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昼下がり裏道を抜けて
一人知らない街の裏道を歩いている
冬の入り口昼下がり
少し空いた窓から聞こえる音と匂い
今日のお昼かな
暖かな団欒と
皆で囲んだテーブル
懐かしい記憶がよみがえる
ショートカットの道を抜けて
再び大通りに戻れば
スマホのナビが
目的地周辺だと教えてくれた
雑踏の中
行列に並ぶ人たち
手を繋ぎ歩くカップル
キャリーケースを持ったツーリスト
多くの人がいるけれど
さっきの顔の見えない裏道の
リアルな生活感は感じられなくて
まるでスクリーンに映る映像を
ただ眺めているようだ
くぅ〜
それでもお腹は減るんだね
自動ドアに手をかざすと
センサーが反応して開いてくれた
あぁ良かった
どうやら僕はここにいるらしい
「牛丼一杯、並で」
初めてなのに馴染みの店で
標準化された日常に
量産化された生活に
タッチパネルでオーダーすれば
今日はなんだか
追加でみそ汁を頼みたい気持ちになった
あの胸の暖かみを……
例えインスタントであっても




