第16話「温泉! 合宿! 仲間との絆を確認する絶好の機会! 湯上りの姿で卓球をしたり、寝るまで枕投げをしたり! もちろん、ポロリもあるZE☆!」
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固有スキル『絶頂を続ける幸運の星』。
『トリックスター』だけが取得できるスキルで、超難関クエストを制覇したものだけが手にすることができる。そのクエストの内容は、神とのギャンブル勝負。天界にいる神々とギャンブルで戦っては、勝利を積み上げていかなくてはいけない。一度でも負けると、最初からやり直しなので、習得には時間と根気を必要とするとか。
目の前にいる岩崎快司君が、どれほど大変だったかは知らないが。その苦労した話は聞いたことがなかった。
「…ということで合流しました、岩崎快司ッス! 『十人委員会』の『No.10』。今年16歳になるピチピチの高校一年生! 座右の銘は『おもしろき、ことなき世を、おもしろく』。好きなことはギャンブルで、尊敬している人は赤木しげる。どうぞ、よそしくお願いしまッス!」
十人委員会の会議室で、快司君はいつものように大声で挨拶をした。
彼の性格を知っているメンバーは慣れたものだが、初対面のアーニャだけは少し面食らっているようだった。
「え、えーと、よろしくね」
「うっす! お姫様のアーニャさんッスね。どうか、お見知りおきを!」
キラン、と歯を輝かせて親指を立てる。
「…ところで、その尊敬している人? 赤木しげるって誰なの?」
「はぁ!? ちょっと、姫さん! 赤木しげるを知らないんッスか!? あの闇に降り立った天才雀士を!」
信じられない、といわんばかりに快司君は天を仰ぐ。
「はー、ないわー。姫さん、それはないわー」
「え? え、えっ?」
あからさまに落胆してみせる快司君と、おたおたと慌てるアーニャ。そんな二人を見て、誠士郎先輩が静かに告げる。
「…アーニャさん。別に気にしなくてもいいですよ。その人は自分のペースでしか話しませんから」
「あー、誠士郎先輩! それって、マジ酷くないッスか!?」
「…快司君。その話し方は止めてください。敬語を使っているのか、相手を侮辱しているのか、わからなくなります」
「ぶはっはっは! それは無理ッスね!」
快司君はゲラゲラ笑いながら、空いている円卓の席へと座る。場所的には、ジンと有栖の間だ。
「…何はともあれ、これで9人が揃ったわけだな」
ゲンジ先輩が頭痛を堪えるような顔で、快司君のことを睨む。
「それで、これからの予定だが―」
「はいはい! オレっちに、良いアイデアがあるッスよ!」
勢いよく手を上げる快司君。
…良い予感がまるでしない。
「快司。言っておくが、これは十人委員会の会議なのだぞ。ちゃんと意味のある発言を―」
「皆でどっか遊びに行きませんか!?」
…話を聞けよ。
額に青筋を立てているゲンジ先輩を見て、ボクは静かに毒づく。
「いやー、前々から思っていたッスよ。皆が揃ったら、パァーと遊びに行きたいと」
「…快司君。僕達は遊んでいるわけでは―」
「温泉とか、どうッスか!? 俺っち、良い温泉を知ってますよ!」
…人の話を聞けよ。
誠士郎先輩の言葉を遮って、快司君は強引に話を捻じ込む。
「なんか良くないッスか? 皆で温泉旅行! まるで部活の合宿みたいで!」
ダンッ、と円卓に足をのせて、皆に向けて親指を立てる。
「温泉! 合宿! 仲間との絆を確認する絶好の機会! 湯上りの姿で卓球をしたり、寝るまで枕投げをしたり! もちろん、ポロリもあるZE☆!」
キラン、と歯を光らせてはウインクを送る。
本人に悪気はないのだろう。
でも、だからといって。放置していてもいいわけがない。
「…」
「…」
カタッ、とゲンジ先輩と誠士郎先輩が立ち上がる。
そして、目にも止まらない速さで、快司君のドヤ顔に盛大な拳を入れた。
「いい加減にしろ、この一年坊主がっ! その笑顔が腹立つんだよ!」
「ちょ、ちょっと、先ぱ、…ぶほぉ!」
ゲンジ先輩のボディーブロー。
「何が、…『ポロリもあるZE☆』です! 最後の『☆』は何ですが! いちいち親指立てないと話せないのですか!」
「た、たんま! …ぐへぇ!」
誠士郎先輩の鼻柱を折る右フック。
「尊敬する人は赤木しげるだぁ!? 貴様は名前どおり、地下の強制労働施設で働いてろ!」
「1050年、地下に送ってやります! そこで、その精神を叩き直してきなさい!」
「ま、ま、待ってくださ―」
必死に逃げようとする快司君。
だが、十人委員会が誇る前衛職の前には、無駄な足掻きであった。
「「粛清してやるっ!」」
「ぴ、ぴぎゃーーーーーーっ!」
ゲンジ先輩と誠士郎先輩。2人の顔面パンチを食らった快司君は壁へと吹き飛んで、ドカンと音を立てて激突する。そのままズルズルと床にヘタリこみながら、こちらへと手を伸ばす。
「…ず、ずみばせんでしだ。…ちょーしに、のってばじだ」
がくっ、とそのまま動かなくなる。
メンバーと合流できたことは嬉しいけど、こんなに騒がしくなるのは御免だ。
倒れた彼のことを心配する仲間は、誰もいなかったー




