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82歩目

お待たせしました。


それでは本編をどうぞ!

 日が暮れて夜になる頃。クラリス達は焚き火をして暖をとっていた。


「ねぇ、クラリス達は魔法使えるのよね?」


「そうね。ボタンは違うけど、私とダークとエールは使えるわよ。」

「なんじゃ、お主も使いたいのか?」


「ええ、だって便利じゃん。使えた方が。」


 どうやらサクラは魔法に興味があるらしくクラリス達に使い方を教えて貰いたいらしい。


「ならばこちらへ来いサクラ適正を見てやる。」


 サクラはダークの側まで行き目の前に立った。


「うむ。ではお主は左利きかの?」

「ええ、左よ。」


「では、右手を貸せ。」


 そう言われてダークは右手を出した。そしてその上にダークも手を乗せた。


「うむ……なるほどな……」

「何がなるほどなの?」


「お主は風の魔力があるな。上手く扱えればクラリスより強くなるぞ。」


「えっ?そんなに?」


 ダークの言葉にクラリスが驚いた。


「ああ、かなりの逸材やも知れんな。剣の腕は互角に近いからの。魔法次第で大きく化けるやも知れんな。」


「なんか……こしょばゆい……」

「今お主の身体に魔力を流し込んでおるからな。まぁ稀に激痛で気絶する奴もあるが……お主は大丈夫そうじゃの。」


「先に言ってよ……」


 ダークの言葉に血の気の引くサクラであった。


「先に言ってしまえばお主はやらなかったじゃろ?つまらんではないか。」


 悪びれる事なく言うダークはやはり超がつくほどのドSである。


「ごめんね。ダークはいつもこんな感じだから慣れてね。」

「気をつけます……」


 サクラがゲンナリとしたところでエールが夕食を持って来てくれた。


「皆さんお待たせしました。今日は卵料理です。」


「卵焼き?」


 サクラからすればそう見えるが……


「これはオムレツだよ。」

「この国の卵焼きに似てはいるが少し違う。まぁ割ってみなよ。」


 ダークに言われて恐る恐るオムレツを箸で割ってみた。すると……


「あっ、中に具が入ってる。」

「今日はキノコとひき肉をふんだんに使っていますよ。スイさんに習ったんです。」


「ほぉ、スイにの。ならば味も良かろう。」

「はい!スイさんは私より上手なので料理の修行もさせて頂きました。」


 胸を張って答えるエールにボタンが話しかけていた。


「私にもお料理教えて下さい。私も役に立ちたいです!」

「ふふふ。いいですよ。では、明日からボタンさんは私の助手です!」

「ありがとう!頑張ります!」


 笑顔のボタンにクラリス達は何故かほっこりするのだった。


 夕飯を食べ終えてサクラがクラリスに話をしに来た。


「ねぇ、クラリス。」

「ん?なーに?」


「暇なら稽古付けてくれない?」

「剣?魔法?」

「剣!」


「いいわよ。私もサクラの剣から学びたいからね。」


 するとクラリスは立ち上がってダーク達に呼びかける。


「みんな、少しサクラと稽古つけて来るからのんびりしてて。この辺りじゃ被害出ると思うから。」


「それなら私も立ち会いたいです。サクラさんの実力も知りたいですし。」


 クラリスはダークと目配せして大丈夫だと伝えた。


「良いわよ。じゃあ3人で行こうか。」


 そうして野営場所から少し離れた場所で剣の稽古を始めた。


「ああ、サクラ。これ使って。」

「えっ?木刀?」


「そっ。真剣で斬り合ってたら痛いでしょ。だからこれでやるわよ。」

「なんか臨場感にかけるなー……」

「じゃあ……こうすればどう?」


「「‼︎」」


 クラリスはサクラに向けて殺気を放ったのだが。エールまでもがその殺気に怯んだ


「こらこら、このくらいで怯まないでよ。まだ始めてもいないんだから。」


(やっぱり、昼間は迷いがあったんだ……私とは比べ物にならないよ……)

(クラリスさんの殺気ってこんなに凄いの……改めて向けられると怖い……)


「じゃあ始めようか。」

「ええ。」


 改めて目を細めマジモードのクラリスに不適な笑みを浮かべたサクラ。お互いに木刀を構えて徐々に距離を詰める……


(凄い……全く隙がない。初めてかも……こんなに時間が長く感じたの……)


 隙を見せないクラリスにサクラは自分から仕掛け変えようとしてみるも隙を見せないクラリスに攻めあぐねていた。


「来ないの?じゃあ私からいくわっよ!」


 地面を蹴って思いっきり打ち込みにきたクラリスに対し、真っ向から受け止めたサクラ。なんとかクラリスの木刀を弾こうとするも、動かせない……


「そのくらいじゃあ私は動かせないよ。」


 鍔迫り合いを制してサクラを吹っ飛ばした。サクラもなんとか踏み留まるもクラリスが追撃を受け止めることしか出来なかった。


「どうしたの?遠慮してる?そんなんじゃ私に勝てないよ。」


「ぐっ……このー!」


 サクラは鍔迫り合いから解放される為にクラリスに蹴りを入れる。しかし読んでいたかの様にクラリスはバックステップで(かわ)した。


「そうそう。そんな攻撃もしてこないとね。」


 まだまだ余裕のクラリスに対し、肩で息をしているサクラ。


(まずいこのままじゃ負ける……言い出したのにこんな無様な負け方嫌だ!)


「はぁぁ!」


 今度はサクラから攻撃を仕掛けた。


(やっぱりこの子。斬撃は重いけどパワーはそこまでないわね。速さはやっぱり一級品ね。)


 クラリスはサクラの突きを躱していく。そしてその中から1つの攻撃を選んでカウンターを取った。


「そこっ!」


 その瞬間、サクラは突きを止めた。そしてクラリスの木刀はサクラの喉元数センチの所で止めていた。


「私の勝ちね。」

「……はい。」


 そしてクラリスが木刀を引くとそのままサクラは座り込んでしまった。


「なかなかやるわね。だけどパワーがないから接近戦には強く出れない。最低限のパワーは身につけるのが今後の課題ね。」


「悔しいけど……そうですね。あー!悔しい!」


 そのまま大の字になって寝っ転がるサクラ。クラリスは木刀を収納に直すのであった。


「エール。サクラの両腕に治癒魔法かけてあげて。たぶん痛めてるか、痺れてると思うから。」

「あ、はいっ!」


 クラリスの指示で治癒魔法をかけてあげるエール。


「いつから気がついて……?」

「自分で打った攻撃よ。そのくらい分かっておかないとね。」


「じゃあもしかして最初から……」

「ええ、もちろん。」


 笑顔で言われたサクラはもう笑うしかなかった。それほどの完敗だったのだから。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


次回更新は2月20日日曜日午後15時です。お楽しみに。


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