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俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜  作者: 鴨山 兄助
第六章:高校生編③

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第百五十一話:きっとまたあえる

 ギョウブが休眠状態になりウイルスとの縁も切れた事で、島にいた感染者は全員元に戻った。

 とはいえ流石に事が怪奇現象過ぎるので、それなりに騒ぎにはなってしまったのは仕方ない事だと思う。

 俺達は真相知っているとはいえ、無闇にそれを話すメリットもない。

 もっと言ってしまえば信じて貰える保証も無ければ、身の安全の保証だってない。

 だから俺達は皆、今回の一件に関しては黙っている事にした。


「いや〜、中々スリリングで楽しい旅行だったな」

「気楽にその表現を使えるの貴方くらいよ」


 港で呑気に俺がそう言うと、アイに容赦なく突っ込まれてしまう。

 今日はバカンス最終日。

 俺達は荷物をまとめて、港でのんびりとフェリーを待っていた。


「だが今回は良い鍛錬にはなったと、俺も思っている」

「お祭りも楽しかったですよね〜」

「そう言ってもらえると、私の心労も少し晴れるわ」


 そう言ってため息吐くアイ。

 巻き込んだ責任と感じてたんだろうけど、俺らは自分から首突っ込んだようなもんだからな。

 こういう経験は明日に繋がると信じて、前向きに生きましょう。


「あぁ〜、海の香りちゃんとするっプイ〜」

「相棒、鼻息荒いぞ」

「しょうがないっプイ! ずっとごちゃ混ぜ匂いばかりだったから、ようやく普通の匂いが堪能できるっプイ!」


 さいでっか。

 港のベンチに座りながらそう考えていると、ソラが俺の頭上をジーっと見つめてきた。


「ツルギくん、やっぱりそこにいるんですよね?」

「カーバンクルならいるぞ。今めっちゃ海の香り堪能してる」


 ちなみに島中に撒かれたウイルスが消滅すると同時に、ソラと速水は再び化神を認識できなくなっていた。

 やはりアレは特殊な状況下だったかた起きた現象だったらしい。

 そう……思っていたんだけど。


「キュプ!? 今お尻を触られたっプイ!?」

「うーん、いるのは分かるんですけど……やっぱり見えないですし、触ってみてもよくわからないですね」


 俺の頭上に手を伸ばして、首を傾げるソラ。

 多分普通にカーバンクルと触れ合っているつもりなんだろうけど、そこお尻だそうです。

 面白いから放置してやろう。


「……ツルギくん、私のデッキにもいると思いますか?」

「化神か?」

「はい。あの時見た天使の羽根……あれは気のせいなんかじゃないって思うんです」


 感染者から逃げている時に現れて、ソラと俺達を守ってくれた天使の羽根。

 恐らくソラのデッキに入っているエオストーレのものだと思う。

 カーバンクルもエオストーレは化神だと言っていた。

 ただ、ここでそれを告げて良いのかは疑問が残る。


「もしも、エオストーレだったら……私もお話してみたいなって」

「……ソラがそう思うなら、そのうち答えが出るんじゃないか?」

「そうだと良いですね。私もツルギくん達みたいに、モンスターと友達になってみたいです」


 純粋な気持ちでそう答えるソラ。

 今回の一件があったとはいえ、そう思ってくれる人間がいるなら。

 きっと、ギョウブが願った未来はすぐ近くにあるのだと思う。


「あれ。そういえば藍と九頭竜さんは?」

「藍ちゃん達なら、あっちでララちゃんを待ってます」

「そういえば乗る便が違うんだっけ」


 ララちゃんは今日、両親が迎えに来るらしい。

 ギョウブのカードは彼女が持ち続ける事となった。

 幸いにしてウイルスが消えたおかげで危険性もなくなったからな、その方が絶対に良い。


「……俺もあっちに行ってみるか」

「あっ、ツルギくん!」


 なんとなく、俺もララちゃんに挨拶しておきたかった。

 そして藍達の元に辿り着いた瞬間、ララちゃんが駆け足でこちらにやってきた。


「ラーン! マナミー!」

「ララちゃん!」


 無邪気に抱き合う藍とララちゃん。

 それを見て九頭竜さんが頬を膨らませているが、俺は絶対に触れないぞ。


「おうララ! 向こうでも元気にするブイ」

「ブイドラもお元気になのです。シルドラもなのです!」

「ふん。我に気を使うとは……まぁ、善処はしておこう」

「素直じゃないブイ」


 余計な一言を言われたせいで、またもやシルドラとブイドラが喧嘩を始める。

 そんな見慣れた光景を横にして、藍はララちゃんとの別れを惜しむ。


「エヘヘ、なんか寂しくなっちゃうね」

「はいです。でもララはちゃんと手を伸ばすです。ランが教えてくれたように、もう手を離さないように」


 空に向けて手を伸ばし、そう宣言するララちゃん。

 ギョウブとの戦いで何があったのか、俺には詳細がわからない。

 だけど少なくとも、ララちゃんが明るく振る舞おうとしているなら、きっと藍達の言葉は届いてくれたんだろう。


「ララ、ハワイに帰ったら頑張ってみるです。おトーさんやおカーさんとファイトしてみるです!」

「大丈夫? アタシが言うのもなんだけど、ララちゃんってまだまだサモンの経験少ないんじゃ」

「大丈夫なのです。ララは強い子だってギョウブに言われましたから……だから、一歩だけでもララは前に進んでみたいです」

「そっか……強い子だなぁ」


 どこか珍しさも感じる、お姉さんな笑顔を向ける藍。

 心痛める別れはあったけど、ララちゃんは確かに前に進もうとしていた。


「カーバンクル言っていたです。いつかまたギョウブに会えるって。だからその日までララも頑張るのです」

「じゃあアタシも頑張らないとね」

「ラン。また日本に来たときは、ララとファイトしてくれますか?」

「もちろん。アタシだけじゃなくて真波ちゃんやツルギくんも相手するよ!」


 あっ、勝手に巻き込まれた。

 別にいいけど。


「待って藍。天川くんを巻き込むのは少し考えた方がいいと思う」

「なんだよ、まるで俺が教育に悪いみたいに言ってさ」

「ツルギくんの場合その通りだと思います。トラウマになりますよ」


 後ろからちっちゃいシルエットと共に現れるソラ。

 トラウマって……俺はちびっ子にまで非道な戦術は使わないよ。

 常識的な範囲(当社比)でだけど。


「きっとまたあえる……ですよね、ラン!」

「うん。きっとまた会える! だから、またねララちゃん」

「はい、またなのです!」


 笑顔で握手を交わす藍とララちゃん。

 きっとあの子は、自分の足で立ち上がれる強さを持てるだろう。

 だからもう、心配はなさそうだ。

 ギョウブもいつか、きっとララちゃんのもとに帰ってくると、俺も信じていたい。


「そろそろフェリーに乗る時間ですよ!」

「おっと、そりゃまずいな。じゃあなララちゃん! また会おう」

「私も次はファイトのお相手します」

「ボクもファイトしたいから。またね」


 ソラと九頭竜さんも挨拶して、俺達はララちゃんと別れた。

 名残惜しさを感じながらもフェリーに乗り、俺達6人(と化神4体)は隠神島を後にする。

 フェリーの席に座るや、俺の身体には急激に疲れが襲いかかってきた。


「あぁ〜……なんか、疲労がきた」

「ツルギくんも頑張ってましたもんね。疲れて当然ですよ」

「なんか一生分走った気がする」

「甘いもの食べますか? お菓子とか色々あるので」


 そう言ってソラは袋をガサガサと漁り始める。

 ……いやちょっとまて、なんだそのビニール袋に詰め込まれた食品のタワーは!?


「あの、ソラさん? その食べ物達でできたバベルは?」

「あっ……これは、その……昨日からお腹が空いて仕方なくて」


 顔を赤くしながらそう答えるソラ。

 昨日から、空腹……食べ物はエネルギー……まさかな。


「じゃあ手軽なもので、はいどうぞ」

「わぁい、顔面サイズのたい焼きだぁ」


 そっかぁ、この世界ではこれが手軽と称されるのか。

 いやそんなわけない。

 そんな事があって良いはずがない。


「あっ、でも男の子だともっと大きいお菓子の方が――」

「お手軽サイズでお願いします!」


 このままでは甘味ドカ食い系カードゲーマーになってしまう。

 高校生にして血糖値を気にするのとか嫌過ぎるぞ。

 そんな事を考えながら巨大たい焼きを食べていると、アイが申し訳なさそうにやってきた。


「ねぇツルギちょっと……なによその巨大たい焼きは」

「ソラからもらった」

「ソラ、貴女もう少し食事量を……って今はそうじゃなかったわ」


 で、どうしたんだ?


「藍がファイトしたいって駄々こね始めてるのよ。あの子絶対に連戦で挑んでくるでしょ」

「だろうな。じゃあ俺が相手してくる」

「ツルギくんってサモンの休憩にサモンをするタイプですよね」


 そうだな。それがカードゲーマーですから。

 この世界はカードゲームで決められる事が多すぎる。

 だけどカードゲームで解決できない事だって確かにある。


(だったらせめて……カードゲームで解決できる範囲では、バッドエンドを回避したいよな)


 なら戦い続けて、そして知っていこう。

 できる事はやり続けて……化神のような謎は学んでいこう。

 ギョウブのような犠牲者を減らす事に繋がると願って、俺はファイトを続ける。


「はーやーくー! サーモーンー!」

「今行くから、もうちょっと静かにしろ」


 そう言いながら俺は、フェリーに設置されているファイトステージに上がる。

 そして仲間達に見守られながら、俺はフェリーの甲板で藍とファイトを始めるのだった。

【第七章に続く】

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