は三代目張魯の時代に最盛期を迎え、信者に五斗の米を提出させそれを皆でたべたことから五斗米道と言うが、病の治療そのものは祈祷を用いていた。


 まあこういった宗教がはびこった原因は霊帝による銅臭政治の治世が民衆にとってはあまりに過酷なものだったからであって、民衆や宗教指導者の側ばかりが責められるべきではなかろう。


「とは言え今後は取り締まっていくべきだな」


 華陀などの外科手術の知識や内科の診療に必要な知識とかちゃんとした人体の構造についての知識に基づく医学を学問として学ばせる以上は民間宗教の治療で余計な民間医療や迷信などは廃止させるべきであろう。


 俺は天帝と聖帝以外を崇める宗教の布教禁止と民間療法や呪術的な行為による布施の強要を禁じさせ、迷信と思われるものは廃止させるように董超に伝えた。


「これでなんとかなるかね」


 ただ民間療法にせよ迷信にせよ簡単になくなるものではないだろうし、特に悪質なものでなければ気休め的な効果もあるだろうからあまり厳しくしても駄目かもな。

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