120/168
あのとき君は、
あどけない顔で
おどけて笑って
ふんわりとした香り
風に運ばれて
心くすぐられて
思い出のフィルム
シャッター音が
何度も聞こえてて
人は誰も
こんな風にただ
ただ一人を愛しいと想える
って、そんな
そんな出逢いが
誰にでもあるのだろうか
こんな奇跡が
あのとき君は、
風に靡く髪をかき上げ
僕を見つめていた
あの眼差しは、
夕陽の溶ける茜色の波音より
僕をほてらせた
あのとき君は、
偽りのない瞳で
ただ僕だけを映していた
君の心に
ただ僕だけを
そう信じたい
そう信じたいんだ
あのとき君は、
確かに僕を――
僕だけをと




