誘拐
その時高見家の電話が鳴った。受話器をとった忍は顔を青くする。
「嘘でしょう」
忍は動揺する。それを心配した四郎は彼女に声を掛けた。
「どうした」
「先ほどの電話は『七海を誘拐した。要求は十分後話す。警察に通報しても構わない。次の電話で逆探知できるならしてみろ』という内容でした」
こうして二人は新たなる事件に巻き込まれたのだった。
誘拐事件に巻き込まれた木原と神津は四郎と忍に質問する。
「誘拐犯に心当たりはありますか」
「ある。平山小五郎という男だ。彼は明日奈の兄で自殺の原因が俺たちにあると逆恨みしてもおかしくはないだろう」
「そうです。葬式の日もお前たちのせいだと怒鳴っていましたからね。彼ならやりかねない」
平山小五郎と聞き木原は思い出した。
「神津さん。平山小五郎は浅野長官の幼馴染ですよね」
「そうだったな。ということは、浅野長官は悲劇のヒロインとなるな」
その話をしていたのも束の間。また電話が鳴った。神津はとっさにボイスレコーダーを取り出す。
「これで録音しながら受け答えをしてください」
四郎はボイスレコーダーの電源を入れる。
「高見四郎だ。娘を返してくれ。娘は心臓病を患っている。薬の効果が切れれば死ぬんだよ」
『そんなことは分かっている。時間がない。午後一時日御碕神社に高見明日奈の所持していたUSBメモリーを持ってこい』
要求を伝えると電話は切れた。
四郎はボイスレコーダーを再生した。それを聞き木原はある事実に気がつく。
「誘拐犯は七海さんが心臓病を患っていることを知っているようですね。つまり誘拐犯は身近な人間の中にいる」
誘拐された高見七海は心臓病を患っていた。彼女は無事に解放されるのか。




