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【書籍化・コミカライズ】自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた  作者: 溝上 良
第3章 転移者の報復編

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第77話 浮気って何?

 










 とりあえず、ある程度片づけをした。

 どうせすぐに使わなくなる家だが、数日は最低でも過ごさなければならないので、荒らされた状態だと都合が悪かった。


 さて、一仕事終わった。

 理人はお風呂を入れるため――――この世界ではかなり高価なものだが、奴隷ちゃんの仕事達成報酬金で買った。ヒモみたいで落ち込んでいた――――浴室に入ると……。


「あ……」


 なぜか脱衣中の、王女に致命傷を合わせて逃走中の雪がいた。

 幸い、これからというところだったのだろう。


 だが、十分に服ははだけてしまっている。

 世間一般的に見れば豊かな胸。


 衣服がはだけているせいで、深い谷間も見えてしまっている。

 白い肌は、その名前の通り雪のように美しい。


 下着もちらちら見えてしまうほどの、扇情的な光景。

 雪の見た目が非常に整っていることもあって、男なら誰もが目を奪われることだろう。


「…………」

「人の半裸を見てその絶望の表情は何?」


 心の底から絶望した表情を見せる理人。

 誰も、に該当しない男が目の前にいた。


 不景気な顔に、思わず雪もむっと頬を膨らませる。

 それに対し、理人が絶望した理由を語る。


「お前……奴隷ちゃんに殺されるぞ。俺諸共」

「なんでそんなバーサーカーを奴隷として飼っているの、君」


 理人の懸念は、もちろん奴隷ちゃん。

 というか、彼女以外には存在しない。


 理人はこういうが、実際には彼を殺すことはないだろう。

 ただ、これを理由に迫ってくるだけである。


 押しの強さはかなりのもので、それをなだめるのに非常に労力を費やすのである。


「でも、それだったらもう僕をぶっ殺しに来ていない? あの子なら、もう気配を察知して襲い掛かってきそうなものだけど……」


 雪の認識でもそれな奴隷って何なんだろう?

 理人は強く疑問を抱きながら、奴隷ちゃんが何をしているのか思い出す。


「あー……そう言えば、今はお片付けしに行っているんだった」

「え、何それかわいい。おもちゃでも散らかしていたのかな?」

「いや、俺たちの家に悪戯を仕掛けた悪い連中のお片付け」

「あっ……」


 サッと顔を青ざめさせる雪。

 彼女は直接奴隷ちゃんの脅威にさらされたことはないが、その噂は十分に知っていた。


 なにせ、勇者望月が倒れた今、もっとも危険な存在になっているのが奴隷ちゃんだからだ。

 幸い、望月ほど明確に敵意を向けてきていないが、理人が命じればすぐにでも攻撃を仕掛けてくるだろうから、彼女の制御は目下の課題だった。


「というか、お前はいつまでその恰好のままなんだ。さっさと服を着ろ」

「断る。どうして僕が転移者の意見を聞かないといけないの?」

「お前も転移者だろうが」


 なぜここで転移者嫌いを発揮するのだろうか?

 半裸のままで、肌色が見えている雪。


 胸の谷間や太ももなどが露出しているのを、呆れたように見やる理人。

 正直、嬉しいというよりも、雪がこの場にいる方が色々とマズイ。


「で、今や超が何個もつくほどお尋ね者のお前が、いったい何の用だ? ぶっちゃけ、今の状況を誰かに見られるだけで、俺もやばい立場になるからさっさと帰ってほしいんだけど」

「嫌」

「んん?」


 嫌ってなに?

 理人はいぶかしんだ。


 そんな彼を、雪は不満そうに睨む。


「別にどうでもいいんだけど、全然気にしていないんだけど、君って愛梨には甘いくせに、僕のことはやたらと突っぱねるよね」

「いや、そんなことはないと思うんだけど……」

「たまに寝ていること、僕知っているんだけど」

「トラウマがね……。あいつ、放っておいたら発狂するし。でも、お前全然大丈夫じゃん」


 声が途端に小さくなる理人。

 それはそうと、どうして雪がそのことを知っているのか。


 もしかして、愛梨がペラペラと喋っているのではないだろうか?

 次に会ったら拳骨の一つくらい落としておくべきだろう。


 幸い、雪だから何とでもなっているが、これが奴隷ちゃんの前ならもうダメだ。

 理人は、飢えた肉食獣の前に置かれた草食動物になり果てる。


「実は必死に隠して強がっているだけなのに……」

「嘘つけ。お前、完全に折り合いつけているだろ」

「うん」


 舌をペロッと出す雪。

 しかし、それはそれで凄いなと理人は感心していた。


 望月と違って、彼女もかなりヘビーな奴隷生活を送っていたはずなのだが……。

 こうまでも折り合いをつけられているのは、凄いことだ。


 禍津會の構成員でも、誰もいないだろう。


「結局、何しに来たんだお前は……」

「いやー、やっぱり勧誘でしょ。禍津會って、やっぱり人が少ないから、一人でも多くの仲間が欲しいんだよ。君は転移者だし、強いし、最適だから」

「テロ組織に勧誘された……」

「失敬な。復讐集団と言ってほしいね」

「テロするやつって大体復讐が目的じゃないの? 知らんけど」


 胸を張る雪。

 豊かな胸部が揺れるが、理人は目を覆っていた。


 最近、やたらと勧誘される。

 禍津會、クレイジー王女。


 どっちに行っても地獄だろう。

 普通の生活がしたい。


 この世界に転移してきて一度も叶ったことのない願望を強く祈る理人であった。


「で、返答は?」


 じっと雪が見据えてくる。

 それに対して、理人はキリッとした表情を浮かべて言った。


「……そろそろ奴隷ちゃん帰ってくるから、逃げた方がいいぞ」


 日和った。

 ここで頷いたらテロ組織の仲間入りだし、拒否すれば雪に襲われそうだし。


 とりあえず、奴隷ちゃんを出汁に逃げてみた。


「あと、俺は別に強くない。それは忘れるな」

「なんで胸を張って言っているんだよ、君は……」


 心底呆れながらも、さすがにここでドンパチするつもりはない。

 雪はサッと逃げていく。


 その数瞬後、奴隷ちゃんが飛び込んできた。


「マスター、浮気は許しません」

「浮気って何?」




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