30歩目
お待たせしました。
それでは本編をどうぞ!
「この俺にまだ逆らうとはな……バースは死んだ、お前らの希望のな!それでもやるってんならバースの後を追わせてやろう。」
余裕のクローズに対して、エールとニコラは冷静に答える。
「ワタシたちはバースさんにばかり頼ってきました。でも、」
「それなら私たちはバースさんの仇を取らないといけない。それがバースさんへの恩返しだから!」
2人は戦闘態勢をとった。
「2人ともドラゴンになった方が防御は上がるのになんで人のままなの?」
「私たちはこっちの方が慣れてるからです。」
「それにコンビ技もこっちの方がやりやすいからねっ!」
リーフの疑問に答えた2人は言ったタイミングでクローズに向かった。
「お前ら姉妹は強いのは知っている。だがな…」
「はあぁぁっ!」
「うおりゃー!」
2人は同時に攻撃を仕掛けた。だが……
「フンッ!」
「くっ……」
「ぬ〜……」
軽々と受け止められた。
「俺には遥かに届かない…はぁぁ!」
「「うわーー!」」
受け止められたエールとニコラは腕を掴まれ地面に叩き落とされた。
「エール、ニコラ!」
クラリスは2人の名を叫んだ。
「どうやら…これまで戦ってきた相手とは桁違いの強さのようね……クラリス、ここは全力でいかないと勝てないかも。」
「分かってる。その為の布石はもう打ってるわ。あとは発動するまで粘るだけなのだけど…」
「布石ね……じゃあその分の魔力を貰ってくるわね。」
「急げる?」
「クラリスは無断で使うから知らないと思うけど2秒で終わるのよ。こんなの!」
「そうなの?」
「ほら、もう使えるはずよ。」
「えっ?あ、ほんとだ。」
クラリスは先程使った魔力が回復してるのに気づいた。
「それじゃあ、魔力が続く限り戦いますか!」
「ふふふ。じゃあ私はいつも通りサポートするわよ!」
こんな危機的状況にも関わらず2人は笑いながらクローズへと立ち向かう。
「ほぅ、どんな魔法を使ったか知らんが魔力量が増えておるな…しかし。」
再びクラリスの木刀での攻撃を受け止めたクローズ。
「どんなに魔力があろうと、俺には届かん!」
「そうね、私1人ならね!」
クラリスの言葉にクローズは思い出す。この場にはもう1人いる事を。
「私を忘れるなんて、随分とお馬鹿さんみたいね!ツリーブレード!」
リーフの魔法発動で何もないところから太い木の枝が出てきてクローズを襲う。
「フンッ、樹木使いか、だが所詮は植物、焼き払ってくれるわ!」
「その植物にあなたは負けるのよ。」
「ほざけ、この俺が最弱の植物ごときに負けるはずがないだろう!」
そうしてブレスを出す態勢をとる。だが、忘れていた。あの2人の事を!
「うおりゃー!」
「はぁー!」
「ぐぉっ……き、貴様ら…」
「随分と痛い事してくれたわね。」
「今度はこっちの番です!」
クラリス、リーフが作ってくれた隙を突いてエールとニコラが攻撃を加えていく。
「……フンッ効かぬわ!」
「「なっ!」」
再び2人の攻撃は受け止められ投げ飛ばされる。だが、今回はクラリスとリーフが2人を受け止めた。
「ありがとうクラリスさん」
「どういたしまして、少し休んでて。」
クラリスはニコラに変わって再びクローズに突っ込んで行く。
「あ、ありがとうリーフさん」
「どういたしまして、それでエール、攻撃の感触はどうなの?」
「硬いですね。まるで大岩を叩いてる感じです。」
「なるほど、魔力を拳や蹴りに付加せないの?」
「やってるんですが、効いていませんね…そのくらい硬いんですよ。」
「なるほど…」
リーフはクラリスにアイコンタクトを送る。クラリスはリーフからのアイコンタクトを受け取り一旦距離を取った。
「なんだ仕舞いか…?」
「なんのなんの、ここからでしょ!雷よ我が剣と成せ!ライトニングソード!」
クラリスの手には光が集まりビリビリと音を立てて剣を構築した。
「分かっていない様だな、俺に生半可な魔法剣は効かんぞ!」
「そうね。でも、当たれば痺れるわよ。」
クラリスは空を蹴ってクローズとの距離を縮める。
「グゥ……」
苦悶の表情を見せるクローズ。
「当たれば痺れるって言ったでしょ?あなたの鱗は魔力は防げるみたいだけど、物理技は効く。だからエールとニコラの魔力の纏った拳にも平然としてられた。まだエールたちの攻撃だけじゃびくともしないようだけど……」
クラリスはライトニングソードをクローズに向けた。
「でも、その鱗もこの剣の追加効果までは打ち消せなかったようね。」
「おのれ……」
「今です、バースさん!」
「なにっ?」
砂煙の中からバースがドラゴンの姿で現れる。美しい白銀のドラゴンである。
「貴様生きておったのか!」
「死んだと思い込んでいたようじゃの….まぁ虫の息には変わらんがの……」
「ならばトドメを刺してやる!」
「今の貴様にならそれもできるじゃろうな。じゃから……貴様も道連れじゃ!」
クローズに告げるとバースの身体から黒い魔力が溢れる。
「まさか……させるか!」
クローズが物凄い勢いでバースに突っ込んでくる。
「ぐっ……なんだ…身体が急に…重い…」
さっきの痺れとは全く違う。魔力切れの様な倦怠感に突如襲われたクローズに焦りの色が見える。
「ようやく効いてきた様ね。」
「人間……貴様……」
「植物ってね。種の時が1番成長しやすいのよ。最初に放った魔力弾の中に魔力で育つ種を忍ばせていたのよ。この種だけは魔力障壁、防御壁など関係なく育つ様に私が改良したのよ。どぉ、馬鹿にしていた植物にやられる気分は?」
「おのれ……ぬわっ」
「ふふん。私もいるんだからね!」
リーフはクローズの身体をつるで拘束していく。
「自分の身体までは焼けないわよね!」
「おのれ……おのれー!」
そうして、バースは詠唱を終える。
「クローズよ、もしお前が人だけを嫌い、仲間のドラゴン達の為にその力を振るうのであったのなら……お前を長にしていたかもしれなかったのにの……」
バースは目を閉じて独り言を呟いた。
「これがワシの最後の務め!絶死魔法、ヘル・ロード!」
バースが魔法を発動すると周りに漂っていた黒い魔力が無数の手になりクローズを包み込む。
「なんだこれは…気色悪い離れろ!」
黒い魔力からは妙な奇声や、動物などの遠吠えが聞こえた。
「クラリス見えてる…?」
「ええ、あの魔力の手、人だけじゃない…魔物や、動物のもいるわね。」
「恐らく死後の世界から魔力を代償に召喚して対象を連れて行くんでしょうね。でもこの魔法は……」
「ええ、バースさんは覚悟の上よ…」
クローズとの戦闘の少し前…
『クラリスちゃん、奴の動きを止めてくれ』
『何を言ってるんですか、まずは治療が先ですよ!』
『いや、もう手遅れじゃ…それより奴はここで殺らなければ全てを破壊してしまう。それこそ神話の様に…その為に力を貸してくれぬか、クラリス殿!』
バースの目には既に覚悟が出来ていた。
『殿か…私もようやく認められたって事なのかな…』
クラリスの言葉にバースは優しく微笑んだ。
『任せたよ。クラリス殿…』
その直後、クラリスはクローズに向き合うのであった。
黒い魔力が消えたあと、そこにクローズの姿はなかった。
「終わったのよね……?」
「ええ、恐らく……」
クラリスとリーフは戦いが終わった事を確認し合う。そして、バースが力を使い切って落ちて行くのが分かった。
「「バースさん!」」
クラリスとリーフがバースの元へ行こうとしたがエールとニコラが先にバースの元へ行き支えた。2人の目には涙が流れていた。
バースを地面に寝かせて生存確認をするが既に息を引き取っていた。
「バース……さん……」
クラリスの目にもリーフの目にも涙が出ていた。
クラリスたちはなんとか災厄から世界を救った。しかし…失った者もまた大きかった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新時間は10月31日23時です。
時間をまた変更してますので注意して下さい。
それでは次回更新もお楽しみに!
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