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ライニール視点(タイトル未定)

すみません。

タイトル思いつかなかった。

更新が滞るのが嫌だったので、未定で投稿しました。

思いつき次第、修正します。申し訳ないです!!

 マーシャリィ・グレイシス。グラン王国王妃様付きの筆頭侍女である彼女の印象は、アンバランス。その一言である。


 29歳の私より4歳年下の彼女は、一見少女のような風体であるが、言動と行動がまずそれを裏切る。魔窟と揶揄される王宮で、長年渡り歩いてきただけの図太さと頭の回転は、私から見ても感嘆が出る程ではあるが、それは彼女のごく一部でしかない。


 第4部隊副隊長を務めていた時に耳にしていた噂は、悪女そのものだった。

 当時王太子妃だったマイラ様を陰から良いように操っている魔女だとか、第二王子妃であったプリシラ様に嫉妬して嫌がらせ等を行っている、また婚約者が嫌がっているにも拘らず婚約解消に同意をしない、自分の気に入らないメイドを首にするなど、悪い噂はよく聞いていた。

 だが実際はどうだ。

 今や押しも押されもせぬ王妃に育て上げたのは彼女の功績。プリシラ様に対しての嫌がらせも、ただ常識的な行動をしているだけ。彼女が相手にしていないから軽んじていると勝手に思われているだけだ。

 婚約解消に関しては一番驚いた。同意しないのは彼女ではなく、当時自分の部下だった男の方だったのだ。正直呆れた。同僚から「お前も災難だな。最悪の婚約者を持ってよ」とからかわれていた時も、困ったように笑うだけで一切の否定をしなかったからだ。時折、副隊長だった自分に対し、意味の分からない言動をしていた事はあったが、それ以外は特に問題もなかった人物であっただけに余計に驚いた。事実を知った私が、この男を嫌悪の対象にしたのは当然の話だろう。大切にすべき自分の婚約者を守る事もせず貶めてまで、自分の株を上げているような男なのだから。

 メイドの話も、よくよく調べてみると首にされて当然の話だった。

 首にされたメイドというのが、仕事の放棄だけならまだしも、彼女の部屋に無断で入りこみ荒らし、私物を盗み売却をするなどの犯罪行為を犯していたのだ。その理由がプリシラ様に対して行った嫌がらせの報復だというから吃驚である。おかげで彼女の私室の鍵の管理が厳重になったというのも納得のいく話だ。


 王宮で王妃付き侍女として采配を振るう彼女の表情は、張り付けた仮面の様である。感情に振り回されない鉄壁の仮面。笑顔を浮かべる時でさえ淑女の見本のようだ。


 それが一転、気心の知れた人達の前で見せる、くるくると変わる表情は同一人物だと思えない程の変わりようで、初めてそれを目にした時は、眼鏡の度が合わなくなったのかと勘違いしそうになった程の衝撃だった。一緒に仕事をするにつれ、自分にもその感情豊かな瞳を向けられた時には、変な話だが達成感のようなものを感じた。団長が彼女を揶揄ってしまう気持ちが理解できる。

 

 そして、今日。また新しい彼女の顔を見た。


 さり気ない口説き文句は気付かない。女性として扱うと狼狽える。褒めれば不快感を抱く。そしてその事に罪悪感を抱く。

 少女から女性として羽化する為の大切な期間に、身近にいた男性陣が彼女を女性扱いするべきだったのを怠った結果が今の彼女である。かくいう自分も、王妃殿下にエスコートを頼まれるまでは、一切の女性扱いをした事がない。彼女は年齢的には大人なのに、女性としては未成熟なのだ。

 猜疑心が強く面倒な人かと思えば、攻略法は案外簡単な事もすぐに分かった。良心を擽りながら甘えればいい。遠回しな口説き文句など必要はない。懐に入ってしまえば簡単に絆されてくれるだろう、典型的なお人好しな女性タイプ。ハニートラップの格好の餌食である。

 それを全く自覚していない彼女に、あんなにデートだと繰り返し言っていたにも拘らず、説教をしてしまったのは私の完全なミスだ。だが、せざるを得なかったのは理解して欲しい。純粋な好意で、初めてのデートだという彼女に記念のプレゼントをしたのも、何か変な勘違いをされている気がしてならない。


 連れて行って貰った宝飾店で紹介された、とても興味深い人物と彼女の話をした事を思いだす。


『嬢ちゃんはな、頼られると断ることが出来ねぇお人好しなんだ。なまじそれに応えられる能力を持っているから性質(たち)が悪ぃ。本当は普通の女の子なんだよ。守る者がいるからな。強くならなきゃいけねぇって思い込んで、いつの間にか自分は強いんだって勘違いしちまってるが、そんな訳ねぇ。嬢ちゃんは強がっているだけだ』


 そして、初対面である私に向かって、頭を下げながら彼は嘆願した。


『なぁ、頼むぜぇ、兄さん。嬢ちゃんを助けてやってくれ』


 ええ、助けましょう。

 彼女が私の助けを必要としてくれるなら、全力でお助けすることを誓いましょう。

 

 ですが、申し訳ない。

 私も、彼女に強くあれと強要する一人なのです。


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