第116話　麹義と劉和の引き込みに成功したよ

　さて、麹義と劉和をこちらに引き込むために韓遂の配下にいた麹演と曹操を冀州西部に送って、接触を図らせ袁紹の彼らに対しての疑心暗鬼を募らせるように仕向けたところ袁紹はやはり易京攻めの失敗と輜重車を奪われた責任を取らせるということで麹義と劉和を処刑しようとしたようだ。

「まあ、現状の袁紹ならばそうするだろうな」

　袁紹にとっては麹義と劉和の名声が上がりすぎても困るはずだ。

　しかし麹演と曹操にとってはその袁紹の行動は予想できたことであり、麹義と劉和を処刑される前に救出して黒山賊の勢力圏まで逃げ出すことに成功したようだ。

　そして曹操は袁紹は劉和と麹義を利用するだけ利用した後にその名声が大きくなったことで、焦って密かに処刑しようとしたという噂を冀州や幽州に広げさせた。

「これで袁紹の名声や信頼も急落するだろうさ」

　俺がそう言うと賈詡がうむとうなずく。

「そうですな、袁紹は決して無能ではございませんが自分の上に立つものを認めない、自分と意見の違うものを認めない傾向はありますゆえ」

　もともと劉虞は幽州の人間には慕われていた上に劉虞の臣下であったものの生き残りも劉和に従っていたこともあって、元は劉虞と親しかった北方異民族も袁紹に対して距離をおいたことで袁紹の幽州における影響力は格段に低下したはずだ。

「こちらも揚州南部の平定は終わっていないところだからな。

　公孫瓚にはもう少し時間を稼いでもらおうか」

　あくまでも劉虞の息子である劉和に対しての支持回復であって公孫瓚の信頼が取り戻されたわけではないから公孫瓚が助かる可能性はやはりゼロに近いと思うがな。

　一般的に袁紹の評価は低いが彼は単なる無能なボンボンかというとそうでもない。

　もともと袁紹の母親は身分の低い女性で、普通であれば名が史書に記録されるようなことはなかったはずだが彼はその判断力や実行力をもって河北を支配したのも事実だ。

　とはいえ袁紹も俺とあまり変わらぬ年齢であるはずで年を取ったことで判断力が鈍っていったりしている可能性も高いとは思う。

　もっとも袁術と違って袁紹は冀州でかなりの仁政を執り行っていたはずで民には慕われていたようなのだな。

　まあ、それもあって史実では麹義や呂布と言った戦闘能力は高いが略奪のひどい連中を処刑したり追い出したりしたという可能性も高いのだが。

「劉和殿には父上の跡をつぎ幽州牧を努めていただこうと思う」

　俺がそう言うと賈詡がうむとうなずく。

「そうですな、それが天子の意向とあれば問題はありますまい」

　并州に加えて幽州西部にも俺の影響力が及ぶようなれば北方異民族対策もやりやすくなるだろうか。

　できるならば田豊や沮授といった現状では袁紹に干されてるっぽい者たちも引き入れたいものだ。

　麹義には一度俺のもとに来てもらうとしよう。

　あまりかってに動かれても困るしな。