第十一話 7月3日 VSリザー刀
七月三日。
今日も、郊外にて、講習をうけにきていた。
そろそろ、テッシちゃんを、
パーティに誘わないと、だめな気がする……
講習が、終わってから、パーティに誘うとなると、
もう、テッシちゃんは、パーティを組んでいて、
断られたり、するかもしれない。
講習中は、LVが、どこまで上がるか、分からないので、
講習が終わって、それから、どこかのパーティに、入るのか決める。
そう、考える可能性が、高いとおもう。
しかし、この時期になると、
LVが、どの辺まで、上がるだろうとか、
ある程度は、予測できるのかも、しれないし、
先約がつく可能性がある。
なので、きょうあたりに、誘いたいとおもった。
俺の、三メートル左で、
テッシちゃんが、すわりながら、両手の指を組んでいる。
やがて、ふりかぶり。
空に、手のひらをむけて、力いっぱい、背のびをする。
テッシちゃんを、どうにか、仲間にくわえたい。
俺がいうのも、なんだが、この子は、どこか頼りないというか。
悪い人に、だまされやすそうに、みえる。
それに、妹と合流したときに、
一香ちゃんも、いた方が、妹も、さびしくないだろうしな。
「きょうは、きのうの続きです。
なで切りの、べつの、使いかたの、説明なんですけれど。
そのまえに、説明しておきたい、話があります」ララさんがいう。
「……なんですか?」
「回復には大きくわけて、
『二種類の回復魔法』があるんです。
『パワーヒール』と『ダウンヒール』です」
「どういう、ちがいが、あるデスか?」テッシちゃんが、よく分からない、といった表情できく。ララさんは、つづける。
「じつは、回復魔法の回復量は、ダメージと同様に、
『相手のBPの影響をうける』んです。
つまり、『回復相手の、BPが高ければ、回復力はさがり』、
『回復相手のBPが低ければ、回復力はあがり』ます。
さて、ここで問題です。
『仲間のHPを、たくさん、回復させたいとき』に、どうしたら、たくさん、回復すると思いますか?」
「自分のBPを上げて、仲間に、回復魔法を使うデスか?」
「そうですね、それが、ひとつの方法です」ララさんがうなずく。
「そして、もうひとつが、仲間のBPを下げてから、回復魔法を使用する方法ですね」俺はこたえた。
しかし、仲間のBPを下げて、いいのだろうか……?
「……そうですね、その二つです」ララさんがいう。
「どっちのが、強いんデスか?」
「どっちの方が、強いということは、ないんですが。
基本的に『パワーヒールのが便利』です。
理由としては、ひとつ目のパターン。
仲間と敵が戦っていて、その仲間の、HPが低いとき、
この場合に、『ダウンヒール』を仲間につかうと、
回復しても、BPが下がったせいで、攻撃が弾かれたりして、状況が悪化したり、
せっかく、回復した分の、仲間のHPが、その仲間の、BPが下がったせいで、
よけいに、ダメージをうけて、
回復した意味が、なくなってしまう。
『パワーヒール』の場合には、この欠点はありません。
ふたつ目のパターン。
仲間のHPが、低いのだけれども、自分が、敵に狙われている。
このときに、パワーヒールなら、
自身のBPを上げて、ダメージを軽減しつつ、仲間のHPを回復できます」リリさんがいう。
「そして、みっつ目のパターンは
仲間のHPを回復しつつ、自分のBPを強化して、
攻撃をしかけることが、パワーヒールは可能なことですか?」俺は横目で、テッシちゃんを見ながら、ララさんに言った。
「みっつ目は、回復するときのメリットとは、すこし違いますね」
「あ、そうですか」
「でも、そういう、メリットはありますね」ララさんはほほ笑んだ。
「どちらの、回復タイプのクラスにしろ。
万能な回復クラスは、ないとおもいます。
とどのつまり、なにかは、置いていってしまう、そういうものです」リリさんは言った。
「でも、いまの話は、なで切りの、ヒントになってますね」ララさんが言った。
「なで切りの『BP+二〇〇 相手のBPマイナス二〇〇』と『BP+四〇〇』の、技の違いって、分かりますか?」リリさんは言った。
「たとえば、『自分がBP一〇〇〇』で『相手がBP一〇〇〇』のとき。
『BP+四〇〇』の技を、しようすると、
『自分がBP一四〇〇』対『相手がBP一〇〇〇』で、一・四倍。
『BP+二〇〇 相手のBPマイナス二〇〇』の技を、しようすると、
『自分がBP一二〇〇』対『相手がBP八〇〇』で、一・五倍。
つまり、割合の違いで、『なで切り』の方が、
相手の攻撃を、弾きやすくなるって、ことですか?」
「そうですね。そういう考え方もあります」「でも。もっと、ちがう意味があるんです」
「ちがう意味デスか……?」
「『BP+二〇〇 相手のBPマイナス二〇〇』の前半の部分。
『BP+二〇〇』は『基本効果』と言います」ララさんはいう。
「そして、『相手のBPマイナス二〇〇』は『追加効果』と言います」「この追加効果は、連携中に、ずっと有効なんです。そこで、このモンスターです!」リリさんが顔をむけると、モンスターが歩いていた。
「リザー刀 LV七
HP一二〇〇 BP八〇〇 SP三〇〇 MP二〇〇
爬虫類。
二足歩行の変温モンスターで、寒さによわい。
刀のコレクションが好きで、通行人を試し斬りしたりする。
危険なモンスターだ。
攻撃されると、もっている刀で、邀撃してくる。
『居合い抜き』は、強力なので、注意。だってナノ」
「こいつを、たおせば、いいんデスね?」
テッシちゃんは歩いて、リザー刀に向かって行った。グエグエッっと、おどろく、リザー刀。
「テッシ LV五
HP一〇〇〇 BP四七〇 SP四七五 MP五五〇
『ふり下ろし』はBP+五〇〇なの」
「ふり下ろしっ」
テッシが、金属棒をふり下ろすと、
刀をぬいた、リザー刀がうける。
雷光が、まわりに飛びちる――。
「この、バチバチ状態を『つばぜり合い状態』といいます」
「……つばぜり合い状態ですか?」
「はい。
この状態が終了すると、通常では『お互いに、ダメージをうけます』」ララさんは光をあび、うす目にして言った。
「リザー刀に一八五ダメージ!
テッシちゃんに、一〇〇ダメージなの!」
「つばぜり合い状態だと、ダメージが決定されるまで、おたがい『移動も攻撃も、できません』が、無防備という、訳でもありません」「部外者が相手を攻撃しても、『ダメージを与えられない』んです」ララさんとリリさんは言った。
「じゃあ、なにも、できないんですか?」
「それが、できるんです――」「ここで、『なで切り』ですね」
はじけ飛んで、後ずさりし、距離をおいたテッシが。
もういちど、リザー刀へ、むかっていく。
「ふり下ろしデスっ」
テッシちゃんの攻撃へ、刀をあわせる、リザー刀。
俺をみて、うなずく、ララさんとリリさん。
雷光が飛びちる。
そこへ、かけよる俺。
「……なで切りを使えば、いいんですね……?
なで切り!」
つばぜり合い状態で、止まっている敵に、なで切りをあてる――。
雷光がはじけ飛び、よろめくリザー刀。
「リザー刀に、二四九ダメージなの!」
「これが、もうひとつの、使い方。
つばぜり合いのとき、技の追加効果で、加勢できるの。
なで切りの追加効果で、リザー刀のBPが、二〇〇減ったわ」ララさんが言った。
「追加効果で、テッシさんと、リザー刀のBP差が、一・三倍以上です。
そうなると、はじきが発生し、
リザー刀だけが、ダメージをうけ、
さらに、BPの差がふえたので、
あたえるダメージも、増えてるわけね」リリさんが言った。
ララさんとリリさんは、これを説明するために、ちょうどいい、BPのモンスターを、えらんだのだろうか。
なるほど。
自分のBPが上がる技。
追加効果のある技。
両方を、もっていると、便利なのか。




