49歩目
お待たせしました。
それでは本編をどうぞ!
「ええ、じゃあ説明するね。」
「はい。」
クラリスは1つ咳払いをすると説明を始めた。
「まずは小さい泥団子を作る。」
クラリスはまず手の上に魔法で泥団子を作り出した。それを見てニコラも作る。
「そしてここがポイントね。表面を固めていきます。」
「固めるか……」
「そう、中まで固めてしまうと飛ばないし、効果も出ないからね。」
「えっ、なんで?」
「泥団子だもの。相手の目眩しにならないといけないんだから外は固く中はドロドロによ。」
「ええー、それってかなり難しくないですか?」
「もちろん難しいから1日で出来るなんて思ってないわよ。でも、集中してコツを掴んだ方が効率的でしょ?」
「なるほど、でも、私にもできるんですか?」
「何自信無くしてるのよ。出来るに決まってるでしょ。その為に特訓するんだからね。」
「……はい!」
「じゃあ説明の続きね。外を固めて、中をドロドロにすれば良いって言ったわよね?」
「うん。」
「じゃあ、集めた泥団子の土には何が含まれてる?」
「えっ?水ですよね?」
「いや、それもだけど、違うのよね。」
「……あっ!魔力!」
「そういう事!つまり集まった泥の中に魔力があるのなら中にある魔力を外に集めて使いましょうって話ね。」
「おおー!なんか出来るような感じがする!」
さっきまで自信無さそうな顔をしていたのに、もう元気になっていたニコラを見てクラリスはクスクスと笑う。
「じゃあ、やってみようか。」
「うん!」
そうしてニコラは手の上に泥団子を作ってみた。そして……
「よし、ここから集めた魔力を外へ……」
パンッ
「「あっ!」」
2人が声を上げた瞬間2人とも顔中泥まみれになった。
「あちゃー、やっちゃったね。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「そんなに謝らないでよー。怒ってないから!」
「だって……」
クラリスはタオルを出してニコラの顔を拭いてあげた。
「失敗はよくある事よ。私なんて魔法を失敗してクレーター作った事もあるのよ。それに比べたらまだまだ序の口よ。」
「ク……クレーターですか……あはは……」
開いた口が塞がらないとは正しくこれなのだとクラリスは思うのであった。なのでクラリスは1つ咳払いをして話を戻す。
「まぁ、それは置いといて、ニコラは魔力のコントロールを練習しないとね。」
「コントロールかー……確かに苦手かも……」
「今までみたいにただ放出したり、拳に纏わせるのとは比べものにならないわよ。遠隔で魔力を操らないといけないからね。」
「それ聞くと少し気が滅入りそうだよー。」
「はいはい、そう言うと思ってちゃんと考えてるわよ。まずは小さい泥団子から作って行こうか。いい、まずは固くするより破裂しない様にするのを心がけてね。」
「分かったわ。」
そこから日が沈むまでこの特訓が続いた。
「はぁ、はぁ、ぐぬぬぬぬぅぅぅー。」
パンッ
パンッ
パンッ
ニコラは作っては破裂させ、作っては破裂を繰り返していた。その間クラリスも新たな魔法を編み出していた。主に洗浄魔法を中心である。
「ニコラ、服を脱いで一回洗うから。こっちに着替えて。」
「え、何このピンク色でヒラヒラの服……私には似合わないよ。」
「いいの、とりあえず着替えて、服がこれ以上汚くなると落ちなくなるからね。」
「はーい。」
そして、服を着替えてニコラは修行を再開させようとしたところクラリスに止められた。
「ニコラちょっと待って、少し休憩してから再開するといいよ。魔力コントロールの修行は精神に来るからね。少し寝てなさい。」
「でも、時間が……」
「いいのよ。今日明日で出来なくていいから1つ1つ丁寧にやって行かないと大きな技の時のキレにも影響するからね。」
「キレか……」
「まだ生まれて40年位でしょ。今のうちに基盤をしっかりと作っておくのが大事なの。私もリーフもそうよ。基盤となる基本をしっかりみっちり鍛えたのよ。」
「そうなのだー、じゃあ私も今が大事なんだね。」
「そういう事。じゃあゆっくり休んでね。」
ニコラも納得して少し休む事にした。その間クラリスはニコラの服を洗っていた。
(ニコラもやっぱり努力家ね……姉妹そっくり。)
クラリスはニコラの服を洗いながらそんな事を考える。洗い終えて服を乾かしていると今度はニコラの手のひらが目に入った。手のひらも泥が沢山付いていた。
(頑張ってるんだけどなー……コツさえ掴めればこの子は出来るはずなのに……)
それでも教えられる事は全て教えた。後はニコラがコツを掴んで物にするしかないのだ。クラリスはニコラの頭を撫でながら優しい目をしているのだった。
月が登り切ってからニコラは修行を再開させた。クラリスはその横で土魔法を新たに開発していた。
そしてついに……
「やったー!出来たよ。クラリスさんみてみて!」
「どれどれ?」
子供の様に泥だらけになった顔で満面の笑みを作ったニコラはクラリスに走って向かって来る。
ニコラの作った泥団子を触ってみると……
コツコツ……
「うん、この硬さなら大丈夫よ。じゃあそれを木に当ててみてよ。」
「うん!それっ!」
パリンッ
「うん、いい感じだよ。」
「やったー!」
……
…………
………………
「ん?どうしたの?」
上目遣いでクラリスを見て来るニコラにクラリスは疑問を覚え尋ねてみた。
「ご褒美!」
「えっ?」
「だから、ご褒美!」
「えっ⁉︎ないよー。何も!」
「ええー、こんなに頑張ったのにご褒美ないの?」
ニコラははうるうると目を輝かせてクラリスを見ていた。
「………あー!もう!何が欲しいのよ!」
「やったー!じゃあ、キスして欲しい!」
「キ、キス!またー!」
「またって?」
「フロールの契約を解く時もキスしたんだよー。」
「ファーストキスはじゃあフロールさんなの?」
フロールだけが敵なら勝てるかもと思ったニコラであったがクラリスはその希望を一言で打ち砕く。
「あれをファーストキスにしちゃうのはなー……フロールが許可するのかな?」
「じゃあ私がファーストキスだ!私もファーストキスだからね!」
ニコラは嬉しくて小躍りした。
「えへへ。じゃあクラリスさん目を瞑って。」
「えっ、ニコラがしてくれるの?」
「えっ?クラリスさんがしてくれるの?」
「……任せる。」
そう言ってクラリスは目を瞑った。するとくちびるに柔らかいそれが触れた。そして、すぐにそれは離れた。クラリスは少し物寂しくなったが、ニコラには悟らせない様に振る舞う。
「じゃ、じゃあ特訓の続きしてきなさい。」
「ふふふ、ごちそうさま。じゃあ特訓の続きをするぞー!」
(なんであんなに平然としてるのよー……)
平然と修行に打ち込むニコラをみてクラリスは少しげんなりするのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新は12月12日日曜日の15時です。お楽しみに!
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