第27話「有頂天に達した!」
テンションが有頂天に達しているジンには悪いけど、この下らない争いを終わりにさせないと。…はぁ、こんなときに御櫛笥さんがいてくれたら、どんなに助かったことか。
「ね、ねぇ。二人とも。その辺に…」
ボクの声は届かない。
二人とも周囲のものを撒き散らしながら、苛烈な戦いを続けている。
コンッ。
石鹸が飛んできて、ボクの頭に当たった。
「…あのね、そろそろ」
コンッ、コンッ。
小さな置物やたわしや飛んできて、ボクの頭に当たる。
「…だからね、いい加減にしないと」
ゴンッ!
金製の桶が飛んできて、ボクの頭に直撃した。
さすがに痛すぎて、頭を抱えて悶絶してしまう。
「ぐぐっ、…いい加減に」
カチン、とボクの中でスイッチが入る。
先ほど飛んできた桶を手にとって、暴れまわる二人を睨みつける。そしてー
「いい加減にしなさいっ!」
ブンッ!
金製の桶をジンに向けて放り投げた。
「え?」
突然のことで不意を突かれたのだろう。振り向いたジンの顔面に、金製の桶がブチ当たる。
カーーン。
小高い音がバスルームに響いた。
「二人とも、いい加減にしなさい! ケンカするのもわかるけど、周りの人の迷惑も考えてよね!」
ザパンッ!
その勢いのままバスタブから上がってしまった。ぽたぽたと水滴を垂らしながら、生まれたままの姿を二人にさらしてしまう。
「お?」
「あっ?」
ジンとアーニャの視線が突き刺さる。
「きゃっ…」
思わず変な声が出てしまった。
恥ずかしくて、かぁ~と顔が赤くなってしまう。慌てて大事なところを隠すが、それでもじっと見てくる二人を見て、頭に血が昇っていく。
「…この―」
そして、そのまま勢いに身を任せて。
ジンに向かって、飛び蹴りを放った。
「こっちを見ないでよっ! バカっ!」
「ぐおっ! なんで俺だけーーーーーーーーーーーーっ!」
グシャーン!
蹴りをモロに食らったジンは、そのままバスルームの扉に激突していった。その際に舞ったバスタオルを掴むと、慌てて体を隠す。
「ぐ、ぐおぉぉぉ。まさか、このジンが…、このジンがぁぁぁ!」
無駄に派手な捨て台詞を吐いて、ジンは崩れ落ちていった。
「ジン、うるさい。少し黙ってて」
ボクは呆れてため息をはく。
「まったく。アーニャもだよ。ジンの悪ふざけに付き合わなくたっていいんだから」
軽く叱りつけるような口調で問いかけるが、アーニャからの返事がない。
不思議に思って振り返ってみると、アーニャがボクのほうをじっと見ていた。
「アーニャ?」
「…ユキの、…ユキの裸」
「へっ?」
「…初めてみた。…ぐへへ、綺麗な肌! 引き締まったウエスト! なだらかなお尻。そして大きな、お、お、おぱぁーっ!」
ぶはっ!
アーニャが大量の鼻血を吹き出しながら倒れていった。その表情は、至福に包まれたように歓びに満ちていた。
その光景に、ボクは頭を押さえずにはいられない。
「…ボクに周りには、まともな人はいないのかな」
壁にめり込んでピクピク痙攣しているジンと、満足気な表情で鼻血を垂れ流しているアーニャを見て。
ボクは、結構マジに。この先のことが心配になっていた。




