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ノスタルジー
通学路
夏休みが終わり
稲穂が揺れる中を
一人帰る
空には鳶が
くるくると
凧のように舞って
毎日が
長く感じられた
今よりも
ずっとずっと
長く感じられた
やがて稲刈りが始まると
路上には
いくつもの
稲架掛けの影が伸び
残暑の西陽を
遮ってくれた
天日干しの
稲穂の香りが
とても香しくて
今でも記憶に
残っている
ずっとずっと
残っている
自由な鳶が羨ましかった
自由の意味もわからないで
そんな日々が
やけに懐かしい
西陽を避けて影に隠れていた
その美しさも
かけがえのなさも知らないで
その眩しさが
とても恋しい
早く変わってほしかった
変わりたいと
強く願った
願い続けた日々なのに
ふと還りたくなる
あの通学路は
ノスタルジー
もう一度もし逢えたなら
今度はけして目を背けないと
向き合おうと誓う、でも
叶うことのない
それはけして叶わない
二度と還らない
ノスタルジー
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