イソップの嘘
弱い人を助ける優しい人がいる
それを見て偉いなと思う僕
自分には助ける勇気がない
弱い奴は足手纏いだと言う人もいる
もしかしたら、それはそれで
弱い人を守ろうとする優しさかもしれないけど
僕にはそんな強さもない
助ける人、助けず守ろうとする人
どちらも優しいのに
どちらにも信ずる正義があるのに
表面的な価値観の相違で
喧嘩になってしまうのは悲しいね……
僕は見守ることしかできない
弱い人を助けず、見て見ぬ振りする人を
どうして助けないんだと罵る人がいる
『うるさいな』
こっちだって好きで傍観者でいるわけじゃないんだよ
あんたの価値観をいちいち否定はしないけど
自分の正義を人に押し付けるのはやめてくれないか
結局さっきは巻き込まれなかった僕も
そうやって、もっと価値観の違う人がいれば
結局、喧嘩になってしまう
だけど、ねぇ
皆んな優しい気持ちは持ってるんだよ
自分なりの正義をね
ある国では自爆テロのニュースが流れ
ある国では専制主義が良しとされている
この国だって、1世紀足らずの過去は
似たようなものだったんだ
だから今信じているこの正義が
100年後も正しいなんて分からない
歴史がそれを証明しているから……
僕たち人類の歴史がね
移ろいゆく
時代とともに変わるものが現実で
普遍的なものが、もし真実であるならば
真実の正義はあるのだろうか?
ねぇ、イソップくん
君が書いた童話の少年はあれからどうなったんだい?
今日も会議室で
上司に向かって「あんたは裸の王様だ!」と叫ぶ
果たして真実の正義なのだろうか
それとも風車を竜と間違えた
哀れなドンキホーテなのだろか
時代は変わっても
変わらない人の普遍的な要素はある
真実はきっとある
たとえ望ましくないものでも
もし嘘だと思うなら
イソップ物語を読んでみるといい
でも、ねぇ
優しい真実だって僕たちにはある
きっとあるんだよ
そうだろサンタクロース?
今、君が
その胸に宿している心は
真実ですか? それとも
現実ですか?




