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薄桜記 2~現~【うつつ】  作者: 綾乃 蕾夢


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丸鏡

 どうしたらいいかわからない。

 そんな空気を背中に背負って、二宮さんが立っているのは私が初めてハルオくんたちを見かけたあの通路です。

 西棟も、校庭から離れた場所は建物の陰に隠れていて人影もないところ。


「ニノ!」

 駆先輩の声に振り向いた二宮さんの前には体操服の女子生徒。

 夾竹桃きょうちくとうに向かおうとするところを、止めようとしてくれているみたいですけど。その二宮さんの身体はズリズリと彼女に押されて、徐々に動いています。


「おいおい、あの石像は女の子が一人で押せるような重さじゃないぞ」

 駆先輩の引いた声に、振り返ったことで足の踏ん張りのバランスが崩れた二宮さんの身体が投げ飛ばされちゃいました。

「マジかよ」

 近くにいた鏡子ちゃんを下がらせた至先輩も焦り顔です。


 髪を振り乱した彼女は、白目をいた瞳がつりあがり、うなりを上げる口の端から汚らしくヨダレを垂らしていて。

 まるで威嚇いかくをしている、犬みたいです。


「でぇっ。こっち来た!」

 一番前に出ていた駆先輩に向かって襲いかかるような彼女に、二つの影が割って入ってきました。

「ハルオっ、ボン太!」


 すぐに、彼女の大きく振るった腕にはじき飛ばされちゃいましたけど、鏡子ちゃんが両手で大きく円を書く時間を作ってくれました。

 私のすぐ隣で、その輪郭りんかくに合わせて浮き出てきたのは大きな丸鏡。


「小腸が見つからぁんっ」

 地面に投げ出されたハルオくんとボン太くんも無事(?)なようです。


 唸り声を上げていた彼女が、鏡の反射にまぶしそうに顔をそむけます。

 その足元には異常なほど長く尾を引く影。

 何だか、変に立体的っていうか、彼女の真後ろに立っているみたいに見えてきます。

 頭の上にピンと立つ小さめの耳、ググっと突き出たような口元、全体的に短めの毛におおわれたかのようなシルエットはまるで、


「動物」

 口をついた私の声に反応したように彼女が、いいえ、彼女をあやつる何かがこちらに目標を絞って走ってきます。

 この感じは、体育の時に夾竹桃の下から感じた視線のようなものと同じです。


 なんて、のんびりしている場合じゃありません!

 鏡子ちゃんが危ない。

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