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第114話 皇甫嵩が引退したのでその兵は劉備に委ねたよ

 さて、あれこれやってるうちに初平3年(193年)になった。


 我が孫の董白は後宮で成人女性や后妃としての教育を受けている最中で、献帝となる予定の天子も来年には元服することになるだろう。


 史実では曹操が対外的には漢室の庇護者として振舞う一方で、献帝の周辺から馴染みの者を排除し、自らの息のかかった者を配すようにもなったため、献帝は、曹操が謁見した時に「朕を大事に思うならよく補佐してほしい。そうでないなら情けを掛けて退位させよ」と、忠誠か譲位のどちらかにするように言ったと言うが、彼が曹操よりまともに統治をできたかどうかはとても怪しい。


 とはいえ王允のようにあくまでも漢王室の天子に忠誠を誓っているものもまだまだ多い状況ではちゃっちゃっと廃嫡してしまったほうがいいとも言えない。


 史実における袁紹は後漢の光武帝こと劉秀の戦略をつよく意識していて、董卓の元から逃げ出したときに袁家の本拠地である汝南ではなく、冀州へ逃げ出したのもそのためもあったようだ。


 そして董一族の影響が大きな献帝ではなく劉虞を帝位につけて、自分は光武帝における鄧禹のような役割を担おうとしていたようであるのだが、献帝の正統性を否定して劉虞を帝位に登らせ正当な任官の権利を手に入れる戦略に失敗してしまった。


 その理由は劉虞が帝位を固辞したということもあるが、反董卓連合に参加した諸侯や士大夫の反応が良くなかったこともある。


 だからといって献帝を確保した曹操の身が安泰であったというわけでもなく、何度か暗殺されそうになってるのではあるがな。


 また、献帝を擁立した曹操は、天子の権威によって周辺諸侯を服従させていったと言うのは嘘だ。


 呂布・ 劉備・袁術などは戦いで打ち払ってるしな。


 とはいえ献帝が袁紹のもとにいっていたら荀彧などが曹操のもとにいたかはわからないが。


 劉虞を殺した公孫瓚がその後孤立無援になったことも考えると名家や士大夫、民衆などへの影響は小さくはなかった気もするのだ。


 袁紹たちは勝手に官位を名乗ったり、郡太守の任命を行っていたりもするのでなんとも言えないのではあるがな。


 そして益州南部に送った皇甫嵩は劉備一行を引き連れて戻ってきた。


 鍾繇・鍾演兄弟は現地の統治にあたってるようだ。


「皇甫(嵩)義真よ。

 益州南部の平定ご苦労であった」


「うむ、これで西については問題はなかろう。

 南方との交易についても問題はないと思う」


「うむ、それはありがたい。

 では、袁紹との決戦に備えていてもらえるか?」


 俺がそう言うと皇甫嵩は苦笑した。


「うむむ、私もそろそろいい年齢ゆえ、後は後進に譲りたい」


 まあ皇甫嵩もそろそろ60歳を過ぎているしな。


「わかった、兵は一旦そのまま劉(備)玄徳などに引き継がせるとしようか」


「うむ、それで良いかと思う」


 そこまで数の多い兵ではないので劉備たちにそのまま率いらせるのが良かろうな。


 劉備と言うと戦いには強くないイメージがあるが、実際にはそんなことはなく、史実においては直接対決では曹操・呂布には負けてるが、その他には殆ど勝っていて結構強いのだ。


 尤も劉備自身は大軍を率いて戦うのが得意というわけではないし、後半は徐庶、法正、龐統と言った軍師の存在によるものもあるだろうから、徐庶あたりを軍師として付けたほうがいいかも知れないな。


 俺は劉備と徐庶を引き合わせることにした。


「劉(備)玄徳よ。

 皇甫(嵩)義真はもう高齢ゆえ隠居したいとのこと。

 それゆえに今まで彼の下で戦っていたお前さんにその兵を率いてもらいたいがいかがかな?」


「はい、その役目、是非引受させていただきます」


「うむ、そして多くの兵を率いるとなれば軍師も必要であろう。

 徐(庶)元直は彼を補佐してほしい」


「かしこまりました、これよりは劉(備)玄徳殿の補佐をして袁紹との戦いに望みます」


「うむ、ふたりともよろしく頼むぞ」


 俺は曹操らを最前線に出すつもりはない。


 情報収集や要人警護、暗殺と言った任務は最前線で戦うよりも大事なものでもあると思うからな。


 皇甫嵩の引退は痛くもあるが、劉備はその後継者として十分な強さはあると思う。


 その他にも武将はいるんで問題ないと思うしな。

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