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第165話 青洲にて袁譚は降伏し、袁尚達は倭国に逃亡したか

 青州に派遣した曹操からの早馬の使者が到着した。


「袁譚は青州刺史としての地位を引き続き与えてくれるならばこちらに従うとのこと。

 袁煕・袁尚・袁買は楽安国より船で海を渡り倭方面へ逃げ出したようです」


 俺は正式には現役を引退しているのだが、こうして必要な情報は賈詡や李儒などが伝えてくれる。


「ふむ、青州刺史は難しいが平原の太守であれば問題はなかろう。

 そう董超には伝えてくれ

 しかし、倭国では桓帝・霊帝の治世のときから大いに乱れ、さらに互いに攻め合い、何年も主がいなかったときくがまさかそちらへ逃げ出すとはな」


「海を渡ってしまえばある意味安全ではありますからな」


「名声も悪名も海を渡ってしまえば関係ないのは事実だな」


 なお倭国に関して言えば57年に後漢の光武帝より漢委奴国王の金印を贈られた奴国の国王が倭国の王となり、奴国の武力支配による九州北部の統一が行われていたはずであったが、実状はそうは行かずに現状は戦乱が起きている。


 朝鮮半島から満州にかけては高句麗・百済・新羅に小国の連合国家である伽耶がそれぞれ争っており、倭国では永初元年(107年)の倭国王帥升が後漢へ使者を出し金印を手に入れたが、帥升に始まる倭国王の系統は180年から190年頃に断絶し、倭国王位の承継をめぐる争いが起こっているらしい。


 もっとも倭国王は漢の皇帝ような強固な中央集権政治のトップというわけではなく、たとえば日本で言う後の室町幕府のような、豪族や国などの集団の勢力間の利害を調整するために王位は置かれていたが、その利害調整を担いうる人物が不在になったか、存在していても調整不可能な状態になっていた可能性が高い。


「まあ袁家の兄弟が海の向こうへ逃げたなら無理に追うこともなかろう。

 そちらでは家柄など何の役にも立たぬからな」


「かしこまりました」


 史実においては袁煕・袁尚・袁買は烏桓のもとに逃げ込んでいて、烏桓がその保護と冀州奪回を理由に攻め込んでくるのを良しとしなかった曹操は、郭嘉などの有能な人材や兵士を多数失う被害を出しつつも烏桓を征伐しているわけだが、朝鮮半島なり九州なりに逃げたとしても現地勢力が手助けして冀州を奪回しようとすることはあるまいしな。

 

 卑弥呼の即位した年は霊帝光和年ということで178年か 184年の間くらいであるらしい。


「必要であれば倭国のどこかを支援して早めに騒乱を収めさせたほうがいいかもしれぬな」


「それもよろしいかと」


 どこかが使者を派遣してくれば、それに応じて対応することになるかな、まあ、大乱に深入りするつもりはないが。


 それはともかく袁譚が降伏して、残りは海外に逃亡したことで事実上の再統一は完了したと言っていいだろう。

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