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【書籍化・コミカライズ】自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた  作者: 溝上 良
第4章 禍津會のリーダー編

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第85話 マジで悲鳴を上げる

 










「はあ、はあ……」


 川沿いにいる理人は、顔から水を滴らせながら荒い息を吐いていた。

 空は満天の星空が広がっている。


 移動の途中で野営をしていた。

 家財もすべて破壊されてしまったので、まったく目立たない。


 おそらく、賊も彼らを見つけることはできないだろう。

 仮に見つけて襲い掛かったとしても、悲惨な目に合うのは賊の方だが。


 今は、交代で見張りをしながら眠っている時間だ。

 奴隷ちゃんもスヤスヤである。


 本来なら彼女の傍にいて守ってあげなければならないのだが、目の激痛に耐え切れず、理人は離れて川沿いに来ていた。

 まあ、仮に暴漢が近づいてきたら、奴隷ちゃんならすぐに気配を察知して起き上がって対応することが可能だろう。


 そんな信頼があった。


「……いや、案外寝ながらボコボコにしていたり……」


 返り血を浴びながら、目を閉じてすやぁっとしながら暴漢をボコボコにしているイメージが頭に浮かぶ。

 怖い。


「ぐっ……!」


 思わず笑いそうになっていると、また耐え難い痛みが襲ってくる。

 すぐに川の水をさらって目に当て、冷やす。


 これが正しいのかは分からないが、痛みが多少和らぐ気がした。


「……マジで痛い。こんな力、頻繁に使えるわけないだろ」

「そんな寂しいことを言うな。せっかくわらわが上げた眼じゃろうが」


 のしっと頭に重量がかかる。

 ただ、幸せな柔らかい感触もあった。


 何かしら硬くて冷たい重石であれば無造作に押しのけることができただろうが、その正反対の魅力的な感触。

 とはいえ、大喜びするほど子供でもない理人は、呆れたように目を細めた。


「重い」

「貴様……こんなムチムチのおっぱいを頭に乗せられて、感想がそれか」


 ふわりと理人の顔を覆うように、真っ白な髪がカーテンのように揺れる。

 上から覗き込んでくるのは、マカだ。


 普段は実体を見せない彼女は、今理人の前に姿を現していた。

 めったに姿を見せないというだけで、もちろん既知であるため、何も驚くことはなかった。


 相変わらず片目を白い髪で隠している。

 足先に届きそうなほどの超ロング。


 そして、特徴的なのは理人の頭に乗せられている、大きな胸。

 彼の周りには奴隷ちゃんをはじめ、発育のいい者が多いが、マカのそれは明らかに頭一つ抜けていた。


 元いた世界では見たことがないほどのメリハリのある肢体だが、それに飛びつくことはない。

 飛びついたら最後、何かしらとんでもないことを要求されることだろう。


「普通なら嬉しいんだろうが、お前だし」

「こんな美女を捕まえて何を言う」

「でも、内面クソじゃん」

「そうかの? 割と優しいと思うが。問答無用で貴様をわらわのものにしてもいいのじゃが、それもしておらん。力も渡しておる」


 それを言われると、理人も言葉に詰まる。

 実際、マカの力を借りて色々としているのだから。


「まあ、それはありがたいけどさ。でも、取るもんは取るだろ?」

「当然じゃ。無償の善意の方が恐ろしくないかの?」

「あっちの世界にいた時はそれでも何とも思わなかっただろうが、こっちの世界に来てからは本当にそうだな」


 日本にいた時なら、無償の善意を向けられても、何か裏があるのではないかと疑うことはほとんどなかった。

 まあ、その善意の内容にもよるが、落とし物を拾うとかの善意程度なら、自分もされるし自分もしていたから。


 ただ、そんな些細な善意でも、こっちの世界では警戒する。

 何を求められるか、分かったものではないからだ。


 スレてしまった自分にため息をつきつつ、頭に胸を置いたままのマカに問いかける。


「で、何か用か? あまり実体化していると、奴隷ちゃんに感づかれてぶっ殺されるぞ」

「だ、大丈夫じゃろ。ぐっすり寝ておったし。わらわをビビらせるな、泣くぞ」


 キョロキョロとしながら周りを伺うマカ。

 怖いものなしですべてを掌の上で転がすような女だが、奴隷ちゃんだけはダメだ。


 今はスヤスヤであることを知っているので、マカは気を取り直して理人に話しかける。


「わらわの眼を使ったことが嬉しくての。一気に進むから、それは喜ぶ。じゃから、ご褒美に乳くらい触らせてやろうと思ったのじゃ」

「そうか。まあ、もう使う予定はないけどな」


 もう胸のことには一切触れない理人。

 そんな彼の返答に、マカは不服そうに頬を膨らませた。


「便利なのに……」

「凶悪すぎるんだよ。この力で助かった俺が言うのもなんだけどな」


 色々な死に方をしたアマルディたちを思い出す。

 こっちの世界に慣れているから何とも思わないが、この世界に来たばかりの時なら、間違いなく嘔吐していた。


「いやはや、昔を思い出したの。貴様が初めてわらわの力を使った時のことを」


 唐突にしんみりと語り出すマカ。

 そんな彼女に白い眼を向ける。


「……まさか、この状態で回想いくなよ? マジで奴隷ちゃんにやられるから」

「そう、あれは……」

「おい、止めろ! 死ぬならお前ひとりで死ね!」

「ずっと一緒じゃぞ♡」

「止めろ!」


 ギャアギャアと言いながら取っ組み合いをする二人。

 理人とマカの関係は、こんな感じだった。


 なお、この後奴隷ちゃんが突撃してきてマジで悲鳴を上げる二人であった。




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