ライカンスロープ②
俺達は無事研究所に侵入できたが、隠密行動が原則なのにいきなりAK-47を構え始めた。
こいつはバカなのか弟が監禁されてるのに、バレて人質が殺されたり盾にされたらどうする気なのか。
やっぱり狼は狩りが下手だって言うのは本当だな。でも昔の戦争でイタリアと組まなければ勝てたって言ってた人もいたからお国柄なのかな。
なんでこんなお荷物と組まなきゃいけなくなったのかは数時間前に遡る。
『レイジさん、斗真さん救出の段取りが付いたから実行するよ』
「やっとか、それでどうすれば良い?」
『もう人質に成ってる子のお兄さんと合同作戦だからね』
「単独の方が楽なんだけど」
『確かに救出だけなら問題ないだろうけど、さらわれた子供はまだ5才で相当惨い実験されて知り合い以外だとまずいのよ』
「じゃ俺が助け出すから外で待っててもらえないの?」
『難しいかな。あの種族は仲間意識が強くて仲間に危害が加わると頭に血が上って冷静じゃ居られないのよ』
「どんな種族だよ。前に教えて貰ったイタリア人だろ。マフィアとか?」
『マフィアより質が悪いかも。彼らは古代人が作った種族で色々な呼び方が有るけど、ワーウルフとかライカンスロープとか日本じゃ狼男だね』
「おいおい満月はまだ先だよ?」
『別に満月を見たって大猿には成らないよ』
「いや待て話はどっかのヤサイ風の名前の話じゃないから。どこまで漫画アニメに嵌っているのか」
『あの漫画は名作だね。だけど二足歩行を始めると尻尾は退化してしまうんだよ』
「いやいや今そんな事話してる場合じゃないでしょ。その男は使えるの?」
『素人レベルかな。だけど簡単に死なないから大丈夫』
「そんなの邪魔以外何でも無いじゃん」
『大丈夫だって。奴ら日本を舐めてて大した警備体制じゃ無いし、魔女っ娘イブちゃんのバックアップが有れば余裕だよ』
「最悪俺がカバーするから良いけど、ラウルが殺した警備兵はどうすんの?」
『それも大丈夫。ラウル君の組織に隠蔽班が有って後始末はお任せだから』
「斗真は俺が連れて帰って良いんだよな?」
『問題無いけど研究資料やサンプルの持ち出しはダメだからね』
「分かってる」
『じゃあ待ち合わせの場所と連絡先を教えるね』
それから俺は一緒に行くって聞かないシルフィーを宥め、帰りに1人友達を連れて来るから料理して待っててくれって何とか納得させ、俺は合流地点に向かい現在に至る。
俺も余計な事考えてたからか彼奴AKをぶっ放しやがった。
「馬鹿野郎隠密行動なのにぶっ放す奴が有るか、弟が殺されたり盾にされたらどうするんだ」
「すまん気づかれた気がして……」
「やっちまったもんはもう仕様がない。それより最短ルートで行くぞ、付いてこい」
「おおっう」
絶対にイブは分かっててラウルを同行させたな、何か有るんだと思うから今日はイブに従ってやるか。
まったくAKなんかぶっ放すから入口にM2重機関銃なんか持ち出してるじゃんか。
「おいラウル、俺が正面を片付けるから援護してくれ」
「普通の人間に対処出来る訳無い」
「ほら見て見ろ」
おれは魔法で原子振動を起こし弾丸を一斉に暴発させた。
「俺はウイザードなんだよ分かったか」
「ウイザードなんかこの世に居ないトリックだ」
「まったく狼男は居るのに魔法は信じないなんて」
「おれは狼男じゃないライカンスロープだ」
「御託は良いから行くぞ」
建物に入るとこそこそ隠れて居る奴らの気配がする。
「先に行くぞ」
「馬鹿」
見事に隠れてる警備兵に撃たれてるラウルが目に飛び込んできた。
俺は次元結界を張りながらラウルに駆け寄ると額に1発胸に2発銃弾を喰らったところから弾丸が排出されるところを見てしまった。
「うわー気持ち悪い、体内から弾丸がもぞもぞ出て来る」
「だから言っただろ俺は不死身だって」
「痛く無いの?」
「痛いに決まってるだろ」
「じゃ馬鹿みたいに突っ込まなきゃ良いのに」
俺はしゃべりながらも敵の銃を暴発させ無力化させていく。
一応ラウルも学習したのか突っ走らなくは成ったが、ハッキリ言って邪魔。
イブのおかげで研究者たちは部屋にそのまま鍵を掛け外に出れないので、ラウルの弟が居る厳重区画に向かった。
イブに隔壁扉を開けてもらおうとするとラウルの手の爪が黒く伸び、手が大きく成り皮膚が裂け赤黒い切れ目が手に現れた。
「おい待て今開けるから」
「うるさい」
俺はラウルの襟首を掴み後ろに放り投げた。
「テメー」
「馬鹿犬、トラップだ。これは高電圧が仕込まれていて多分お前達用の対策だろうが」
「でも言えば分かるだろ」
「何回言ったと思ってるんだ。弟の事を思うなら冷静に成れ」
「分かったよ」
「分かってるならここまで来るのに何発撃たれれば気づくのか。この先に4匹のお前のお仲間が待ち構えている。弟も脱出しようとエレベーターに乗っているがイブが抑えてるからもっと慎重になれ」
「分かった」
「ほら開くぞ」
扉が開くと中は培養するための大きなガラスの筒状の水槽が並んでいた。その中には口は狼の様に長く身体は熊みたいな丸っこい毛の無い動物が居た。
奥に進んで行くと爬虫類の様な物や手足に鳥の羽が生えた物等様々な種類が居た。
「来るぞラウル」
「おう」
現れたのは体長3メートルは有ろうかと思う顔が狼身体は熊で全身ピンクで毛の無い怪物が襲い掛かってきた。
「レイジ、こいつら再生するから俺に任せろ」
向こうの世界に居た時も再生持ちの悪魔は居たけど、こいつらは正確には再生では無くて急激は細胞分裂により補っているためエネルギーが悪なると自滅する失敗作だ。
「遊んでる暇はないぞ」
「こいつらほって置いて先には進めないぞ」
「ちょっと離れてろ」
俺は原子振動で中からこの醜い物を焼いていく。
「外から焼くと生焼けだし時間が掛るから中から一気に焼いてみました」
「なんなんだよお前は?」
「ウイザードだって言ってるでしょ」
奥から4人の兵士と2匹の怪物に守られた男がストレチャーを押しながら向かってきた。
「てめえら、ジャンを放せ」
そうするとストレチャーを押してる男がラウルに話しかけた。
「あなたはこの子のお兄さんですよね?この子を開放してあげますから武器を置いて投降しなさい」
「そんな事信じられるか」
「我々はもうこの子の研究材料の価値が無いので是非大人のサンプルが欲しいんですよ」
「ふざけんな」
「おっと動くとこの子は高圧電流で黒焦げですよ。私があなた方の弱点を知らないと思っているんですか。
私は太古に栄え神にさえ喧嘩を売った超古代文明の生物兵器ライカンスロープを現代に蘇らせるんですよ」
「俺たちは現代でも生きてるだろ」
「違いますよ。中途半端なライカンスロープでは無く生物兵器に特化した新たなライカンスロープを」
「お喋り中悪いけどお仲間は居ないよ」
「お前いつの間に?」
「戦闘中にお喋りするなんてダメじゃないですか」
「なんだお前は?」
「名乗る程の者では有りませんし、これから死ぬ人に話しても」
俺は偉そうに話していた男の腕を掴み奥に投げ捨てた。
「弟は治して置いてやるから奥の奴に恨みをぶつけろ」
ラウルの目は話して居る時から青から黄色に変わり、どっかで恨みをぶつけなければ暴発寸前なのは明らかだ。
「………」
ラウルが弟の姿を見ると駆け出し、俺は後ろ姿を見るとその姿は伝説の狼男の姿だった。
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