表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/177

第172話 学校制度を少し変えておこうか

 さて、前漢時代には既に首都に所在する最高教育機関として太学が存在する。


 これは前漢の武帝が修学者である董仲舒(とうちゅうじょ)の献策によって設置したのが始まりで、太学は儒教を正統学問としてその習得の場所とされ、前漢の時代の太学は長安にあり、後漢の時代には洛陽に移されたが、そこに在籍する学生は地方から選抜されて、試験に応じて役人として任用された。


 党錮の禁で清流派が弾圧されたように太学は一種の門閥でもあった。


 太学の下になるのは各州の郡に設置された地方太学に相当する郡国学で、こちらも儒教の経書や経学の講授を中心とする教育を行っており、多くは郡や県の役人になるが一部は太学へ移動して中央の役人になっている。


 その下は現代の小学校にあたる「序」では読み書きと九九、中学校にあたる「庠」では儒教の孝経と論語を暗記、高校にあたる「県校」では暗記すべき書物の種類が増えたりする。


 これらを設置したのは新の王莽で、古代中国の夏・殷・周の時代には小学という初等教育機関があったとも言われこれは実在が怪しいが、王莽はその小学の復活を目指していたようだ。


 もっともそこで学ぶことができるのはよほど金のある名家の子弟かよほど頭が良くてなおかつコネがあって、名家からの推薦を受ける事ができたものだけであるが。


 序に通える初等教育の就学者は全人口の2%程度でほぼ男のみ、太学生などの知識人といえる層は0.3%程度で、殆どの人間は読み書きも計算もできないが、農業や兵士をやる分には特にそういった教育を受ける必要がなかったのでこれは仕方ない。


 関羽は『春秋左氏伝』をほぼ暗誦出来たそうだが、金持ちの商人の子供として序や庠もしくは私塾に通っていたのだろうな。


 張飛も肉屋と言うか家畜の屠殺や解体や流通をおこなう金のある商人の息子なのでおそらくある程度は学があったはずだが。


「これもいろいろ改めんとな」


 役人になるための知識として大切なものをちゃんと学び、更にその際に道徳をきちんと学ぼうとするのであればいいのだが、西洋の神学校の授業内容が神学に偏り過ぎなようにこういった漢の公立学校は儒教のお作法や丸暗記だけが大切で根本的に教育機関としてはいまいち役に立っていないところもあった。


 なお、公立の学校に入れない場合で役人を目指す者たちは儒教を学ぶために劉備や公孫瓚が盧植のもとで学んだように「私塾」の門を叩いてそこで学んだ。


 太学や郡国学などでは国家に所属している学者が教鞭をとって生徒に教えていたが、私塾の教師は引退した官僚が教鞭を取ることが多かった。


 もっとも私塾のほうが実際には役に立つことを教わっていた可能性が高く、さらには役人としての推薦を受けることもあるので、本気で儒教を徹底的に学んで儒教の学者になりたいという者はともかく、役人になりたいというものはむしろ私塾の門を叩いていたようである。


 もっとも人気の私塾には1000人もの志望者が押しかけたりするので、そういった者に学問を教えるのは門弟だったりもするからコネを作れるかどうかは運次第でもあったようだが。


「識字教育と儒学は分けるべきだろうな。

 あと医療、錬丹や建築、造船などについても個別に学科を作って学びたいものには学ばせるか」


 西洋における錬金術は中国においては錬丹術として発展し、火薬の発明は煉丹術の副産物であったりもするし、建築造船などには材料の強度計算を行なうための高度な数学能力が必要だったりもする。


 そして錬金術の金丹には水銀や砒素といった毒物になる鉱物が多量に含まれて、それを服用して逆に命を縮める者が後を絶たなかった。


 こういったことは正しく伝えていかないとな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ