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第31話 アリアカ王城でアルヴィ王は民に約束する

 七月九日、リジー王子軍、二万は王都アリアガルドへと到達した。


 街門は閉ざされてひっそりとしている。


「国王陛下の帰還であるぞ、街門をあけよっ!!」


 馬に乗ったマウリリオ元将軍が門を挟んだ塔に叫ぶが反応は無い。

 だが、門の上には兵はいない。


「押し通ってもよろしゅうございますか、リジー王子」

「フローチェ、出来るの? 王都の正門は堅牢だよ」

「お嬢様、斥候部隊を出し、塀を越えさせて門を開けるのが常道ですよ」


 うるさいわね、この軍事オタクの呼び出しは。


「近衛力士隊! 来なさいっ!」

「どすこいどすこい!」


 二十五人の力士たちが現れると勇壮ね。

 全員マワシいっちょの裸で、足には雪駄よ。

 彼らは裸がユニフォームなのよ。


「目標王都正門! 対物てっぽう戦用意!!」

「どすこいどすこい!」


 力士たちが雪駄を脱ぎ捨てた。


 私を筆頭に、二十五人の力士がすり足で正門に詰め寄っていくわ。


 銅で作られた壮大な正門に接敵し全員で息を合わせて、てっぽう。

 腰を落とし、渾身の力で突き押し!!


「「「「「「どっこーい!」」」」」」


 ズドーーーン!!


「「「「「「どっこい! どっこい! どっこいっ!」」」」」」


 

 ズドーーーン!! ズドーーーン!! ズドーーーン!!


 ドガン、ガラガラガラ!


 さしもの王都正門も近衛力士隊のてっぽう連打によって破壊されたわ。

 相撲に不可能なぞ無いのよ。


 私たちは、王都に入城した。


 王都はシンと静まりかえり、猫の子一匹大通りにはいない。

 人は居ないのかなと思って建物を見ると、カーテンの影の人影とかが見えるから、リジー王子軍が略奪放火をしないのかと恐れているみたいね。


 馬に乗ったアルヴィ王が列の前に出てきた。


「王都の民よ! 王だ、お前たちの王がアリアガルドに帰ってまいったぞ、さあ、愛する民たちよ、顔を見せておくれっ!! ジョナス王子とヤロミーラに虐められてなかったかいっ? もう大丈夫だ、私が帰ってきたからなっ!!」


 おずおずと、王都の民たちが戸をあけ、窓をあけて顔を出し始めた。

 子供が一人、とととと、一輪の花を持ち、アルヴィ王の下に駆けてきた。


「おうさま、おかえりなさいっ」

「おう、帰ってきたぞっ、明日から、この国は元通りだ」


 アルヴィ王は馬を下りて、子供を抱きかかえた。


「王だ、正当なアリアカ王の帰還だ……」

「ジョナス王子派は終わりだ、またアルヴィ王の治世が再開される……」

「王よ、よくご無事で」

「あの裸の一群はなんだ? やけに勇ましいが」


 家の中から、民たちがおずおずと外に出てきた。


「なにをしけた顔をしておるのだっ、王の帰還ぞっ!! 歓声を上げよ、国歌を唱和せよっ、楽曲を鳴らせっ!! 王都の諸君、派手に行こうじゃないかっ!!」


 うおおおおっ!! と群衆が爆発した。

 どこからか、楽団が現れ国歌を演奏し、民が唱和する。


「「「「「「アルヴィ王!! アルヴィ王!! アルヴィ王!!」」」」」


 さすがは王様ね、カリスマの塊で、民を乗せるのが上手いわ。


「お父様、格好いい」

「そうか、リジーよ、お前が戴冠する頃にはこれくらい出来るようになっておくのだぞ」

「うん、がんばるよっ!」

「民を鼓舞できてこそ、一流の王族だ」


 大丈夫、リジー王子には聖王の片鱗が見えるわ。

 きっと名君と誉れの高いアルヴィ王陛下よりも、ずっと讃えられる聖王になりますわ。

 私が死ぬまでお守りしますし。


「さあ、王の凱旋だっ! 皆の者! 王城までパレードだっ!! 花をばらまけ、舞い踊れ、王の凱旋を言祝ことほぐのだっ!!」

「「「「「「アルヴィ王!! アルヴィ王!! アルヴィ王!!」」」」」


 歌い、踊る群衆を連れて私たちは王都大通りを歩いて行くわ。

 リジー王子軍の兵士たちも、笑って民衆に手を振り、国王の帰還を盛り上げているわ。


 中央通りを抜けるとお堀になっていて、水面にそってパレードは歩くわ。

 水面に群衆が映って、お祭りのよう。


 町中から人が出てきて、アルヴィ王に歓声をあげ、帽子を振って帰還を喜んでいる。

 紙吹雪が舞い、どーんと音だけの花火も上がるわ。

 沢山の楽団が合流して国歌をエンドレスで演奏し、群衆は声を合わせて歌い、踊る。


 ああ、今日はきっと、帰還祭として、祝日になるわね。


 白馬にのったオーヴェ師が現れた。


「神聖なるアルヴィ王よ、教会は間違いを悟り、あなたさまに降伏いたします。罪は全て聖堂騎士団長の私にありますっ、拘束をっ」


 寄って来たオーヴェ師の騎馬を向かい討とうとする騎士を手で止め、アルヴィ王は鷹揚おうように笑った。


「おお、オーヴェ、戻ったか。そうよのう、女神直々に光の聖女の聖性を剥奪されては、教会としても、ヤロミーラに付いてはおれんな」

「はっ、汗顔の至りですっ、今すぐ私を処刑なされても恨みはいたしませぬ」

「よいよい、馬鹿聖女のせいで豪傑を亡くすのも業腹ごうはら、これが終わったら、一ヶ月ほど田舎教会で謹慎しておれっ」


 オーヴェ師は憤然ふんぜんと頭を上げた。


「王よっ! 我が王よっ!! それでは、それでは我が気持ちがっ、収まりませぬっ、どうか罰を、罰をお与えくださいっ!」

「わはは、真に余を王と呼ぶならば、言うとおりにせい。気持ちは自分で折り合いをつけよ、それが罰ぞっ」


 オーヴェは馬上でうなだれた。


「我が王の仰せのままに」

「とりあえず、今は戦力が欲しい、聖騎士団は我が軍の最後尾に付け」

「ははっ! 聖堂騎士団よっ! 我らは王軍に合流するっ、軍のしんがりにつけっ!!」

「「「「応っ!!!」」」


 聖騎士団の騎馬隊は速度を上げて後方へ去る。


「まったく、オーヴェの奴は堅くていかん、女子の色香で道を誤るなぞ、良く有る事よ、のう、フローチェ嬢」

「わたくしに言われましても」

「それもそうか」


 王様は、愉快そうにかかかと笑った。




 軍隊は群衆と共に、王城前広場に到達したわ。


 一週間前、馬車でリジー王子と逃げ出した王城に戻ってきたわ。

 いろいろな事があったわね。

 私も、リジー王子も、一回りも二回りも大きくなった気がするわ。



 アルヴィ王が騎馬で前に出た。


「さあ、出てこいっ!! 馬鹿息子よっ!! 親父様の帰還ぞっ!! 出てきて頭を下げよっ!!」


 王様の声は大きくて良く響くわね。

 門の所まで聞こえているはず。


 門の上に、ジョナス王子とヤロミーラ、そしてエアハルトが現れた。


「と、父さん、その、あなたはもう、王では無いーっ!」

「ほう、そうなのか、今すぐそのへたれ口を閉じ、城を明け渡すならば、命だけは助けぬでもないがなあ、どうだ、馬鹿息子!!」

「だだだ、だまされないぞー! ぼ、僕が、今は僕がアリアカの王だっ! かかか、帰れーっ! 帰れようっ!!」


 アルヴィ王は振り返って笑い顔を民衆に向けた。


「息子は、こう言っておる。お前たちはどうかの、王都の民よ? ジョナスは王としていただくにふさわしい男かー? 答えよー!!」


 民衆は沈黙した。


「あいつは頼りない……」

「女に騙される王様なんていやだわ……」

「あの人ってさ、エアハルト様だよりだしなあ……」


 門の上のジョナス王子は慌てた。


「お、お前たちっ! 私が王になったら、王として認めるなら、税金、税金を半分にしてやるぞ、どうだっ!!」


 民は沈黙した。


「こんな場面で金で釣るのか……」

「なんだかなあ……」

「そんなの王様じゃないよな……」


 アルヴィ王は馬上で笑い始めた。


「あっはっは、金、我が馬鹿息子は金で王位を買おうというのか、あっはっは。まったく、余の教育が行き届いておらなかったようだ。民にも迷惑をかけたな」


 王様は民衆に向けて頭を下げた。


「うわ、やめてくだせえっ、王様が悪かったわけじゃありませんし」

「こ、困ります、頭を上げてくださいっ」


 民衆は困惑して、口々に王に懇願した。


「民よっ!! ここに余は宣言するっ!! 余は税金を下げたりはしないっ!! 国を守る為には金が要るからだっ!!」


 王様の言葉に民が応じる。


「おうっ! それは正しいっ!!」

「お金がもうかっても、国が無くなってはしょうがないわ!!」


 王は腕をふりあげ、さらに言葉を続ける。


「余は、今ここでっ!! お前たちに約束をしようっ!! 誇りだっ!! お前たちにこの国の民で良かったと、この国に生まれて幸せだったと、そう誇れる統治を約束しようっ!! アリアカの民の誇りを、余の元で持てる事を、余は女神に誓って約束するっ!! お前たちが選ぶのは、余か!! ジョナスかっ!! 選ぶがよいっ!!!」


 民衆の声が爆発した。


「「「「「アルヴィ!! アルヴィ!! アルヴィ!! 我が王アルヴィ!! 」」」」」


 ジョナスがアルヴィ王コールの嵐の中で力を失ったようにがっくりと膝を付いた。


 王様の格の違いってやつね。

 アルヴィ王のカリスマは素晴らしいわ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「裸がユニフォーム」ときいてアパッチ野球軍を思い出す人はかなりのおっさんだと思うの。
[良い点] 壁|w・)陛下がカリスマある良き王であることはわかった。 ただまぁこの父王と比べられてたら、そりゃまぁ拗れるだろうなとも。 それに弟王子は可愛さで自分に勝るしさ・w・ その辺を突かれたんだ…
[一言] 王様カッケエエエエエエ!!!!!! リジー王子も将来こうなるのかな?( ˘ω˘ )
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