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お料理好きな福留くん  作者: 八木愛里
エピローグ

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32/34

32.エピローグ

 

 社内のリクリエーションでバーベキューが開催された。バーベキューのできる公園を貸し切りにして、ガヤガヤと盛り上がっている。三月後半のまだ肌寒い季節だったが、熱々の食べ物とアルコールで、それほど寒さは感じなかった。


 福留くんは網でお肉を焼いている秋山課長に声を掛ける。福留くんはジーンズにパーカーのスタイルで、休日の見慣れた格好だった。


「焼きそばを作りましょうか」

「福留、頼むわ」

「はい」


 福留くんが鉄板に油を敷くと、油の音がしてきた。


「福留くん、肉を入れちゃっていい?」


 私は豚肉を持ってきて、福留くんにお手伝いを申し出る。


「お願いします」


 ザアッと豚肉を入れると、油の上で肉が跳ねた。その美味しそうな香りに、杉原さんや秋山課長も幸せそうな顔になる。


 福留くんは手際よく塩胡椒を振って、菜箸で肉をひっくり返しながら焼いていく。肉の次は野菜だ。切られた野菜ともやしの入っている野菜ミックスの封を開けた。


「野菜も入れるね」

「お願いします、あとは時間勝負ですね」


 本当は野菜を切りたいのだけど、今日は沢山いるし仕方ない。肉からしみだした油の上に野菜を入れると、福留くんはしばらく待ってから混ぜ始めた。その方が、肉の油が野菜にいきわたるからだ。


 普段から一緒に料理をしているからか、私たちは阿吽の呼吸だった。材料を追加で入れる時に、福留くんが少し手を止めてくれるのが愛おしい。


 焼きそばのソースを入れると香ばしい香りが漂って来た。

 私と福留くんの息の合ったやり取りを眺めていた秋山課長が、呟く。


「なんだか、随分前と変わったね、真島くん」

「そうですか?」


 私はそう問いながら、少し嬉しかった。

「もしかして、二人って……」


 と、杉原さんがコッソリと話しかけてくる。

 私と福留くんは、顔を見合わせる。付き合っていることは会社では内緒だったけれど、もう、みんなに言ってもいいかなと思った。


 秋山課長や杉原さんが、わぁ、と歓声を上げる。杉原さんはすこし目が赤くなっていたけれど、無理にでも笑ってくれた。こんなにいい子なら、また別の素敵なご縁があるのだろう。


 その日以後、私たちは公認の仲となった。私たちはこれからも一緒に料理を作っていく。やがては、私達二人のためではなくて、私達二人の子どものために。


(おわり)


最後までお読みいただきありがとうございました。

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