紅桜 2
初めて聞いた単語ですよね。
さも当然と口にした駆先輩は何の疑問もないみたいです。
「紅桜って、なんですか?」
「そうか、わからないか。
この神社ってさ、ご神体とかある?
日本刀、とか」
何でしょう。
何だか嫌な感じです。
そのことには触れられたくないって言うか、思い出したくない、あの罪悪感に似た感じです。
思わず助けを求めるように至先輩に視線を送ると、怒ったような、悲しいような。複雑な面持ちを駆先輩に向けていました。
その唇から漏れる小さなため息。
「さっきも言ったけど、俺たちのどっちかは白い鬼なんだ。
今までに俺たちの見た夢を総合してみると、こいつはあの巫女の持っていた日本刀〈紅桜〉をずっと狙って追いかけている。
理由は分からない。
そしてこの紅桜、代々の巫女が継承しているみたいなんだけど
なんかおかしいんだ。
うまく言えないんだけど、追われるだけのなにかあるんだよ」
「だからこそ、この桜の樹みたいに実物が存在するなら見てみたかったんだけど。
そこまで都合はよくないか。
今のご時世、日本刀なんて持ち歩いてたら銃刀法違反で捕まっちゃうしね」
あっさりと引き下がってくれた駆先輩に、ちょっとホッとしました。
代々の巫女が継承している。
ということは、宮司をしているおばあちゃんなら何か知っているかも。
でも、そんなお話を聞いたら紅桜に執着している方が鬼みたいじゃないですか。




