あたしにできる事ならなんでも
ああ、夢にまで見た声が聞こえる。
必死に涙を拭いながら見上げれば、離れてから一年以上もの時が経ってなお、愛しくてたまらない神官長様の麗しいお顔が。
「アカリ、会いたかった……!」
勝手に涙がボロボロでるからよく見えないけど、神官長様の目も涙で潤んでいるみたい。泣きじゃくるあたしを優しく抱きしめてくださる神官長様からは、変わらず慈愛のオーラが強く発されている。
もう二度と会えないと思っていた。言葉を交わせるなんて、ましてや抱きしめて貰えるなんて想像したことすらなかった。胸が熱い。沢山の思いがこみ上げて、神官長様にすがりついたままあたしはただ泣きじゃくった。
「アカリ……!」
神官長様のあたしを呼ぶ声に、はっと我に返る。
だって神官長様が涙ぐむだなんて、きっとよほどのことがあの世界に起こっているに違いない。一刻を争う事態かもしれないのに、あたしったら泣いている場合じゃない筈だよ。
そう思って耳をこらせば、アカリ、アカリ、と小さく私の名を呟く声はすごく切なげだ。状況がひどく悪いがゆえにお心が弱っていらっしゃるのかも知れない。微力でも、お力になりたい。
神官長様の腕の中で身じろぎし指先で涙を拭ったあたしは、おなかに精一杯の力を込めて、しっかりと顔をあげた。
「神官長様、あの世界に何があったのですか?」
「え?」
驚いた顔。でも神官長様、気を遣わなくていいのです。あたしだって導きの聖女、少しでもお役に立てるなら本望ですよ! 力づけたくて、あたしはにっこりと笑って見せた。
「貴方が界を越えてまでおいでになるなんて、よほどのことがあったのでしょう? あたしにできる事なら何だってやりますから!」
大好きな神官長様のためですもの! と、以前みたいに請け負ったら、神官長はとても嬉しそうに微笑んで、また私をぎゅっと抱き締めた。
「まだ大好きだと言ってくれるのですね」
「当たり前じゃないですか! それより」
「世界に厄事などありません」
「えっ!?」
「アカリが導き、女神様が見守る世界ですよ? 災害や病はあれど、人の力で乗り越えるべき苦難です」
あたしが召喚された時のような世界を壊すほどの厄事は起こり得ない、と力強く請け負う神官長様の言葉にあたしは心底ホッとした。
ホッとして、いきなり緊張してきた。
だって、声が体を伝って振動と共に聞こえてくるんだよ? 死ぬほど恥ずかしいに決まってる。なんか、一年会わないうちに神官長様、随分スキンシップがオープンな感じになってない?




