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第4章 赤蜥蜴と赤羽根と翼人の里 第2話、バードマンの集落を求めて その1

     第2話、バードマンの集落を求めて


     第2話その1


 冒険者ギルド受付嬢の話を聞いたドレイク達は結局そのフェニックスの卵の探索の依頼を受けることにした。推奨ランク以上だったのはドレイクだけだったが、探索系の依頼だったのと、ドレイク達の人数がしっかりとそろっていたことからギルド側も許可を出した。

 受付嬢の情報によると、フェニックスらしきものが目撃されたのはラングリアから南に3日ほど歩いたところに国境があるエルベンスト王国内のレンドリオン高地と言う場所らしい。その高地内に集落を持つバードマン達が目撃したとのことだった。

 なのでまずはそのレンドリオン高地を目指すことにしたドレイク達。しかし、エルベンスト王国自体はラングリアから徒歩3日ほどの距離だが、その中のレンドリオン高地を目指すとなると話は別だった。レンドリオン高地はラングリアからだと南に馬車で1週間ほどかかる。正直徒歩で向かったら何日かかるか分かったものではない。そこで乗り合いの馬車で向かおうという話になったのだが、1週間もかかるとなるとそれなりの値段になってくる。それならば今後のとこも考えて馬車を買ってしまった方が有用だという話になり、6人で金を出し合い馬車を購入したのだった。

 そんなに大きい訳では無いが、荷台には6人全員入ってもまだ荷物を置くスペースが十分あるくらいの広さがある。御者台には二人座れるし、6人パーティーには十分な馬車だった。

 馬車を購入したドレイク達はその馬車に乗り込み街道沿いを走らせていた。馬の体力も考えてゆっくり目のペースで走らせているが、それでも1日半後にはエルベンスト王国に入ることが出来た。本来なら旅人は通行手形が無いと国境を越えられないのだが、ドレイク達は冒険者なので冒険者認識表を提示することで手形の代わりとなった。そしてそのまま国境の町で一泊し、翌日には出発する。そのままさらに街道沿いを進んでいった。

 御者台にはドレイク、ローゼリット、アレイスローの3人が交代で座り馬車を走らせ、それぞれフリルフレア、スミーシャ、フェルフェルがサポートとして一緒に座り地図などを見ながら道を確認していた。

 そうしてラングリアを出発してから3日ほど経った頃だった。

ヒュンヒュン。

 馬車を走らせていたドレイクの耳に何か風切り音の様な物が聞こえた。眼だけで音のした方に視線を送ると、何かが飛んで来る事が分かる。

「チッ」

 ドレイクは舌打ちすると、馬車を走らせた。スピードを上げ駆け抜けようとする。隣に座って地図を見ていたフリルフレアは突然速度を上げたドレイクに驚きの表情を向ける。

「ちょ、ちょっとドレイク、いきなりどうしたの?」

「何か襲撃されてるぞ!」

 フリルフレアだけでなく、荷台にいるメンバーにも聞こえる様に叫ぶドレイク。フリルフレアが御者台から後ろを見ると、馬車に向かって何かが飛んできているのが分かる。よく見ればそれは矢だった。

「え、矢?何で⁉」

「俺が知るか!」

 矢が射かけられている事実に驚いたフリルフレアはドレイクに問いかけるが、ドレイクから帰ってきたのはそっけない返事だった。

「ちょっと赤蜥蜴!何か後ろから追いかけてくる馬車に弓を撃たれてるんだけど!」

 スミーシャの叫びに後ろを振り向くドレイク。確かに、いつの間に現れたのか大型の馬車が2台、こちらの後ろ20m程の位置ににピッタリとついている。そしてそれに乗っている男達がドレイク達の乗る馬車に矢を射かけているのだった。

「何なんだあいつら⁉」

「分かりませんが……恐らく山賊かと…」

 ハイスピードで走るため揺れる馬車の中、片膝をついて立ち上がりながら言葉を交わすローゼリットとアレイスロー。スミーシャとフェルフェルは矢が飛んでこないよう馬車の全貌に身を寄せていた。

「ちょっと赤蜥蜴!振り切れるの⁉」

「向こうの…馬車…早い…」

「恐らく無理だな!どっかで迎え撃つしかない!」

 スミーシャとフェルフェルにそう答えるとドレイクはさらに馬車を走らせる。だが、馬車のスピードを上げても後ろの馬車との距離はどんどん詰められていく。相手の馬車の馬はどうやらしっかりと調教された軍馬なのだろう。もし相手が山賊だというのならどこかの軍から奪ったものかもしれない。

「おい赤蜥蜴!少しスピードを緩めろ!揺れがひどくてシューティングニードルが投げられない!」

 迫る馬車にシューティングニードルを投げようとしていたローゼリットがドレイクに向かって叫ぶ。確かに揺れがひどく何かを投げつけるのは難しそうだった。

「無茶言うな!ハリネズミにされるぞ!」

 ドレイクが言い終わるのとほぼ同時に馬車の天井に数本の矢が刺さる音がした。後ろを確認すると、追いかけてくる馬車は後方10m程まで距離を詰めている。そして矢で直接狙って来ている事が分かった。

「さすがにまずいですね。ここは防風壁を張りましょう。……『ミサイルプロテクション!』」

 アレイスローが無詠唱のまま魔法を発動させる。次の瞬間、馬車の荷台が風の障壁に守られ、迫りくる矢をことごとく打ち払った。

「ドレイクさん!これで馬車の心配はいりません、逃げ切れますか⁉」

「無理だ!こっちは馬が疲れちまってる!」

 ドレイクはアレイスローにそう答えながらさらに馬を走らせたが、そろそろ馬の限界が近い。これ以上無理をさせる訳にはいかなかった。

「ドレイク!地図によればこの先に広い場所があるよ⁉」

「しかたない、そこで迎え撃つ!」

 ドレイクはそう答えながら「クソッ、面倒くせえな」と呟きながら馬車を走らせる。

 アレイスローの魔法による防風壁があるとはいえ、迫りくる矢は雨の様に降り注いでくる。そんな矢の雨を掻い潜りながらドレイクは広場を目指していった。


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