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異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~  作者: 十本スイ


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 各々が凄まじい形相で武器を交わせ争い始めた。

 日門はここに来て、周りに隠れている人間たちの気配に気づいていのである。だから事の成り行きを見守っていたというわけだ。


(やっぱこうなっちまうよなぁ)


 最早この世は弱肉強食。生きるために物資の奪い合いが行われる。

 見れば元々一般人だった者がほとんどのようで武器の扱いには慣れていない。ただ我武者羅に振り回して相手を制圧しようとしている。


 突出した猛者がいるわけではないので、やはり結果的には数が多い方が勝利を得るのは常だろう。

 勝利したのは奇襲側であり、倒れた探索側の者たちは呻き声を上げながら地面に伏せている。ここが異世界で、相手が盗賊だと無慈悲に殺してしまうのだろうが、そこはさすがに簡単に越えられない一線のようでトドメは刺していない。


 物資を手に入れた奇襲側は、すぐさまその場を離れていく。探索側の仲間やゾンビ、また他の人間が来ないとも限らないからだろう。良い判断である。

 敗北者となってしまった探索側もまた、フラフラになりながらも仲間同士で支え合い、ゆっくりとだができるだけ急いで離れていく。


 誰もいなくなったところで、ようやく静かに探索できると判断し建物の中に入っていく日門。

 薄暗い店内を軽く見回してみるが、やはりあまり物資は残されていない。これまでやってきた連中はさっきの奴らだけではないだろうし、残っていないのは自然の流れか。


 それでも根気よく探せば、幾つか薬品らしきものを発見するが、化粧品や粉プロテイン、サプリなどの腹の足しにならないようなものばかり。サプリもコラーゲンとかプラセンタなどといった日門にとっては必要のないものが多い。


「女なら嬉しいんだろうけどなぁ。けど今の状況で美意識を気にしてもしょうがねえし」


 そうはいってもどんな状況、時期であろうと美を保ちたいと願うのは女性の常。ということで一応拝借させてもらうことにした。何かの役に立つかもと願って。

 残念ながら食料は見つからなかったが、日用品の幾つかを手に入れることができた。


 洗剤や洗顔用クリーム、シャンプーやリンス―。他にもノートやペン、ビニール袋にアルミホイルなどといった雑貨などだ。


 そして探し求めていた猫用品も幾つか残っていたので、ここに来た甲斐は十二分にあった。それらをいっしょくたにして《ボックスリング》に収納して外へ出る。

 一応今日の目的は終えたのだが、このまま直帰するかまだ探索をするか思案した。


 時間もまだまだあるし、ゲームや漫画を楽しむのは夜になってからでもいいと思い、それまではここらへんの探索を続けることとする。


「んじゃ、のんびりやっていきますかね」


 ただ一人、終末世界でも鼻歌交じりに歩を進めていく日門であった。



     ※



 周りでは自分と同じメイド服を着用した女性たちが忙しなく働いている。

 ここは小色が現在世話になっている国滝時乃の屋敷であり、その厨房であった。最初は洗濯や掃除などといった仕事を任されていた小色だったが、調理もできるということで、時乃の指示で調理も行うことになったのである。


 とはいっても下っ端としてやっていることは、野菜を切ったり皿を用意したりする程度のこと。本格的に調理をしているのは――。


「――ほら、ぼーっとてしねえで皿を用意しな!」


 厳格な声音で指示を飛ばしている、この厨房の主――味村凛あじむらりん。まだ三十代という若さにもかかわらず、終末世界になる前からこの屋敷の厨房を任されているらしい。

 聞けば有名ホテルで副料理長を務めていたようで、そこを時乃が気に入り引き抜いたとのこと。


 彼女の作る料理は美味しいのはもちろん、その見た目からも美しく、料理大会で何度も入賞をしているほどの腕だと聞いた。

 そんな彼女だから料理人としてのプライドも高く何よりもストイックであり、調理に一切の手を抜かない。そして効率を求めるために、動きの遅いメイドたちには痛烈な叱咤が飛ぶこともある。


「ていうか言われる前に用意しとくんだよ! いつも言ってんだろ!」


 そして今、お手伝いをしているメイドが皿を出し忘れていたようで焦っていたが、そこへ小色がすぐさま皿を出した。同時に皿を置く場所が少し汚れていたので、サッと綺麗にしておいた。


「! ……ん、よし」


 そう軽く声を出した凛は、フライパンに入った料理を皿に出して盛り付けを施す。そして即座に次の料理へと入っていく。

 本来ならここで皿を用意していなかったメイドたちに向かって怒鳴り声が響くが、小色の機転によりそれもなかった。


 メイドたちはホッと胸を撫で下ろして、自分の作業へと集中し始める。小色もまた野菜カットに戻った。


 そこへ――。


「あ、あの……」


 声を掛けられて「え?」と小色が顔を向けると、隣にメイドの一人が申し訳なさそうに立っていた。


「えと、その……さっきはありがとうございます」


 そう感謝を述べてくるのは、この中でも自分と同じように若いメイド。


「いえいえ、気にしないでください!」


 笑顔を浮かべてそう言うと、相手もまた安堵したように頬を緩める。


「あの、私は折川おりかわすずねっていいます。えと……確か春日咲……」

「小色です。良かったら小色って呼んでください!」


 ここに来た時に自己紹介したから、小色の名前はメイドたちには分かっているだろう。あとは各々接触した時に名前を再度交換する形で覚えていくのだ。

 だから折川すずねとは、これが初めての会話ということになる。


「小色……小色ちゃんって呼んでいいですか?」

「はい! あ、でもわたしこう見えても十六歳ですから子供扱いは勘弁してくださいね!」


 いつも初対面の人にはそう扱われるので先に注意を促しておく。


「そ、そうなんですね。じゃあ同い年だし、お互いに敬語はなしでいいかな?」

「分かりました! ではわたしもすずねちゃんって呼びますね!」

「! うん! えへへ」


 早くも同年代の友達ができたことで小色もそうだが、すずねも嬉しそうだった。

 しかしここで手を止めている二人に喝が飛ぶ。


「そこの二人! いつまでサボってる! 時間は待っちゃくれねえぞ!」


 男らしい言葉遣いで凛から激がぶつけられてしまう。


「「す、すみませんっ!」」


 小色とすずねは同時に返事をして、すぐに自分の作業へと戻っていった。

 そして仕事が一区切りついた時、何故か小色が凜から呼び出しを受けたのである。






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