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76歩目

お待たせしました。


それでは本編をどうぞ。

 クラリスにいきなり襲いかかってきたフードを被った人は閃光の様な速さで突っ込んできた。


(速い……だけど……これなら!)


 受け止められるそう思った瞬間、刀が物凄い速さで横薙ぎに切り裂いた。


「ッ……」


(今のは抜刀術……?)


「へぇー、避けるんだ。この斬撃を躱したのは久しぶりかも!じゃあこれはどうかな?」


 そう言うとフードを被った人は2本目の刀を抜いた。


「ついてきてね。」


 そこから二刀流の斬撃がクラリスを襲った。そしてクラリスも剣を引き抜いて応戦する。


(速い……そして重い……)


 反撃しようにも反撃出来ないクラリス。なので流れを断つ為に相手が止まるのを待っていた。


「おおー、ここまで耐えられる人はもう随分久々かも!お姉さん楽しませてくれるねー。」


「随分軽く言ってくれるわね……でも、そろそろ反撃させてもらおうかしら!」


 そう言うと、クラリスは右手の刀を弾いて動きを止めた。そして、地面を蹴って距離を取ろうとした相手へ剣で突き刺し追いかけた。


 しかし……


「なによこれ……」

「いやー、危なかった。危うく下半身とお別れするところだったよ。」


 そう、今クラリスの突き刺したはずの剣の上にフードを被った人は乗っていたのだ。そして驚いてるクラリスの顔面に蹴りを入れた。


「やれやれ、ようやく一撃入れられた。」

「イテテ……あなた本当に人間なの?初めてよ、私の剣に乗った人は……」


「あれ?気絶させたつもりだったのに。やるねー。」


 そうしてクラリスがもう一度剣を構えを取ろうとした時、ダークが止めた。


「終いじゃ、クラリスよ。」

「えっ?」

「そやつはあやつらとは無関係の様じゃ。」


「どういう事よ?」

「えっ?なんで分かっちゃったの?」

「わっちの心眼でお主の心を覗いたからじゃ、お主は死にたいのじゃろ?」


 ダークの言葉にクラリスは言葉を失った。


「……そうだよ。もう100年はさまよってるんだ。首を切り落とされても焼かれても死ねないんだ。だから殺して欲しかったのよ。私より強い人に……」


 空を見上げて話しているとフードが取れて顔が見えた。ピンク色の髪に白い肌、そして幼く見える顔が特徴的だった。


「女の子?」

「そうだよ。でも、100年足すから今は114歳くらいかな?もう覚えてないや。だから女の子じゃないかも。」


 どこか寂しそうに話す少女だったが、また目つきを鋭くしてクラリスに刀を向けた。


「さぁ、続きをしようよ!そして、私を殺して!殺せなければ、私があなたを殺すよ!」


 殺気のこもった言葉にクラリスは剣を構えた。すると少女は先程より速い踏み込みで突っ込んできた。


「あなたは強いよ。私よりもね。でも……」


 クラリスはスッと後ろへ避け、少女の頭に拳を叩き込んで気絶させた。


「あなたじゃ私を殺せない。だから引き分けという事で……」


 気絶した少女を担いでダークの元へ向かう。


「うむ、及第点じゃな。」

「どうも。さぁ、ここから離れましょう。村の人達が私たちを奇異な目で見てるわよ。」


「今更か、まぁよい、エール達の元へ行こうかの。」


 村人達がクラリス達に関わりたくないという圧を放っていたのでクラリス達はそそくさと村を後にするのだった。



 少女が目を覚ましたのは日が落ちてからだった。


「……ん?あれ……ここは?」

「目が覚めたみたいね。どぉ?気分悪くない?」

「最悪ですね……殺そうとした人に助けられたんだから。」


「それはどうも。それであなたのお名前は?」

「名前?名前はないですよ。もう捨てちゃったの。要らないから。」


「要らない事はないでしょ?こうして人と話すんだから。」

「はぁ……あなた達この国の人間じゃないでしょ?」


 ため息を吐いて少女は語り出した。


「私も最初の頃は話してた。でもね。流石に50年もこんな見た目だと気味悪がって離れていったわ。」

「うん……」


「だから、名前も捨てたし、顔も極力出さないようにしたの。そうすれば私のことも覚えられないでしょ?」

「そうね。辛かったわね。」


「アンタに何が分かるのよ!いつまでも生き続けるのがどんなにキツイか分からないくせに!分かった様に言わないで!」


 少女がクラリスに向かって泣き叫んだ恐らく今まで溜まってた鬱憤を吐き出している様だった。そして、クラリスは静かに少女を抱きしめてあげた。


「わかるわよ……私も不老不死の呪いをかけられたからね。」

「え……」


 クラリスは少女の耳元で優しく囁いた。


「私は勇者の身代わりで呪いを受けたの。でも、それが不老不死の呪いだった。それから私は勇者の不老不死を私が欲を出して奪ったと言われたわ。」


「そ、そんな……」

「私もあなたと同じく奇異の目で見られたわ。だから言いなさい。あなたの不幸と悩みを、全部。聞いてあげるわ。そして話し終えたら私たちと一緒に来なさい。」


「いいの……?」

「いいわよ。私と一緒なら怖くないでしょ?」


「うぅ……うぅ……」


 その後少女は泣いた。泣き疲れるまで……

ここまで読んで頂きありがとうございました。


次回更新は2月9日の21時です。お楽しみに。


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