第45話「強襲、再び」
「うわっ!」
「きゃあ!」
ボクとアーニャは悲鳴を上げて、身を守ろうとしゃがみこむ。
吹き飛ばされそうな突風。
地面の石畳が捲り上がりそうなほどの振動。
ボクは目を凝らしながら、ミクのほうを見た。
「ちっ、くそ!」
ミクは精悍な顔をして手をかざしながらも、忌々しそうに舌打ちをする。
彼女の呼び出した式神、…武者甲冑を来た三体の武人が、ボクたちを守っていた。だが、武人達は少しずつ押され始め、刀も勢いに耐えることができず激しく揺れている。
「ったく、冗談じゃないわよ! Aランクの式紙を同時に三枚も使ってるのよ! それで、なんで押し負けるわけ!」
ミクは叫びながら、両手を前へと突き出した。
三体の武人は態勢を立て直そうと、刀を重ねて一点集中の姿勢に入る。
だが、既に遅かった。
武人達の刀が徐々に曲げられていく。
身に着けている甲冑も、風圧に押されて霧散し始める
「くそっ、弾かれる! ユキ、アーニャ、伏せて!」
ミクの叫び声を聞いて、ボクはアーニャを庇うように地面へと倒れこむ。
その瞬間。
三本の刀は、音もなく折れてしまった。
そして、轟音を立てる風の前に、武人達は朽ちて消え去った。
全てを切り裂くような豪風が、ミクへと迫り来る。
だが、ミクは真正面を睨みつけると、足元を固めて腰を下ろしてー
「せいやっ!」
ミクが、その迫り来る何かに向かって、拳を放った。
キィィィン!
金属が捻り切れたような音が響く。
ミクの放たれた拳と共に、ボクたちを襲っていた風が消滅した。それは、とてつもなく重いものを弾き飛ばしたような衝撃音だった。
静寂に包まれる広場。
その中で、ミクが苛立つように呟く。
「…ったく。見れば感覚的にわかるか。これじゃ、ユキの言うとおりじゃない」
ミクは気だるそうに目の前の地面を睨みつける。
ボクもつられるように、立ち上がりながら、それを見た。
「…これって」
ボクの声は恐怖で震えていた。
そこに突き刺さっていたのは、一振りの剣だった。
まるで鉄の塊だ。刃渡りは身の丈よりも大きく、その重量はボクの何倍もあるだろう。
狂戦士だけが装備できる、狂気の剣。
…『十人委員会』の仲間。ゲンジ先輩の『ベルセルク』だった。




