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第12話 宴会で地元の有力者との縁をつなぐことを優先しよう

 さて俺は成人したことで今までは扶養される側だったが、これからは扶養する側になった。

父母が住んでいるのは役人用の官舎でもあるため、俺は結婚した馬氏と牛氏、韓氏ら妻や使用人といっしょに自分たちの屋敷に移動することになった。


「とりあえずは家族での新しい生活の始まりだ、よろしくな」


「はいよろしくおねがいします」


「こちらこそ皆様よろしくおねがいします」


「皆様よろしくおねがいします」


 そんな奥さんたちに対して俺は笑顔でいう。


「しばらくは畑を耕して食い物に困らないようにしようか。

 ついでに凶作のときのために果樹も庭に植えるよう。

 それだけでも多少は違うと思うし」


「なるほどそれは良いですね」


 そんな感じで屋敷の庭にも杏や李・桃や栗などの果実を植えたりしつつ、羌族や馬氏・牛氏・韓氏などの血縁者などの人手も借りてで重度の連作障害や異民族の襲撃などで耕作放棄されている畑などを皆で耕したりして畑作の面積を増やしていった。

そんな時に羌族の結構大きな氏族の族長がやってくることになった。


「こんど羌族の結構大きい氏族の族長が何人かで来るらしい。

 その時には牛を一頭潰すことにする」


 奥さん達はちょっと驚いていた。


「牛を潰すのですか」


「ああ、羌族を手厚くもてなすのは大事だからな」


「わかりました」


 牛を潰すと言って驚いていたのは俺の妻の一人の姓が牛氏だからではなくこの時代の牛は基本食べるために飼育されているわけではなくて、畑を耕したり邪魔な切り株を引っこ抜くといった力仕事に必要な労働力であるからで、それを潰して宴席の料理と出して歓待するというのは客に対しての最上級のもてなしであるからだ。

21世紀の現代で言うなら自分が持っているトラクターを一台売ってその金で最高級牛肉を買ってもてなすようなものだと思ってもいい。

史実の董卓も牛を潰して羌族を歓待しているが牛を潰すというのは大変なことなんだ。

値段だけなら馬のほうが高いけど潰れる確率は馬のほうが高いしな。


 宴席ではイグサなどを編んだ敷物を地面へ敷き、周囲を織物で囲い各自の前に個人用の「食案」(膳)をおいて酒や食べ物を振舞う。

そしてこの時代で一番のご馳走は(あつもの)と呼ばれる肉を煮込んだスープだ。

羊羹というのは本来は羊肉を煮込んだもので冷めた時には煮こごりでゼリー状に固まるのでそれを食べたわけだな。

日本で小豆になったのは羊そのものが日本に入ってきても定着しなかったのと仏教の影響などで肉食禁止になって変わっていったからだろう。

饅頭の中身が肉でなくあんこになっていったのと似たようなものだ。

食材用の肉としては牛・馬・驢馬のような本来は農耕や輸送用に使われるものが倒れて動かなくなった時に食べるものから最初から食用の家畜として飼われている羊・山羊・豚・狗・鶏・家鴨(アヒル)鵞鳥(ガチョウ)などもたべられている。

肉は本来は食肉でないという理由も有って牛肉がもっとも尊ばれ、馬・羊・山羊・豚・狗・鶏・家鴨や鵞鳥と言った順位になる。

豚・狗・鶏・家鴨・鵞鳥は、どちらかといえば安くて庶民も食べられる安い肉という位置づけだな。

野生動物だと兎、穴熊、ハクビシン、狸、鹿、熊なども食べる。

両脚羊(ヤンシャオロウ)は人肉だが主に行き倒れた旅人の肉だな。

「不羨羊」(羊よりまずい)などとも言われるがあまり筋肉のついていない小さな子供の肉は「和骨爛」(煮れば骨まで食べられる)と呼ばれたりもする。

大切な牛馬を食べ物として出す以上に大切な家族である子供や妻子を殺して客に食べさせるのが美談にされるのは倫理観的に俺には良くわからないんだがな。

雉、雁、鴨、鶴などの野鳥も食べる。

爬虫類だと蛇、亀、蜥蜴、鰐も食うし、蛙やサンショウウオのような両生類も食べる。

魚は鯉や鮒、草魚などのコイ科の淡水魚が多く食べられ、カニ・エビのような甲殻類は淡水のものも海のものも取れれば食べる。

タニシやカラス貝などの淡水の貝も食べる。

アワビのような貝類も海の近くでは食べられているし、乾物として内陸でも食べられることもある。

鯛など白身魚なども食べられているようだがこのあたりでは手に入らないな。

その他蠍や百足、絹糸を取るための蚕のような蛾の幼虫や蛹、蝉の幼虫、羽や足をもいだバッタやコオロギ、水生昆虫のタガメやゲンゴロウ、カミキリムシの幼虫、蜂や蟻なども食べる。

ミミズやカタツムリ、ナメクジだって食べる。

中国人は毒でなければだいたい何でも食べるんだな。

だからフグなどは食べないようだ。

最も加熱すれば毒が消える蠍やキングコブラみたいな毒蛇も食べるが。


 野菜はからし菜、空心菜、青梗菜(チンゲンサイ)、春菊、ニラ、ネギ、キャベツ、ホウレンソウ、セロリなどの葉野菜、セリ、ジュンサイ、ナズナ、ワラビ、ゼンマイのような野草扱いされてる物もこの頃は畑で栽培されていて、冬瓜、胡瓜、茄子などもすでにあり大根、蕪、人参などの根菜もあり、大豆、小豆、ソラマメ、エンドウ豆、落花生などの豆類もある。

ラッキョウ、にんにく、あさつき、生姜、ミョウガなどの薬味として使われる野菜もある。

ごまも栽培されていて油はそれを絞って作ったりもする。

筍、蓮根、里芋などの煮付けも食べられていたりする。

サトウキビもあるし、油を取るために椿も栽培されたり、ヒョウタンは液体を入れるために重宝され、レンゲやウマゴヤシなども牧草として栽培されている。

意外に種類豊富だろ?

果物としては棗、桃、梨、柿、梅、(あんず)(すもも)柚子(ゆず)、赤肉メロン、青肉メロン、バナナ、ヤマモモ、林檎(リンゴ)枇杷(ビワ)、レモン、(だいだい)(ぽんかん)葡萄(ブドウ)、イチジク、ライチ、西瓜、ザクロ、グアバ、スターフルーツ、キウイフルーツなどがありクルミや栗も食べられている。

ココらへんでも手に入るかはまた別の問題だが。

意外かもしれないがキウイフルーツは中国原産。

調味料としては基本は塩と酢と麹の味噌や砂糖もあり様々な醤もある。

香辛料としてはナツメグ、カルダモン、蓼、生姜、 蘘荷、花椒、山椒、胡椒、シナモン、アニス、ハッカ、クミン、グローブなど一部はマレー半島などから手に入れてたりする。


 飲み物としてはすでに茶を飲む習慣も一応あったりする。

最も半分は薬のようなものなのでバカ高いけどな。


 話を戻すと羹は、(かなえ)といわれる青銅製の三本足の横木を通したり鉤で引っ掛けたりして運ぶための耳が1対つく大鍋で煮られそこからすくって取り分けられる。

酒に関して南方では米、北方では黍を使った醸造酒や様々な果実酒が作られていたがそんなに度数は高いものではなかったりする。

蒸留酒ができるのはもっと後だから作ってみたら高く売れるかもな。


 さて羌族の族長たちがやってきたようだ。


「今日は豪華な宴席を用意していただきありがたく思う」


 そして宴席に吊るしてある牛の頭を見てびっくりしているようだ。

牛が大事な労働力なのは彼らもわかってるのだろうからな、牛の生首があったからビックリしたわけではないはずだ。


「あまり量は用意できませんでしたが、私の最大限のおもてなしをさせていただければと思います。

 さあ皆さんどうぞ席へお座りください」


 皆が敷物の上に座り宴会が始まった。


「うむ、素晴らしくうまい肉であるな」


 用意したのも割と上等な”酒”だ。


「この酒もうまいぞ」


「うむ、漢人は我々を見下してろくに物も用意しない者も多いというのに若いのに大したものだ」


「はい、まだまだ若輩ものゆえこれからもよろしくお願いいたします」


 満足した羌族の族長たちは帰ってからみなで相談し牛や馬などの家畜十余頭を集めて俺に送ってくれたし羌族の一部と仲良くなることもできた。

もっとも、この頃の羌族のような異民族は後のモンゴル帝国のように統一されているわけではないのであくまでもごく一部の部族と仲良くなれただけだけど。

戦国時代の日本で1つの大名とだけ仲良くなれたようなものだと思ってもらえればいいかな。

この事により俺は涼州では名を広く知られるようになり、それによって涼州の兵馬掾の屯長になった。

兵馬掾は馬の世話係、屯長は500人ほどを率いる部隊長。

官位としては一番下の九品官で一番下っ端だが一端の武官となって、国境の警備を任されるようになったんだ。

一応、禄も300石と200石の合わせて500石もらえるようになったぜ。

21世紀の年収に換算すればおおよそ500万円くらいと考えていいんじゃないかな。

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