表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/177

第150話 皇帝誘拐についてどのように公表するかだが

 さて、自称漢の忠臣による俺の暗殺未遂に続いて、これまた忠臣による皇帝救出作戦は無事成功し、張邈に釣られた王允や蓋勳のような天子第一主義者はほんの少しの私兵を連れて南陽から脱出していった。


「これで寝首をかかれる可能性も減ったろう」


 もっとも俺を排除すれば、そのまま俺の持ってる権力が手に入ると考えるやつなどはまだいるかも知れないが。


「さて今後について信頼できそうなやつを集めて話をしてみるか」


 史実では曹丕が皇帝に即位したときに、蜀漢では献帝が殺されたとされて、劉備はそれを理由に自分も帝位につき、簒奪者である魏を滅ぼすべしという理屈で北伐に進んでいるしな。


 俺は賈詡を筆頭に李儒、荀彧、郭嘉、徐庶、蔡邕といったメンツを呼び寄せた。


 こちらに不利になるような情報が俺の支配地域に流れて広まっても困るし、現在の皇帝が王允や蓋勳とともに南陽からいなくなったことは公式に通達しておくべきではあろう。


 曹操は相変わらず袁紹と逢紀・許攸の離間計のために冀州で活動しているのでいない。


「うむ、皆には毎回毎回忙しいところ呼び寄せてすまんな」


 俺がそう言うと賈詡が皆を代表するように言った。


「いえいえ、天子がここを離れた件に対しての対処をどうするか早めに決めなければなりませぬでしょう」


 俺はその言葉におおきくうなずく。


「うむ、そのとおりだ。

 天子と漢王室の絶対主義者共がいなくなったのは、正直面倒ごとも減って喜ばしいと思うが、今回のことは俺の失点であるとも受け取られかねぬのも確かだ。

 田豊などがこちらに寝返った代わりにはたから見れば、あちらに天子や王允や蓋勳などが寝返ったわけだからな」


 荀彧が深くうなずいていった


「たしかに十分あり得る話ですな。

 しかし、暗殺者の言い分や天子が一般の食べ物を食べようとしてそれを投げ捨てたことなどをはっきり示して、統治について理解をしてもらえなかったことをはっきり民衆には示すべきでしょう」


 李儒もうなずいて言った。


「何顒と伍瓊、更に天子や王允や蓋勳も霊帝の治世を美化し、民が苦しむことをなんとも思っておらぬということを統治している領域に広めるべきですな。

 さすれば民衆がこちらに失望する事はありますまい」


 俺はそれを聞いて李儒へ問う。


「一見繋がりがないように見えたそれらの者たちは全て袁紹と繋がっていたということにすればよいのだな」


「はい、表向きはそうでしたが、事実として繋がりはあったとしてよいかと」


 そこへ郭嘉が口を挟んだ。


「今回天子の誘拐を行った連中と我々は民衆の扱い方の意見の対立の末に彼らが勝手に去ったということにしておきましょう。

 こちらはその上で彼らに危害を加えていないこととその意思のなかったこともはっきり伝えるべきでしょう」


「ふむ、それもそうであるな」


 蔡邕が付け加えるように言った。


「今回の庶民の食べ物に対する扱いなどを加えて、その行動について天子の非を鳴らして、今後は二度と保護しないと表明しておくべきでしょう。

 我々は民を大切にするものであるとはっきり表明するのです」


 俺はその言葉にうなずいた。


「たしかにそうであるな」


 徐庶はそれに更に付け加えていった。


「袁紹は冀州で天子は霊帝の子ではなく正当性のない人物であると反袁術連合を立ち上げた際言っていたようですので、その噂を曹(操)孟徳を通じて広めておくべきでしょう」


「ああ、それはいい考えだ」


 その後、実際に布告する文章を話し合わせた。


「天子は我々のもとから立ち去った。

 正確には行幸中に連れ去られたのではあるが、望めば帰ってくることも出来たであろう。

 俺はその前に漢室の忠臣を自称する者に命を狙われている。

 霊帝の代に起こったことを知っていただくためにも市場や農村の様子など見て回ってもらい、民衆の一般的な食事を食べてもらうことをしたが天子は稗粥を一口だけたべてそれを投げ捨て王允は天子の行動は当然といった。

 しかしながらなぜそのような状態になったかは先帝が民の実情を知らなかったからであり、天子には天子にふさわしい食べ物というのがあるなどと言っている場合ではなかった。

 それを受け入れず食べ物をなげ捨てた天子と王允には統治する資格はないと私は判断し、天子は廃位して弑逆された少帝弁の正室であった唐姫の男児を新たな天子とする」


 なお劉弁が殺害されたときに唐姫はなんとか逃げ延びていてその男児は現在7歳らしい。


 さらに父である唐瑁は彼女を再婚させたがったが、唐姫は頑なとしてそれを拒んで一人で静かに男児を育てていたらしい。


「あまり政争に巻き込みたくもないが……な」


 唐姫は割とまともな人間でその生活もそこまで苦しいものではなかったのだと思うが、権力を手に入れて狂う例はたくさんあるのが面倒なところではある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ