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第106話 履物も少し考えんとな

 さて、南方で使える麻布を重ねて膠で煮込む鎧を用意することで基本的に鎧を身に着けない南方の異言語異民族との戦いに有利に運ぶ条件はできたと思う。


 だがもう一つの問題がある。


 それは履物だ。


 後漢頃の履物は木を削って作った(とう)、木製の下駄、革で作った(てい)、絹・麻・藁などでつくった()等があるが、その他に二重底で材質を組み合わせて作られたものを(せき)と言ったりする。


 履も草鞋から絹鞋まで材質は様々だが沓や下駄、絹鞋、舃などは富裕層だけが履けるような高級品だ。


 だから庶民の大半は裸足か草鞋だったりする。


 草鞋は別名不借と呼ばれていてこれだけは借りないでも履けるという意味合いで使われていたようだ。


 しかし草鞋はすぐに履きつぶしてしまうので一足は安いが使い続けるとそれなりの金がかかるので、結局は裸足という者も多いのだな。


 草鞋といえば劉備親子は(むしろ)草鞋(わらじ)をつくって行商で売っていたとされるので、一般的な内職の手段でもあったのだろう。


 基本的に古代中国の履物は下駄・草履のようなサンダル用な形状の物はともかく、靴や鞮などは、走るのに向いた堅牢な作りではあるものの、足の出し入れがしやすいように、口が広く脱げやすい欠点があり、そのため靴底から紐を通して足の甲などを縛って固定しないといけなかった。


 また本来正式に徴兵された兵士には脚絆や靴下も支給され、長距離を歩きやすくすることは考慮されていたといわれる。


 もちろん豪族の私兵レベルでは履物どころか鎧の支給率すら1割あればいいほうだったりもするのだが。


「さて南方にふさわしい履物となると結局何がいいであろうか」


 木の沓や革の鞮は通気性最悪なので南方で使いたいとは思わんよな。


 となると結局草鞋が一番かもしれない。


 しかし、草鞋だと耐久力が問題だとすると……。


「これも麻布を膠で煮固めてつくるのが良いかもしれないな」


 中世のヨーロッパでも革靴は高級品で、庶民は麻布の靴か裸足だったらしい。


 日本でも藤づるの繊維でおった布の靴が作られたこともあったようだ。


 現代のウォーターシューズなどは化繊で作られていて乾きやすくなってるな。


 それかアイヌなどがつくっていたという鮭の革の靴のように魚の皮を使うのも良いかもしれないな。


「いくつか材料を分けて作らせてみるか」


 鞣しただけの柔らかい皮の靴、膠で煮固めた硬い革の靴、草鞋、麻糸の靴、魚の皮の靴などを作らせてみて、実際に履かせて不整地などを踏破させた上で、履き心地や底などのもちなどを比べた上で総合的に決めるとしよう。

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