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26歩目

お待たせしました。


それでは本編をどうぞ!

「おい、あんたの頼みを聞けば俺を強くしてくれるのか?」

「ええ、良いですとも君がドラゴンの里の(おさ)になった暁には人々と戦争をする。それだけで良いのです。」


ドラゴンの里から一山超えた平原にてドラゴンはある男と契約を交わそうとしていた。


「フンッ、だが良いのか?お前も人だろう。いずれ俺たちは敵となるのだぞ。そんな奴に力を分け与えるとは正気とは思えんが……」

「フフフ。要らない心配ですね。なぜなら私は人ではありませんから。それで受けて頂けますか?」

「ああ。もちろんだとも。これで憎きバース達、穏健派どもを潰せる。時代は再び混沌派に戻るのだ!」


この日一頭のドラゴンが新たな力を手に入れた。革命を起こす為に……



「うーん。良い天気ねフロール」

「そうですね。日向ぼっこには最適な日ですねクラリスさん。」


今、クラリスとフロールはエールとリーフの模擬戦を見ていた。昨日の様なガチにならない様にクラリスが見張っているのだ。一方ウールとニコラは買い物に出ていた。


「それにしても2人とも遅いですね。」

「そうね。まぁなんだかんだでニコラは強いから大丈夫でしょ。」

「そうですね。ウールはともかく、ニコラさんなら大丈夫ですよね。」


ウールも酷い言われようだ。


「「ただいま!」」

「おっ、噂をすれば…」

「何よ、噂って!」

「なんでもないわよ。そろそろウールも鍛えていかないとねって話。」

「えっ、クラリスが鍛えてくれるの?」

「そうね、ある程度の魔法が使えるようになったら私とリーフで鍛えてあげるわ。」

「ほんと⁉︎やった!」


やはりそこまで戦闘に出られないウールは早く強くなりたいらしい。その証拠にここまではっきりと嬉しそうにしてるのをクラリスは見たことがなかった。


再び、コートへ目を向けるとリーフとエールの模擬戦が加熱仕掛けていた。


「2人ともそこまで!」

クラリスの一喝で2人とも拳を止めた。


「ふぅー危なかった。」

「それはワタシもです。ギリギリでした。」


肩で息をしながら健闘を讃えあっている。

「さぁ、みんな揃ったしお昼にしましょう。」


クラリスとフロールはリーフとエールに治癒魔法をかけている間にニコラとウールがお昼の準備をする。


「そういえば今日は大人のドラゴンさん達がいないね。」

クラリスが素朴な疑問を呟くと、ニコラが答えた。

「今日は会合があってるんだよ。バースさんも出てるよ。」

「そうなんだね。ドラゴン達の議題って何なの?」

「そうですね。多くは食糧の事、生態バランスの事、後は人々との交流ですね。」

今度はエールが答えた。そしてその補足をニコラがしてくれる。

「人との戦争以降は友好関係を気付けてるけど未だに戦争をしたがるドラゴンもいるからね。そういうのを話し合いで宥めたり人々に要求する内容を決める為にも必要なんだって。」

「なるほどね。でも戦争なんて百害あって一利なしよ。傷つく人が出て憎しみしか生まれないんだから。」

「あはは。バースさんと同じ事言ってる。」

「えっ、そうなの?」

「そうですよ。バースさんは穏健派ですから。未だに穏健派が強いのはバースさんのおかげですよ。」


クラリス達はバースの偉大さに驚くのであった。

そしてリーフがとある質問をした。

「ちなみに2人はどっち派なの?」

「私たちは中立派だよ。」

「ええ、まだ政治の事はわからないですからね。まぁニコラがやられた時は混沌派に回ろうかと思いましたが。クラリスさんみたいな人がいるという事を知ったので。今も私は中立派にいます。」

「そうなのね。」


リーフは納得した顔をして相槌を打った。


「ちなみに、私たちは中立派、バースさん達は穏健派、そして戦争を推すドラゴンの事を混沌派と呼んでるのよ。」

「「へぇー」」

「まぁ、今は穏健派が強いわよ。中立派も今は戦争はしたくないみたいだし。」

「それなら戦争もしばらくは無さそうね。」

「そうね。バースさんが生きてる限りは大丈夫だと思うわよ。」

「ええ、問題はその後よ。」

「その後?」

エールの言葉にフロールは聞き返す。

「今、バースさんの次に強いと呼ばれているクローズというドラゴンがいるの。」

「クローズは確かに強い。でも、彼が里の(おさ)になったらとんでもない事になるの。」

2人の言葉にクラリスは「何故?」と聞き返すと、ニコラが答えた。

「暴力過ぎるのよ。確かに戦争になれば頼りになるかもしれない。でも意見が通らなければ暴れて会合もめちゃくちゃにするし、気に食わなければ仲間でも暴行してるのよ。」

「なによそれ!そんな奴、誰も信用なんてしないでしょ!」

「そうよ、仲間でも殺そうとするなんてそんな奴を長になんてしたら大変な事になるじゃん!」

話を聞いたリーフとウールがクローズに猛烈に批判していた。

「ええ、だから今はそのクローズの片腕と呼ばれているヘルというドラゴンが出てるの。まだ話が出来るからね。」

「話が分かるドラゴンがいるだけまだマシなのかもね。」

「そうね。もし、話にならない奴らばかりならもう終わってるからね。」


そんな話をしていると。大きな影にクラリス達は覆われた。クラリスは大きな雲だなーと思いながら上を見ると、ドラゴンがいた。

「大きなドラゴンね。」

呑気なクラリスに対して、ニコラとエールの顔つきが変わる。

「あれは…」

「クローズね…」


今上空にいるドラゴンがクローズと知り、クラリス達の表情も少し緊張の面持ちになる。

クローズはゆっくり降りてくるとニコラとエールに話しかけてきた。


「お前たち、何故人間なんかと親しくしている…」

「あなたには関係ないはずです。私たちに構わないでください。」

「フンッ、確かに貴様らの様な雑魚に構う程俺も暇じゃない。だがな…」


クローズはノーモーションで火炎を吹き出した。クラリスたちは一瞬で火球の中に囚われる。


「人と親しくしてるドラゴンなど、最早ドラゴンではない。よって死刑だ。俺の炎を味わって死ね。」

「…ほんと、話に聞いた通りのドラゴンね…」

「ええ、人がそんなに嫌いなら私だけを狙えばいいのに、エールとニコラまで狙うなんてね…」


リーフとクラリスが怒りを滲ませながら言葉を絞り出す。

そして、クラリスとリーフとフロールの水の防御魔法でクローズの攻撃を完全に無効化したクラリス達が現れた。


「ほぉー俺の攻撃を完全に無効化したか…だが、あと何発耐えられるかな…」

「心配要らないわよ。私1人であなたを倒すから。」


クラリスはクローズの前に歩みでる。そして、魔法の杖を構える。

「さぁ。来なさい!」

ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回の更新日は15時です。

お楽しみに。

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