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第4章 赤蜥蜴と赤羽根と翼人の里 第1話、ドレイクとフリルフレアの鎧探し その6

     第1話その6


 昼食を取り終えたドレイク達6人はそろって冒険者ギルドに訪れていた。当然仕事を探すためである。そして依頼書を張り出した掲示板の前に集まり、各々めぼしい仕事を探していた。ちなみに、このドレイク達のパーティーは冒険者ランクがバラバラである。それぞれの冒険者ランクはドレイクが13、フリルフレアが2、ローゼリットとスミーシャが7、フェルフェルが5、アレイスローが10である。これだけランクがバラバラだと誰に合わせたらいいか分からないため、その都度受ける依頼の推奨ランクがバラバラだった。それぞれが自分のランクに合った仕事や、受けたい仕事を探してきて、最後に全員でどの仕事を受けるかを話し合いで決めていた。

「何かめぼしい依頼がねえな」

「そうですねえ」

 ドレイクとアレイスローが高ランク冒険者向けの依頼書を見ながらそう言った。

 掲示板に貼られている依頼書は『推奨ランク15オーバー、求む真の勇者!魔王フォルテスタント討伐』『推奨ランク10オーバー、魔法職限定、稀代の奇病、竜腐病治療法の調査』『推奨ランク11、伝説のフェニックスの卵の探索』『推奨ランク13、深淵の魔穴の調査』『推奨ランク10、巨人種の残した魔法遺跡の調査』『推奨ランク13獄魔獣ザンゼネロン討伐』『推奨ランク10死霊城と噂される古城の調査』『推奨ランク15、暴竜アウドラギウス討伐』等、ここ一ヶ月くらい更新されていない。

 一方ローゼリットとスミーシャ、フェルフェルの3人は中堅冒険者向けの掲示板を見ていた。しかし、中堅冒険者向けの依頼は出払ってしまっているのか3枚しか残されていなかった。内容は『推奨ランク7、レンドリオン高地における正体不明の魔物討伐』『推奨ランク5、魔法職限定、古文書の解読』『推奨ランク7、ヴァンパイア討伐』の3つである。

 それを見て顔を見合わせる3人。

「古文書の解読は論外だな」

「こんな依頼受けられるのアレイスローだけだよね」

 そう言って高ランク冒険者向けの掲示板を見ているアレイスローに視線を向けるローゼリットとスミーシャ。

「正体…不明の…魔物…討伐?」

「それはやめておいた方が良いぞフェルフェル。正体不明って時点でリスクが高すぎる」

「なる…ほど…」

 ローゼリットの言葉に納得するフェルフェル。確かに正体不明の魔物など、どんな魔物なのか分かったものではない。下手をすれば遥かに高レベルの魔物の可能性もある。中堅冒険者向けの仕事の報酬では割に合わない可能性が高かった。

「ヴァン…パイア…は…?」

「あたしアンデッドきらーい」

 スミーシャがそう言うとそっぽを向いてしまう。

「アンデッド退治は聖職者がいないからあまり気が進まんな」

 ローゼリットもスミーシャと同意見だった。

 フェルフェルは次の依頼書に視線を移すが………これで終わりだった。中堅冒険者向けの依頼は他の冒険者に先を越されたと言う事だろう。

「良い…仕事…ない…」

 そう言うとフェルフェルはフリルフレアの方に視線を向けた。

 隣の低ランク冒険者向けの掲示板を見ていたフリルフレア。流石に依頼も多く、薬草の採取からゴブリン退治、商隊の護衛など様々な依頼書が張られている。しかし、それらの依頼書を見ながらフリルフレアは難しい顔で唸っていた。

「う~~ん………あんまりいい仕事が無い…」

 正直、フリルフレア的には自分のランクに合わせた依頼ではドレイク達に合わないのではないかと考えていた。単純に考えてパーティー内で最もランクが低いのはランク2の自分であり、最もランクが高いのはランク13のドレイクである。他のメンバーにしても中堅以上であり、自分に合わせて低ランク向けの仕事をしてもらうのも申し訳ない気がする。だからフリルフレアは低ランク向けの依頼に見切りをつけ、隣の中堅向けの掲示板に近寄っていった。

 しかし掲示板の前ではローゼリット、スミーシャ、フェルフェルの3人がため息をつきながら首を横に振っていた。掲示板に視線を向けると依頼書が3つしか張られていない。

 フリルフレアはそれを見なかったことにして高ランク向けの掲示板の前に来た。掲示板を見ると、依然と変わりない依頼がズラリと並んでいる。

「考えてみたら、ドレイクとアレイスローさんがいるんだから、ある程度高ランク向けの依頼から探しても大丈夫なんじゃない?」

 そう言うと依頼書に目を通すフリルフレア。一通り目を通した中で、一つの依頼書に目が止まる。

「やっぱりこれだよね~」

 そう言ってフリルフレアは『推奨ランク11、伝説のフェニックスの卵の探索』と書かれた依頼書を手に取った。

「ん?どうしたフリルフレア?」

 なぜか高ランク向けの掲示板の前にいるフリルフレアを見てドレイクが近寄ってくる。

「ドレイク!これ、どうかな!」

 そう言ってフリルフレアはフェニックスの卵の探索の依頼書を見せる。

「おや?フリルフレアさん、何か受けたい依頼でも?」

 そう言ってアレイスローがのぞき込んでくる。さらにローゼリット、スミーシャ、フェルフェルの3人も近寄ってきてフリルフレアの持つ依頼書を覗き込んだ。

「何?フリルちゃん、フェニックスの卵探索したいの?」

「騙されんなよ踊り猫。こいつはただ単にフェニックスの卵で作ったオムレツが食べたいだけだからな」

 忠告だとばかりにフリルフレアを指差しながらスミーシャにそう言うドレイク。しかしそれを聞いたローゼリットは鼻で笑っていた。

「おいおい赤蜥蜴、いくらフリルフレアが卵好きだからってそれは無いだろう?」

「そうよ赤蜥蜴!フリルちゃんを侮辱する気⁉」

 鼻息も荒くドレイクに詰め寄るスミーシャ。そんなスミーシャやローゼリットの言葉を聞いてフリルフレアがウンウンと頷いている。

「全くですよね。それにドレイク?前にも言ったけど、私が食べてみたいのはフェニックスの卵のオムレツじゃなくてフェニックスの卵を使ったプリンだから」

「「食べる気ではあるの⁉」」

 驚きのあまりローゼリットとスミーシャの声がハモる。

「あの~……フェニックスの卵の探索なのに、探し当てた卵を食べてしまってはどうしようもない気がするんですが……」

 思わずツッコミを入れるアレイスローだったが、フリルフレアは大丈夫と言わんばかりにドヤ顔をしている。

「大丈夫です!何個か見つかったらそのうちの1つだけをプリンにして食べるだけですから♬」

 フリルフレアの言葉を聞いて、額から嫌な汗が流れ落ちるアレイスロー。正直何が大丈夫なのか、何でそんなドヤ顔をしているのか全く分からない。その隣ではドレイクがフリルフレアをジト目で睨んでいる。

「そもそも、この依頼どれくらい時間がかかるか分かったもんじゃないぞ?」

「確かにそうですね。フェニックスがどこにいるのか?その調査から始めませんと」

 ドレイクとアレイスローの言葉に「うっ……」と言葉に詰まるフリルフレア。確かにこの広い世界のどこにいるかも分からないフェニックスを探すのは至難の業だ。

「そっかぁ……」

 残念そうに呟くフリルフレア。仕方なく依頼書を掲示板に戻そうとした時だった。

「皆さんもしかしてそのフェニックスの卵の依頼受けようと考えていますか?」

 突然声をかけられた。全員で声の主に視線を送ると、それはいつものギルドの受付嬢だった。眼鏡をキラーンと光らせてドレイク達を見ている。

「あ、ああ……考え中だ」

 一応言葉を濁しておくドレイク。しかし受付嬢はメガネの端をクイッと上げると、そのままドレイク達の方に近寄ってきた。

「実はですね……皆さんに耳寄りな情報があるんですよ」

「耳寄りな情報?」

 疑わし気に言うローゼリットだったが、受付嬢は自信たっぷりに頷いている。

「はい、実はですね……フェニックスらしき目撃情報がありまして……」

 そう言って情報を話し始めた受付嬢。その後ろではフェルフェルが明後日の方向を向いている。

「フェニックス…卵…フェルが…孵化させる…雛鳥…成長したら…フェニックスに…乗って…飛ぶ……うん…これ…いい…」

 バードマンなのだから普通に飛べるくせに、フェニックスに乗りたいとか妙な妄想にふけるフェルフェル。フリルフレアとは別の意味で、しょうも無い事を考えていた様子だった。


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