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心覚
稲妻が光り
少し遅れて
雷鳴が轟いた
一瞬の光と
暗闇
つんざくような爆音
そして遠くから
徐々に近づく雨足が
やがて窓に
これでもかという程
雨粒を打ちつける
切り裂くような風
時おり塊のように襲い
建物を震わせ……
太古の時から
自然の脅威を前に
生けとし生きるものは
厳かな気持ちにと
なっていたろうか
稲妻が視覚を奪い
雷鳴が聴覚を支配し
その存在を
誇示してくる
まるで畏怖の念を
与えるかのように
されど眼を閉じて
聴こえる音からも意識を離して
いま、
厳かな気持ちで
あなたのことを想う
感覚を研ぎ澄ませ
心を感じる
心覚で
あなたを感じている
どんなに離れていても
光速よりも
音速よりも速く
いまこの瞬間……
心が心を感じている




