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第68話「たまには、昔話でも…」

――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


 ふと、昔話を思い出す。

 それはまだ、この世界に来る前の、ゲームだったころの《カナル・グランデ》の話だ。ボクたちは、とある戦場に立っていた。


「おいおいおい! こんな状況、どうすればいいんだよ!」


「前線が崩れました! 攻撃がこちらに集中してきます!」


「くそっ。他のギルドは何をやっているのだ!」


 音声チャットを介して、メンバーたちの焦りの声が聞こえる。

 砂と枯草だけの荒野。

 そのフィールドに、何千、何万というプレイヤーが集まって、たった一体のモンスターと戦っていた。とてつもなく巨大な城型のモンスター。その大きさは山のようであり、普通の攻撃ではダメージを与えられない。まるで運営側からの挑戦状ともいえる超ド級のモンスターに、数多くのプレイヤーが参加した。その中には、実力派ギルドも勢揃いしていて、かつてない規模の戦闘となった。


 序盤は優勢だった。

 有力ギルドが集まっていたせいか、屈強な前衛が何百人と束になってモンスターの進行を防いだ。その隙に、後衛から強力な魔法攻撃を放ち続ける。


 だが、モンスターの体力が少なくなり、暴走状態に入ると優劣は一転した。前衛を支えていたプレイヤーが次々と倒されていたのだ。そのせいで、後衛にまでモンスターの攻撃が届くこととなる。


「だぁぁ! こんな山みたいな奴、どうすれば倒せるっていうのよ!」


「ダメだ! 他の奴らがパニックになっている。これじゃ、連携がとれねぇ!」


「み、皆さん! お、お、落ち着いてください! 作戦を考えますので―」


 作戦参謀役の誠士郎先輩が、動揺した声で叫ぶ。

 だが、そうこうしているうちに、他のギルドのメンバーが次々と脱落していった。役割を忘れて逃げ惑うもの、さっさと諦めて戦闘から離脱するものまで。


 そんな混乱した状況のなか。

 音声チャットの向こうにいるジンが、大声で叫んだ。


「作戦だぁ!? んなもん関係ねぇ!」

「突撃だ! 突撃するぞ!」

「我らの大和魂を見せてやれ!」


 大混乱となった戦場で、ボクたちのメンバーだけがモンスターへと向かっていく。


「ちょ、ちょっと待ってください! 今から作戦を考えますので―」


「それは必要ありませんわ」


「……いつものこと」


「……あぁ」


「おうよ! 俺たちはいつだって、最後はメンバー全員で突撃してきただろう!」


「あーはっはっは! もう、どうにでもなれッス!」


 メンバーたちの楽しそうな声を聞きながら、ボク自身も突撃の群れに混じっていく。

 いつも通りだった。

 最後には、作戦と呼べるものはなく。

 ただ、メンバー全員で活路をこじ開けていく。

 ……それは今も変わらない。



――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 



「はぁぁっ!」


 両手に持ったヨルムンガンドで、アーニャのことを狙い撃つ。

 残弾が少ないとか、あとマガジンが1つしかないとか、そんなこと考えなしに。ボクは引き金を引き続ける。ダン、ダン、ダンッ、と放たれた銃弾は彼女へと吸い込まれていくが、『王家を守る盾サン・グロリオーザ』という自動防御魔法によって防がれてしまう。


「ちっ!」

「ユキッ! 後ろだ!」


 天羽会長の声に慌てて後ろを振り向く。

 そこには樹の剣から伸びた巨大な植物が、こちらへと向かってきていた。ボクは急いでスキルを発動させて、壁伝いに天井へと逃げ込む。


「っ! 危ない危ない!」

「くそ! この野郎!」


 天羽会長が魔銃ヘルを撃つ。

 対戦車ライフルから放たれた銃弾は、樹の剣を遠くへと弾き飛ばし、それと同時に巨大な植物の姿が消えた。それを見届けると、会長は銃のボルトレバーを引いて、空薬莢を排出。そして、レバーを押しこんで再装填させた。


 ボクは一度、地面に下りて会長の隣に立つ。最後のマガジンを手に取るが、再びポケットへと戻した。まだ、使うときではない。


 状況は、良くなかった。


 完全に手が足りなかった。ひとつひとつなら対応できる『王の剣サンマルコ』でも、12本を同時に使われたら逃げるしかない。体力と気力、そして残りの銃弾を消耗させながら、息のつまる攻防が続いていた。


「まだまだぁ!」

「オラオラ! 休んでいるんじゃねぇぞ、お姫様!」


 ボクたちの視線の先では、アーニャが辛そうに肩で息をしていた。額には冷や汗をかいていて、表情はかなり険しい。『王の剣』と『王家を守る盾』の同時使用は、それだけ負担がかかるということだろう。ボクたちがアーニャが疲れている、今こそ勝機だと思い、果敢に攻め続けていた。


 何度、倒されようとも。

 何度、吹き飛ばされようとも。


 歯を食いしばって立ち上がる。言うことを聞かない体に鞭を打って、折れそうになる心に叱咤して、再び走り出していく


「はああぁぁっ!」

「オラオラオラッ!」


 いつものように活路をこじ開けようと、何度も、何度も足掻く。格好悪いな、と思いながらも、それでも諦めない。


 怖がらない。

 怯まない。

 恐れない。

 意地と虚勢の二本足で、アーニャへと挑み続ける。

 最後の一瞬に、全てを賭けるために―


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[一言] ガンガンいこうぜ
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