25歩目
お待たせしました。
それでは本編をどうぞ!
昨日と同じ場所でクラリスはニコラの稽古をつけていた。
「せい、やー!」
「ほっ、よっ!ほら、まだ直線過ぎるわよ!」
「あっ!」
クラリスはニコラの足を払い倒した。
「あー、また負けた。」
「もっと角度を変えたり、緩急をつけたりしないと、ワンパターンだと目が慣れてきちゃうわよ。」
「そっかー…よし!もうひと勝負!」
そうして再び稽古を始める。
「だいぶ良くなってきた様ね。」
リーフが座って2人を見ていたエールに話しかけた。
「あら、来たんですね。」
「ええ、家の中に居るより外で身体を動かしてた方がいいわ。」
「そうですか……では、ワタシの相手をして貰えますか?樹木の妖精さん。」
「ふふふ、望むところよ。」
2人はお互いに不敵な笑みを浮かべていた。
「それじゃあ、2人の邪魔をしない程度でいくわよ。」
「ええ、リーフさん、ハンデはいりますか?」
「ふふふ…結構よ!」
少しイラッとしたリーフ。既に精神的な戦略も始まっていた。
「それでは……いきます!」
(うわっ、速い!さすがっ!)
ニコラと同等の速さにパワー。流石はニコラの姉である。
しかもニコラみたいに一直線と言ってう訳ではなく。しっかり考えている。上と見せかけて下、下と見せかけて上と打ち分けも上手い。フェイント1つ取ってもキレがありリーフが押されていた。
「リーフさん遠慮はいりませんよ。本気で来てください。」
「ええ、じゃあそろそろ身体も温まったから遠慮なくいくわ!」
リーフは一旦距離を取って、詠唱を開始する。
「肉体強化!」
リーフの身体に特に変化はないが、魔力が身体に膜を張ってスピード、パワー、耐久を上げた。
「行くわよ!」
(なるほど、魔力で身体を強化したのね。通りで動きが段違いに上がってるわ。)
スピードもパワーもほぼ互角となりほぼノーガードでの殴り合いが続いた。急所ははずしているが、見た目はボロボロになっていた。
「はぁはぁ……」
「はぁはぁ……やるじゃない。」
「ふふふ。リーフさんこそ。魔法だけかと思ってましたがそんな事はないのですね。」
「ええ、物凄い鬼畜な人に鍛えられたからね……」
「そうですか、その人にも会ってみたいですね。」
「やめた方がいいわよ。クラリスですらあしらわれるんだから。」
「世界は広いですね。それでどうでしょう。次の一撃で決着を付けませんか?」
「そうね、時間的にもそろそろお昼だし。帰ってお昼作らないといけないからね。」
「では……!」
エールの右拳に光が集まる。リーフはそれが危険だと素早く察知する。
(もし、相打ちでもこれは私が負ける……なら。)
リーフは魔力障壁を展開する。勝てないのならせめて引き分けに持ち込もうという作戦である。
「流石リーフさん。超高度な防御魔法です。この里でそのレベルの魔法を使える者はバースさんくらいですよ。」
「ありがとう。今の私にはあなたと相打ちで勝てる打撃攻撃はないわ。だから守り切ってみせる。」
「ふふふ。では、打ち破ればワタシの勝ち、守り切れればリーフさんの勝ちですね。」
「シンプルね。良いわよ、来なさい!」
お互い今持てる全ての力をエールは右拳に、リーフは魔力障壁に注ぎ込んだ。
「……いきます!」
「来なさい!」
言葉を交わしたのち、エールは今日一のスピードで飛び込み右拳を魔力障壁へぶつけた。
途端に物凄い轟音が里中に響き渡った。
「はあああ!」
「ぐぬぬぬ……」
気合いで破壊しようとするエール、眉間に皺を寄せなんとか持ち堪えているリーフ。
魔力障壁と拳の境界ではバチバチと火花や電撃が飛び散っていた。
そして…大きな爆発が起こり、周りに物凄い突風が吹いた。
砂埃が治るとそこには大きな穴が出来ていた。そしてリーフとエールは底の方で仰向けで倒れていた。
「あはは……私の魔力障壁を壊すなんてね……完敗だわ。」
「何言ってるんですか……ワタシの最高打点の攻撃が結局届きませんでした。壊せたのも爆発のおかげな所もあります。ワタシの負けです。」
「ふふふ。じゃあ引き分けって事で良いんじゃない?」
「…そうですね。いずれ決着を付けましょう。」
お互いにクスクスと笑いながら天を仰いでいた。
「ねぇ……」
穴の外から低い声が聞こえた。
「リーフ!なんて事してるのよ!こんな大穴空けて!」
「えっ⁉︎私だけ?」
「もぉー!もう少し魔法は考えて使いなさいよ!」
「だから、なんで私だけなの?」
「いいから!早く戻って来なさーい!」
「……ごめん救い出して、魔力も体力も使い切っちゃった……」
「まったくもう!」
クラリスは大穴の中に入ってリーフとエールを拾ってくる。
「もう、もう少し考えて魔法を使ってよね。」
「うぅー……ごめんなさい。」
「よろしい。里は私が防御結界で防いでおいたわ。感謝しなさい。」
「ありがとう……」
「ありがとうございます……」
クラリスはリーフとエールの頭を撫でてあげた。初めから素直に謝っておけばよかったと思うリーフであった。
「じゃあ、私たちはこれで。」
「リーフさん、楽しかったわ!またやりましょう。」
「ええ、今度は魔法アリでね!」
リーフはクラリスにおんぶされて戻っていく。
「それで、なんで私だけ怒られたの?」
「ん?リーフの保護者は私だからねエールの保護者ではないもの。」
「そうだけどー……」
納得するけど、なんか納得いかないリーフ。
「それに、エールはエールで今から叱られると思うわよ。」
「ん?それはどういう事?」
リーフが疑問に思っていると2体のドラゴンが頭上を飛んで行った。
「ニコラが居なかったでしょ?親を呼んで来て貰ってたのよ。」
「あー……」
「あれだけの事して、リーフだけ怒られるのはおかしいからね。」
「私はやっぱり…クラリスに愛されてるのね…」
「当然でしょ。仲間なんだから。」
(嬉しい様な嬉しくない様な…)
まぁ今はこれでいいかと思うリーフであった。
その頃エールは母親から鉄拳制裁を受け、大穴を埋めていた。帰ったら今度はお説教が待っている。憂鬱な気分で作業をするエールであった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
普段とは違う時間帯で戸惑った方もいると思いますが、ご了承下さい。
今日はあと3回更新します。
時間は午前9時、午後15時、午後21時に更新します。
そして日曜日は午後12時と午後21時に更新します。
お楽しみに!
それではここまで読んで頂きありがとうございました。次回更新もお楽しみに!




