第15話「最後のメンバー、岩崎快司」
「ちぃーす、ではない! 貴様今までどこにいた!? 岩崎快司!」
青筋を立てるゲンジ先輩が、快司君へ怒りを露にする。
「まぁまぁ。ゲンジ先輩、そんなに怒んないでくださいッスよ~。あれッスよ。この世界に来て、色々と試してみたとか、そんな感じッスよ。…っつか、ゲンジ先輩の格好、マジかっけ~ッスね。スマホに撮ってもいいッスか?」
「良い訳ないだろうが! なんだ、そのふざけだ態度は! 我らがどれほど苦労していたか―」
「おーっ、やっぱユキ先輩は可愛いッスね~」
「話を聞け、この馬鹿者!」
本気で怒るゲンジ先輩に、ゲラゲラと笑う快司君。
そういうボクも、快司君に褒められて内心嬉しいわけで…
「そ、そうかな~?」
「いや、マジで可愛いッスよ! どうッスか? この後、飯でも一緒に?」
「あー、ごめんなさい。私、男の人に興味はないの」
「あちゃー、ソッコーで振られちゃった! でも、大丈夫! そんなユキ先輩も大好きッス!」
キランと歯を光らせて親指を立てる。
…岩崎快司君。
『十人委員会』で唯一の1年生。
合流できていなかった最後のメンバー。そして、喧しいほどにハイテンションな『トリックスター』だ。
「…で、今まで何をしていたのだ?」
黒服のディーラーや他の客が見ている中、ゲンジ先輩は淡々と問いかける。
「だから、言ったじゃないッスか。色々と試してたって」
よっこいしょ、と声をかけて快司君は立ち上がる。
「オレっちの固有スキル、『絶頂を続ける幸運の星』がどこまで通用するのか、確かめたいじゃないッスか。だから、この国のありとあらゆるカジノに顔を出しては、博打で生活費を稼ぐ日々をー」
…人間のクズ代表みたいなことを言っているよ。
「そしたら、『カジノ四天王』とかいうイカサマ集団がいるっていうじゃないっッスか。こりゃ、正義の味方としてお仕置きをしてやらないと思って。バッタバッタと悪人を裁く毎日を―」
「もういい! それ以上、口を開くな」
ゲンジ先輩が眉間に指を当てて唸っている。
そんな彼を見て、代わりにボクが問いかける。
「だったら、ボクたちが探していることも知っていたよね?」
「もちろん、知っていたッスよ! ユキ先輩がゲンジ先輩と戦ったことも、リヴァイアサンと激戦を繰り広げたことも、有栖先輩が暴走して痛い目にあったことも。全部、知ってるッス」
「じゃあ、どうして手伝ってくれなかったの?」
ボクが首を傾げると、快司君はゲラゲラ笑いながら言った。
「いやー、行こうと思ったんッスけどね。オレっちが行ったところで、戦力的に変わんないっつーか。正直メンドーっていうかー」
「は?」
その答えに、少なからず苛立ちを覚えた。
「ほら、オレっちは『トリックスター』だし、ユキ先輩みたいな万能キャラでもなければ、ゲンジ先輩みたいな前衛キャラでもないわけで。だから、別に合流しなくてもいいかな〜、なんて」
テヘッ、といいながら舌を出す。
その悪びれない様子に、カチンとスイッチが入った。
「…で?」
「うん? それだけッスよ?」
「…他に言い残すことはないの?」
「他ッスか? 他には…」
うーん、と悩んでから、思いついたように口走った。
「あっ! ユキ先輩のアイドル姿、マジでヤバかったッス! あのエロ可愛い姿に夜のオカズに苦労することは―」
ピキィン、と閃光が走った。
地を駆けて、そのヘラヘラしている顔面に向けて、膝蹴りを叩き込んだ。
「いっぺん、死になさい!」
「ぴぎゃーっ!」
男の体は窓ガラスを突き破り、大運河の水面へと突き刺さった。ザパーンと波飛沫を上がり、しばらくして水死体が浮き上がる。
「はぁ、…マジで信じられない」
長い黒髪を弄びながら、私は静かに罵るのだった。




