ライカンスロープ①
俺は今ラウルと言うイタリア人の男と一緒に中央道を長野方面に向けて走っている。
イタリア人ってもっと陽気な人だと思ったのに、彼は不愛想でかなりイライラしてる。
「イブ防衛要員の装備は?」
『たいしたこと無いですよ。小銃と拳銃くらいです。あと熊とオオカミの合いの子みたいなキメラが4体ですね』
「おい、4体のキメラみたいなのって彼奴らまさかジャンの細胞を使って作ったのか?4体のレプリカどもはかなり強いと聞いている」と急に俺とイブの会話に入ってきた。
『防衛用に4体だけ使ってますが培養中なのが16体居ますよ』
「そんな事は良い。それよりジャンは大丈夫なのか?」
『生きてきます』
「イブ、なんで俺だけで救出作戦をさせなかったんだ?俺なら5日前には救出できたはずだ」
『ジャン君がレイジを信用しないで反撃したり暴れたら殺すの?』
「子供を殺すつもりはない」
「でも彼らはオオカミ男よ」
「我々はオオカミ男では無いランカンスロープだ。間違ってもウルフマンと一緒にするな」
「ねえねえ満月見ると変身しちゃうの?」
「そんな事はしない」
「そうなの、ちょっと残念だけど今日は満月じゃないからな」
「お前はこれから襲撃するのに緊張感が無いな。お前は俺の後ろで見ていろ。監禁されてる研究者はお前に渡すが邪魔したらお前も殺すぞ」
「はいはい」
「ふざけんな。舐めてるようだが奴らは再生能力が有って心臓潰しても復活するぞ」
「大丈夫大丈夫、ラウルさん強そうだから」
「だから日本人なんかと組みたくなかったんだ」
「日本語上手いのになんで嫌うの?」
「昔母さんの彼氏に教わったからだよ。それに日本語使えると観光客から金巻きあげるの便利だからな」
「まったくあんたら犯罪集団かよ。そのバックの中身AK-47だろ」
「昔は悪い事してたが今は悪い事なんかしてない。ライカンの掟でしない」
「日本にそれ持ち込んでる自体犯罪だけどな」
「密輸してないぞ。日本に来てから調達した」
「銃器売買も違法です」
「いやいや、お金なんか払ってないぞ。俺達は鼻が良いからガンオイルの匂いで分かるんだよ。後は普通に貰って来ただけだよ」
「ずいぶん鼻が良いんだね、警察犬に成れるよきっと」
「おちょくってるのか」
運転中の俺の胸倉を掴んできた。
「ちょっと危ないから話してよ、ハウス」
「テメーおちょくりやがって」
「ちょっとふざけただけじゃん。これから一緒に組むのにコミュニケーションは大事でしょ」
「なにがコミュニケーションだ。お前は俺の後ろで救出だけしてれば良い。普通よ人間が役に立つ訳無い」
「はいはい、俺は後ろで見てますよ。陰キャなイタリア人て居るんだね」
「インキャ?なんだそれは」
「いつも冷静な人って意味だよ」
「違ってたら絶対殺す」
何とかコミュニケーションは取れたから良いけど、この人一人でやる気みたいだけど大丈夫かな。脳筋陰キャって新しいジャンル確立しそう。
そう言えば藤堂斗真も昔かなり陰キャだったな。
俺達6人は中学校に入って班分けで一緒に成ってから友達に成りそれからの付き合いだ。
初めは斗真は皆にも目を合わせない変な奴だった、って今でも変な奴か。斗真は小学校の時にいじめを受けていた様でびくびくしていた。
斗真はIQ161の天才だ。しかも記憶力が異常に良いギフテッドだ。
ギフテッドは天才何だけど幼少期は自閉症と間違われることが多くなかなか一般社会に溶け込む事が出来ない。
俺たちの学校もいじめが全く無いとは言わないが、俺たちの班にそんな事する奴は居なかったし、正義感の強い歩が苦労して斗真とコミュニケーションを取り出してからは一緒に遊ぶようにも成った。
それからは斗真も明るく成ってちょっと変わってる親友に成っていった。ただ高校1年生の時に斗真の妹が小児癌で病気が解ってから二ヶ月で亡くなった。
それから斗真は医学部を目指し普段から医学書を読み勉強する様に成った。一時まったく関わり合いが無くなってしまい、いくら俺たちが話しかけても返事も無かった。
それから斗真は教室でも孤立していった。俺は半分諦めていたが、歩が根気よく斗真に話しかけ心を開いた。
それからは勉強もするが俺たちと遊ぶ様にも成りクラスでも浮かなく成った。大学も帝大に入り医師資格も受かり医者に成るのかと思ったら、医者1人の力では限界が有ると院で細胞研究を始めてほぼ大学から出ない引き籠り研究者に成ってしまった。
そんな斗真がどうして得体の知れない研究所なんか入ったのか不思議だ。俺は研究の為とは言え戦争道具を作るなんて事は無いと信じたい。斗真は病気で苦しむ人間を無くしたいと言って頑張っていた。そんな奴が悪に手を染めるなんて考えられない。
イブは騙されて連れてかれたって言っていたけど、歩の言葉じゃないけど友人ならとことん向き合えって言ってたな~。
俺ももし斗真が間違った方に進んでたら向き合って正してやろう。
そして俺たちは今、研究所の有る山奥まで来ている。もちろん研究所に車で突っ込む訳にもいかないので、森を歩いて向かっている。
「普通の人間にしてはよく俺に付いてこれるな、大口を叩くだけは有るのか」
「へいへい」
「見えて来たぞ」
「マジか。何でこんな塀に囲まれた施設造って怪しまれないかな」
「ここはレベル4の施設だ。テロ対策の為に警備が厳重でもおかしく無い」
「バレない様に侵入するぞ。いい加減にちゃんとしろ。潜入がバレてジャンが殺されたりしたら俺はお前を殺すからな」
「それならいい加減俺を信用しろ。イブが塀のセンサーを無効にするし研究所内のカメラはイブの支配下に成ってるからラウルはおもちゃさえ撃たなければ侵入できる」
「お前よりイブの力を信じる。成功したらイブにはお礼をするつもりだ」
イブはAIで人間じゃないんだけどな。
「ぼさっとするな行くぞ」
「へいへい」
俺達は3メートルは有ろうかと思う壁を越えて研究所に侵入する。




