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シルフィー料理を習う

side:シルフィー


今日はレイジさんの実家でお母様にお料理を教えて貰いに来ている。


お母様は今日の為に私にエプロンまで買って用意してくれている。恥ずかしながら私はこの世界に来るまで料理と言う物をした事が無い。


それでもそんな私にお母様は丁寧に優しく教えてくれてすごく楽しい。


「シルフィーちゃんは器用だから私も教えるのがとっても楽しいわ」


「いえ、お母様の教え方がとっても分かりやすいからです」


「本当に怜志なんかと結婚してくれてありがとうね」


「そんな事無いです、私こそレイジさんに貰って頂いて……」


「シルフィーちゃんこれからも家に遊びに来てね。男の子なんて社会に出たら殆んど私の事構ってくれないし、夏美はファッションしか興味ないから料理を教えようとしても嫌がって全然教えさせてくれないの」


「私もレイジさんにお料理ばかりさせてしまって心苦しかったので」


「あの子は料理はするけどその他の家事は全くダメでしょう。物を片付ける事が出来ないから掃除は適当でタンスの中やクローゼットの中はぐちゃぐちゃだし脱いだ物はその辺に脱いで放置だし」


「でもタンスもクローゼットは綺麗でしたよ?」


「それは怜志が入院してる時に私が片付けたのよ。あの子今でも家に帰って来たら脱いだもの片付けないでしょ」


「そうですね。でも靴下やシャツは脱いだら洗濯機に入れてくれてますよ」


「そんなの当たり前よ。でもそれ以外の洋服は寝室に山に成ってない?」


「それは私が片付けてます」


「ごめんね、あの子ホントにだらしなくて。あの子ね、シルフィーちゃんが来る前まで洋服は何時も真っ黒だし家に帰れば夏は短パンとTシャツで冬はスエットしか家の中じゃ着ないしホントだらしなくて。ホントお父さんと一緒で似た者同士」


「そうなんですか?」


「そうなのよ、あの親子は似た者同士なの。しかも怜志の目はお父さんの父にそっくりで。それも有って同族嫌悪なのかくだらない事で直ぐに喧嘩するしね」


「そうなんですか?」


「お父さんが悪いんだけど、お父さん東北の国立大を出て省庁に入って苦労したから子供には帝大に入って欲しかったの。でも怜志は反抗して帝大に行けたのにわざと帝大に行かなかったし、大学に入って直ぐに一人暮らしを始めちゃったの」


「だからお料理とかできるんですね」


「それに学費は出してあげてたけど、生活費は自分でアルバイトして稼いでたの。学生なんだから勉強が本分だから生活費にいくらか出してあげたかったんだけど、お父さんと喧嘩してお父さんの世話には成らないって啖呵切っちゃって。でも学費はお父さんの稼ぎなのにね。お父さんもその事言ったら大学を辞めると思って言わなかったけど、ホント頑固な親子で困っちゃうわ」


「そんなに仲が悪いんですか?」


「別に憎み合ってる訳じゃないから大丈夫よ。それにお父さんも退官してから温和に成ったし、それに今は反省中だから大人しいわよ」


「本当に浮気なんかしたんですか?」


「そうよ。退官して暇とお金を持たせたのは私の失敗ね。あんなハゲお金が無かったら誰も相手にしないわよ。貢いだ物と同じ金額分のバックや服をお父さんの小遣いで買わせたけどね。だからあの人のへそくりはすっからかんよ」


「可哀そうですね」


「自業自得よ。それにシルフィーちゃんも何か有ったら私とアロナちゃんと夏美が手伝うからね」


「大丈夫です。レイジさん優しいので」


「でもあの子押しに弱いし直ぐに流されるから気を付けてね」


「はい、その時はお願いします」


「ほんとシルフィーちゃんは可愛いわね。何か有れば直ぐ呼んでね、直ぐに助けに行くから。女の怖さを思い知らせてやるわ」


「はい、お願いします」


「ほんとに怜志には勿体ないお嫁さんよね。あっそうだ、怜志の小さい頃の写真と怜志の弱点教えてあげちゃう」


息子の怜志よりシルフィーを本当に大事にする母だった。



side:男鹿怜志


その頃怜志は車を買う為にレクサスに来ていた。


怜志はやっぱりリアシートが付いているがゆったり乗れない車以外にも必要だと思い、レクサスLXかその他の大型SUVを買いたいと思っていた。


怜志はアストンマーティンで乗り付ければ変な対応されないと今までより気楽なつもりで店舗に車を乗り付けた。


しかし怜志の思っていたのと違い、前に着いていた古い国産車のお客さんも駐車場でドアを開け営業マンが丁寧に接客していた。


怜志は昔高級スポーツカーを見に海外メーカーのショウルームに出かけた時まったく相手にされず嫌な思いをしたことが有ったのだ。確かにあの時は買う予算は無かったがローンを組めば買えない訳では無かった。

それなのに冷やかし客と思い相手にされず嫌な思いをしたのだ。


それなのにここは嫌な顔をせず、きちっと接客している。国産車にしてはかなり高いと思うが、車って買って終わりじゃないから多少高くてもしっかりとした接客と安心が有る方が良いに決まってる。


たしか最近じゃレクサスを見習って大手ハウスメーカーでもマナー講師を招いて講習をしている話を聞くしな。やっぱ高い買い物するなら接客は大事だもんな。


俺の車のドアを開けてくれたのは女性で最初受付の子かと思ったら、挨拶され名刺をもらうと営業の様だ。


今まで何台か車を買った事が有るが、女性の営業は初めてだ。容姿も会社の受付でいるような整った顔立ちで美人だ。俺にはシルフィーって妻が居るから変な気は起こさないから安心してくれ。


誰に言う訳でも無いのに心の中で何故か言い訳してる。


「LXを見たいんですがこのショウルームは展示してますよね」


「展示して御座います。只今他のお客様がご覧に成っておりますので、お飲み物をお持ちします。しばらくお待ちください」


俺は席に案内されアンケート用紙を渡され記入させられたが、流れは自然で嫌な気分には成らなかった。


それからアイスコーヒーを淹れて貰い10分位雑談してから車を見せてもらう事に成った。


女性でも流石営業さん、俺の質問に的確に答えてくれる。ゴルフバックは余裕で積めるし気に入ったけど他も見てみたい気がする。


俺は促されるようにオプション等総額の見積もりをもらう事にした。


希望のオプションを付けると1400万。今なら別に大した事無い額だが、元々俺は一般市民で最初に買った車は中古車だ。


だがなんかこの営業さんと話していると他を見なくても買っても良いんじゃないかと思ってしまう。本当に俺は強引な押しは跳ねのけられるけど、優しい押しには弱い。


「どうぞ他に検討してる車と比べて見て下さい。高い買い物ですから良く検討してお選び下さい」


「元々LXが一番良いと思ってましたから買う事にします」


それからはトントン拍子で決まり結局買ってしまった。


納車は2週間後で車庫証明は新しいマンションで取るので、後日書類を渡す事でショウルームを後にした。


考えてみれば俺ってちょろい客だったんじゃないかと思ったが、元々欲しかった車だし良いかと思い車に乗り込んだ。


ショウルームを出る時に大勢の方に見送られて車を走らせたが、バックミラーで見えなくなるまで頭を下げていたのには驚いた。


俺なら契約決まった~って喜んで事務所に下がるのに。この精神は見習わなければ。


ただ予定が空いてしまった。実家に行ってシルフィーがいびられて無いか確認しなければいけないが、親父が居る家に行くとまた喧嘩になるのは目に見えているので実家に長時間居たくない。


そろそろお昼だし久々に牛丼でも食べに行こう。シルフィーにまだ牛丼はハードルが高いだろうし、せっかく1人だから牛丼にしよう。牛丼つゆだくで温玉乗せて紅ショウガたっぷり乗せて食べるんだ。


久々の牛丼を堪能したが、最近はテーブル席も充実してるからなのか女性も多い。それに牛丼なのにスプーンで食べてる人も居た。これならシルフィーも連れてこれるかもだけど、元王族を連れて来る店では無いけど良いかな。


予定より大分早く実家に着くとシルフィーは楽しそうに料理をしていた。


「おかえりなさいレイジさん。今日の晩御飯はレイジさんの好きな和風ハンバーグとヒジキの煮物と豚汁だよ。それに食後のプリンも作ったんだよ」


「おおすごいな、母さんに虐められなかったか?」


「あんた親を何だと思ってるの。こんな可愛いシルフィーちゃんを虐める訳ないでしょ。それよりシルフィーちゃんを泣かせたらあんた徹底的に追い込むからね、良く覚えときなよ」


「実の息子より嫁優先なのかよ?」


「当たり前でしょ。シルフィーちゃんはこの世界に両親家族は居ないのよ。私はこの世界のシルフィーちゃんのお母さんに成るんだからね」


「お母様ありがとう御座います」


「なんて可愛いのシルフィーちゃん今度一緒に買い物行きましょうね何でも買ってあげる」


まあ、嫁姑で仲が良い事は良いんだけど。何故俺と親父は蚊帳の外なんだ?俺は何も悪い事してないよな。


俺はシルフィーが作った晩御飯を兄家族も一緒に食べ幸せを感じているのに、親父がお金が有ってもきちんとした仕事をしないと社会から認められないぞとか小言を言われたけどスルーした。


親父がスルーした事に怒ったが兄と母さんが抑えてくれた。


「俺近い内に会社作るから」


「中途半端な事じゃ失敗する事が目に見えている、どんな事業計画なのか見せて見ろ」


「見せる訳ないだろ、別にどっかで融資受ける訳ないんだから」


「それだって失敗してシルフィーさんを泣かせる様な事が有ったら許さないぞ」


「大丈夫だよ、まだ言えないけど画期的な物を作って売り出すから」


「それでも社会では良い物を作っても騙されるケースも有るんだからな、お前も結婚したんだから家族を優先しろ。困ったら頼れよ」


「……分かった」


俺は生まれて初めて親父が俺に頼れって言われた。俺のやる事全て反対すると思ってた親父があんな事言うなんて。


「お父さんだって心配してるのよ。貴方も良い加減反抗期止めなさい」


なんか初めて結婚したからなのかお金を持ったからなのか、親から本当に心配されている気がする。


確かに母さんに聞いたけど親父は俺が事故に有って病院に運ばれた時真っ先に駆け付けたらしい。俺は兄と違って嫌われてると思ってたのに、その話を母さんに聞いた時保険金目当てじゃね~って言ったら包帯巻いてる頭を叩かれたな~。


俺も少しは親の言う事を聞くかな。




間違えて別の作品に投稿してしまいました。


知らせてくれた方ありがとう御座いました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 父の愛、不器用な親子は無性に泣きたくなります。早くに父を亡くした身には主人公には親を大事にしてもらいたくなりました…。 [一言] 更新。毎日楽しみにしています! 頑張って下さい!
[一言] 正しい作品に投稿したので安心しました。 先生の小説を、楽しみにしています。
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