刀隠れ 1
「待って」
口を開いた私の言葉は、至先輩に一言に遮られました。
「話していいの?」
その一言にはいろいろな重みがあります。
「はい。私もここにいるみんなの役に立ちたいんです。
鏡子ちゃんだって二宮さんたちだって、せっかく仲良くなれたんですもの。
お二人のどちらかが白い鬼だって言うなら、それでもいいです。
もうどちらかに頑張って頂いて、私も一緒にどうにかします!
ご本人だって、どっちがそうなのかわからないまま何年も過ごしてきているなら、もう人間ですっ」
むふーっと鼻息荒く語っちゃいました。
「俺らありきなわけね」
ちょっぴり苦笑い気味の駆先輩に、ちょっと諦め顔っぽい至先輩。
「はい……」
やっぱりダメですかね。
ちょっと頑張ったつもりの勇気がしぼみそうです。
「いいんじゃないの?」
いたずらっ子みたいな駆先輩にため息交じりの声が追いかけてきます。
「まあ、そこに賭けるしかないのかな。
わざわざ話すってことは、それなりの収穫があったんだろ?」
もちろんありました。
大きくうなずいて、息を整えます。
「まず、ご神体ですがこれは存在しました。
でも鬼呼神社にあるのは鞘だけなんです。
白木造りって言うんですかね、木そのままの装飾のないものです。
記述によると、あの桜の樹の折れた枝から作られたようですが、大正の頃のことで結構最近です」
狭い理科準備室に集まる面々の視線が私に集中して、緊張に左の手のひらを胸の前でギュッと握りしめます。
「で、ですね。その鞘を見てやっぱりよくないって言うか。ちゃんとしなくちゃって言うか、あの、初めて桜の樹の夢を見た時に巫女さんが言っていたことが、えと」
「落ち着いて」
しどろもどろになっちゃって、何を言っているのか自分でもわからなくなっちゃいます。
至先輩の一言に大きく深呼吸をして、震えそうな左手を右手でギュッと支えました。
「目が覚めた時には何だか悲しい気分で、初めて鏡子ちゃんにあったり環境に変化がありすぎて、心の隅っこの方に……わざと追いやって、忘れようとしました。
わかったんです。歴代の巫女さんが、隠そうとした刀の、紅桜のありか」




