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お料理好きな福留くん  作者: 八木愛里
第一章

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9.クラブハウスサンドとコールスローサラダ、の巻③*


「ベーコンを焼きますね」


 福留くんは熱したフライパンにベーコンを並べる。ベーコンを焼くときはベーコンに脂が含まれているので、サラダ油を引かないらしい。


「レタスを千切っておいてください」

「了解。それなら私でもできるね」


 洗ったレタスの葉を一枚取って、一口サイズに千切っていく。


「違います」


 福留くんの料理センサーが働いた。え? 何が違うの?

 わからない。けれど、私は何か間違ってしまったらしい。……でも、レタスを千切るのに間違いなんてあるの?


「一枚一枚千切っていたら、時間がどれだけあっても足りません。まずは繊維に沿って縦に割いて、重ねます。それから千切っていくと、まとめて一口サイズにできるでしょう?」


「本当だ……」


 言われてみたらそうだ。まとめて千切った方が明らかに効率が良い。


「具材は出来上がったので、パンをトースターで焼いていきましょうか。一人分で三枚なので、二人で六枚です」


 トースターに二枚ずつ入れて焼いていく。トーストされたパンの表面にバターを塗ると、バターがパンの温かさでゆっくりと溶けていく。


「パンの上にレタスとトマトを置いて、パンをその上にのせます。その上に目玉焼きとベーコンを置いてパンで蓋をします」


「この時点で美味しそう……」


 目玉焼きとベーコンは相性抜群に決まっているではないか。思い浮かべただけで、唾液が口の中に集まってくる。


「食べやすい大きさに切っていきます。ここでパンの角と角に合わせて記号のバツ印のように切っていくのですが、ここでサランラップを使います」


「どうしてですか?」


 疑問をすぐに解決できることがライブ授業の良いところだ。


「竹串を刺して固定するという方法もありますが、サランラップでもパンを切るときに具材が飛び出さないように固定ができるのですよ」


「そっかあ。何もしないまま切ると、中身が出てきてぐちゃぐちゃになっちゃうよね」


「サランラップを三十センチくらいの長さで切ってまな板の上に置いて、その上に具材を入れたパンを置きます。サランラップの左側を折り畳んで、右側を折りたたむときはキツく合わせると具材が安定するのですよ。あとは上下も折りたたんでください」


 福留くんの説明通りにパンをサランラップで巻いた。


「斜めに切っていきますね」


 福留くんがバツ印のように包丁を入れると、サランラップで固定されているため、横から具材が飛び出さずに切れた。

 サランラップを外して、皿に盛り付けるとクラブハウスサンドの完成。


「お疲れ様でした。コーヒーと紅茶、どちらを飲みますか?」

「紅茶で」

「僕も紅茶にしようかな。テーブルで待っていてください」


 テーブルに並んだのはクラブハウスサンドとコールスローサラダ。土曜日の朝にちゃんとした料理を食べることは久しぶりだ。惰眠をむさぼっていると、いつも朝と昼のご飯が一緒になってしまう。


「「いただきます」」


 手を合わせるとクラブハウスサンドに手を伸ばす。三角形の角があって食べやすい。卵の固まる寸前の半熟具合は、何度か練習をしないと出せないものだろう。


「どうして、パンに挟むと美味しさが倍増するんだろうね」


「それは……。僕も疑問です。一口で全ての材料が味わえるからなのですかね」


 材料のそれぞれのバランスが良くて、口の中に入った時の満足感が大きい。


 「コールスローサラダも食べてみてください」


 クラブハウスサンドに夢中になってしまった。箸に持ち替えて、コールスローサラダを口に運ぶ。

 ニンジンの固さとキャベツの柔らかさがちょうど良い。シンプルな具材はコーンの甘さを際立たせている。サッパリしていて、飽きずに食べられる。


「美味しい。自分で作るものって、どうしてこんなに美味しく感じるんだろうね」


「頑張ったからではないでしょうか。気持ちを込めると料理にも心が入ると言われますから」


「そ、そうかな……」


 素直にお礼を言いたい。けれど、言葉が詰まって言えない。

「心が入っている」と言われて嬉しいのに、すっかり言うタイミングを逃してしまった。


「そういえば。福留くんに渡したいものがあったんだ」


 小さな袋を取り出して、福留くんに渡した。


「え、僕にですか? ありがとうございます……開けてもいいですか?」

「もちろん」


 興味津々な袋を眺めている。中に入っている箱の形で分かってしまいそうだけれど。

 袋から木の箱を取り出して中身を開けると、水色から薄紫色のグラデーションの箸が収まっていた。


「わぁ! 合羽橋のお箸の店で見ていた箸じゃないですか! 嬉しいです」


「この前、包丁を見立ててくれたお礼にと思って。包丁は家で重宝しているよ。……まだ慣れないこともあるけど」


「ありがとうございます。会社のお弁当に使います!」


 弾けるような反応が可愛いなと感じた。きっと年下で恋愛対象ではないから、微笑ましい目で見てしまうのだろうか。



 ○クラブハウスサンドのレシピ

 食パン(8枚切)…3枚

 トマト(大)…1/2個

 レタス…2枚

 卵(M)…1個

 ベーコン…2枚

 塩胡椒…適量

 バター…適量

 サラダ油…適量

 作り方

(1)フライパンを熱し、サラダ油を引いて目玉焼きを作る要領で卵を割る。白身に火が通ったら黄身を崩してひっくり返す。フライパンに残っている油をキッチンペーパーで拭いた後に、ベーコンを焼く。

(2)トマトは1センチ位に薄く切る。レタスは洗ってから千切る。

(3)サンドイッチ用のパンをこんがりとトーストする。

(4)一枚目のパンの片面にバターを塗り、レタスとトマトをのせる。

(5)二枚目のパンの両面にバターを塗り、目玉焼きとベーコンをのせる。

(6)三枚目パンの片面にバターを塗って蓋をする。

(7)パンをバツ印のように左右斜めに切って、盛り付けて完成。切るときにサランラップできつく包んでおく方が具がまとまって切りやすい。


 ○コールスローサラダのレシピ

 キャベツ…1/4個

 ニンジン…1/4本、小さいニンジンなら1/3本

 コーン…大さじ2

 マヨネーズ…大さじ3

 お酢…大さじ1

 塩胡椒…少々


 作り方

(1)キャベツはせん切りにする。にんじんは皮をむき、せん切りにする。

(2)1をボールに入れて、塩を入れて混ぜてから十五分くらい置いて水分を出す。

(3)2を水洗いしてから水分を切り、お酢を大さじ1を回し入れてから再度水気を切る。お酢を入れるのは、時間が経っても水っぽくならないようにするため。

(4)水気を切ったコーン缶とマヨネーズ大さじ3、お酢を大さじ1を入れて、塩胡椒で味を整えれば出来上がり。


*おまけ 〜余った食パンの使い道〜


「クラブハウスサンドってパンを三枚使うじゃない? 8枚切りのパンだと、二人分作ったとしても二枚余ってしまわない?」


 片付けをしながら、素朴な疑問を福留くんに問う。


「クラブハウスサンドは分厚さの関係で、6枚切りよりも薄い8枚切りの方が適していますので、どうしてもそうなってしまいますよね。残った二枚はサンドイッチを作るくらいしか活用方法は知らないです。パン屋さんで切ってもらえる場合は調節できるかもしれませんが」


「パン屋さんで買うことなんて、あまりないかなぁ」


 アパートの近所には、コンビニか小さなスーパーしかなくて、足を伸ばしてパン屋さんに行くことはあまりない。


「それなら8枚切りのパンを使って、余ったパンは……そういえば『りんごバター』ってご存知ですか?」


「りんごバター?」


 聞き慣れない言葉に耳を疑う。新商品の一つなのだろうか。


「煮詰めたりんごにバターを合わせたもので、一見ジャムみたいなものです。長野県の「ツルヤ」というスーパーがブームの火付け役となっているのですが、通販でも買えます」


「そのりんごバターが役立つの?」


「りんごバターを塗ってトーストすると、アップルパイのような風味を味わえるのですよ」


 福留くんの顔が幸せそうに歪んだ。

 アップルパイ……? 手軽に食べれるならばぜひ食べてみたい。


「美味しそうだね」


「サンドイッチで使わなかったパンの耳を使ってもよくて、お手軽なお菓子が出来上がりますよ」


「……食べたばかりなのに、食欲が復活してきちゃった」


 福留くんの美味しそうな食レポに刺激されてお腹が鳴りそうだ。

 料理好きなのに、スラッとした体型を維持できるのは尊敬する。


「そうだ、家にあるので今度持ってきてみましょうか」


「わざわざ持ってきてもらうのって手間じゃない?」


「いえいえ大丈夫ですよ。小さいものですし」


 福留くんの提案に甘えることにする。次の料理講座が楽しみだ。

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