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第3章 赤蜥蜴と赤羽根と魔王の器 第8話、後始末 その2

     第8話その2


 ドレイク達はマゼラン村に帰還した。

 何故全裸だったのかは謎だがとりあえず無事だったドレイク。フリルフレア、ローゼリット、スミーシャの3人と共にゴレッドとフェルフェルと合流した。ドレイクの無事を喜びつつも、全裸のドレイクに驚くゴレッドとフェルフェル。仕方なくゴレッドが予備のマントをドレイクに貸し与えることとなった(フリルフレアはマントの類を持っておらず、他のメンバーは全裸のドレイクにマントを貸すのを渋った)。そしてマゼラン村へと向かいながら、お互いの状況を確認し合ったのだ。

 そして、アレイスローが待つマゼラン村へと辿り着いたドレイク達。マゼラン村では先に辿り着いていたアレイスローが出迎えた。村の中はいたって平和、静かなものである。

「ありゃ?アレイスロー、お前さん村の人達に巨大大喰い蟲の話をしとらんのか?」

 ゴレッドの疑問にアレイスローは否定の意味を込めて首を横に振った。

「いえ、話しましたよ。ですがその時ちょっとしたアクシデントがおきましてね…」

「アクシデント?」

 フリルフレアの言葉に頷くアレイスロー。

「とにかく詳しいことは村長さんのお宅で話します。また、部屋を貸していただけるそうなので……」

 そう言って歩き出すアレイスロー。全員がその後に続く中、アレイスローはフェルフェルを手招きする。

「あの……フェル、ちょっと気になっている事があるんですが……」

「…なに?…」

「ドレイクさん……なんか服装変わってませんか?」

「…服装…って言うか…赤蜥蜴…あの…マントの下…全裸…」

「全裸⁉」

 思わず驚きのあまり吹き出すアレイスロー。ドレイクをマジマジと見つめるが、ドレイクが視線に気が付き、アレイスローに視線を向けてきたことで慌てて視線を逸らす。

「ど、どういうことですか…全裸って?」

「…フェルに…訊かれても…分かんない…きっと…赤蜥蜴の…趣味…」

「何と………ドレイクさんにそんな趣味が…」

「誰が趣味だコラ」

 小声で話していたはずのアレイスローの言葉をしっかり聞いていたドレイクは少し不機嫌そうにアレイスローとフェルフェルを睨み付けた。

「いつまでもそんな恰好しとるから趣味だとか言われるんじゃよ」

「好きでこんな格好してるんじゃねえ……」

 ゴレッドの言葉にジト目で睨み返しながらぼやくドレイク。だが、確かにいつまでもマントの下が全裸と言うのは落ち着かない。

「おい弐号、出来れば先に服屋に寄りたいんだが…」

「ああ、そうですよね。皆さん、先に服屋に寄ってから村長さんのお宅に向かうと言う事で良いですか?」

 アレイスローの言葉に全員が頷く。流石にいつまでもドレイクを裸のままでいさせるのは忍びなかったし、時々風でマントが煽られるせいで正直目のやり場に困る者も多かった。

 そのまま村で唯一の服屋に向かったドレイク達。服屋に入ると「いらっしゃい」と店主が声をかけて来た。ドレイクはそれに手を上げて応えると店内を物色し始める。

「赤蜥蜴や、どんな服を探しとるんじゃ?」

「別に、俺の身体が入るサイズならどんなヤツでも良い」

 ゴレッドの質問につまらなそうに答えると適当に服を選ぶドレイク。そしてフリルフレアに視線を向けた。

「おいフリルフレア、財布出してくれ」

「へ?」

 いろんな服が陳列されているので思わずかわいい服がないか見入っていたフリルフレアだが、突然ドレイクに声をかけられキョトンとしている。そして、何を言っているんだと言いたげにドレイクを指差した。

「何言ってるのドレイク。ドレイクのお財布も私のお財布もドレイクが持ってるでしょ?」

「はあ?」

「だって私宝珠の箱を背負うからって、荷物全部ドレイクに預けてたじゃない」

「………………」

 フリルフレアの言葉に、思わず言葉を失うドレイク。ドレイクが今身に着けているのはゴレッドのマントと大剣だけである。当然荷物など持っていない。と言うより、全裸で倒れていた時点で荷物など持っていなかった。

 その事実に気が付いた時、ドレイクの額をイヤな汗が流れ落ちた。同時にフリルフレアもその事実に気が付いたのか手に持っていた服をポロリと落とす。

「え………ち、ちょっと待って……まさか私達の荷物って………」

「ああ、恐らくお前の言う深紅の竜って奴のブレスで……」

「消し飛んじゃったのー⁉」

 叫びながら頭を抱えるフリルフレア。恐らくドレイクとフリルフレアの荷物はドレイクが巨大大喰い蟲の口の中に飛び込んだ時に無くしてしまったのだろう。そして深紅の竜のブレスで巨大大喰い蟲もろとも消滅してしまったのだ。

「ウソだろ……」

「今までせっかくためたお金が……それに、着替えとか下着も入ってたのに……」

 ショックのあまり膝をつくドレイクと泣き崩れるフリルフレア。そんな二人を見て事情を察したのか、アレイスローが助け船を出した。

「荷物を持ってないと思ったら、無くしてたんですね。仕方がないから今回は立て替えておきますよ」

「良いのか⁉悪いな弐号!」

 全然悪いと思っていなさそうな口調で言いながらアレイスローの背中をバンバン叩くドレイク。そんなドレイクを見ながらフリルフレアはある意味、絶望していた。

(今回の仕事、報酬手に入らなそうなのに………どうしよう……)

 しばらく金に苦労しそうだと思った。


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