第7話「ポーカーで気晴らしを…」
「それって、なに?」
「トランプだ。これで『ポーカー』でもしようではないか。少なくとも、気晴らしくらいにはなるだろう」
「…『ポーカー』って、5枚のカードで同じ数字やマークを合わせて勝負するやつだよね?」
「うむ。2枚が同じ数字なら『ワンペア』。ペアが2つあれば『ツーペア』。同じ数字が3枚なら『スリーカード』。…とより高度な役を競っていくものだな」
ゲンジ先輩は簡単に説明しながら、カードを1枚ずつメンバーに配っていく。
説明を補足するなら、数字が順番に並んでいるのが『ストレート』、全部同じマークだったら『フラッシュ』。
さらに強い役としては、ワンペアとスリーカードを合わせた『フルハウス』。同じ数字が4枚ある『フォウカード』。数字が順番に並んでいて、全部同じマークとなっている『ストレートフラッシュ』などがある。
「では、皆にカードが行き届いたな」
ゲンジ先輩がメンバー全員を見渡す。
「お遊びだから、掛金はなしとして。…カードの交換に移ろうか」
『ポーカー』はカードの交換を認められている。
この国のルールは、ボクたちの世界と同じ。カードの交換は一度。その後に掛金を決めていくのだが、今は関係のないことだ。
「カード交換は時計回りにしていくぞ。…誠士郎、何枚だ?」
「ボクは3枚を交換します」
そう言って、誠士郎先輩は手札のカードから3枚をテーブルの上に出す。その時は、数字が見えるほうを上にする。ここが重要で、場に放たれたカードから、残されたカードを推測していくのだ。記憶力と確率の推測。そして、心理的な駆け引きが『ポーカー』の醍醐味だ。
「…ユキは何枚交換するのだ?」
「えーと、ボクも3枚を」
手札から数字がバラバラなカードを出して、新たにゲンジ先輩から3枚のカードが配られる。…うん、ツイてる。
「それでは勝負だ。さて、誰から―」
「あたしからでいいよ。どうせ、役なしだし」
隣に座っていたミクが、諦めたように手札をさらけ出した。数字もマークもバラバラなので、役が成立していない。
「…わたしも」
「ふむ。我もだな」
続けて、コトリとゲンジ先輩が手札のカードを開いていく。ミクと同じように、数字がバラバラの役なしだ。この場合は、一番強いカードがそのまま役として数えられたりもするけど、他の人が役を作っている場合は関係ないか。
「じゃあ、次は俺だな。『ワンペア』だ」
「僕もですね」
ジンと誠士郎先輩が手札を開ける。
誠士郎先輩は『5』の『ワンペア』で、ジンが『J』の『ワンペア』だ。この2人より強いのは『ツーペア』以上だが。
「…」
碓氷涼太は何もいわない。
黙ったまま差し出された手札には『4』と『8』の『ツーペア』ができていた。残っているのは、ボクと有栖。そして、一番楽しそうにしているアーニャだった。
「ちっちっち。みんな、甘いよ~」
手に持ったカードで、笑顔の下半分を隠している。どうやら、よほど良い手札らしい。勝利を確信しているようだった。
「ふふっ。さぁ、みんな! 手札を見せて!」
アーニャの声に、ボクと有栖が手札を円卓に置いていく。
ボクのカードは、…『A』の『スリーカード』だった。
「あらっ。私と同じですわね」
そう言って、有栖が手札を見せる。なるほど、『9』の『スリーカード』ができていた。ただ、カードの強さでいえば『A』のほうが強いので、ボクのほうが優位といえる。
…というか、この結果って。
ゲームだった頃の『運」のパラメータが、そのまま反映されているだけじゃないのか?
「それでで、アーニャはどうなの?」
これでアーニャの手札が『スリーカード』より弱かったら、ボクの勝ちとなる。だけど、先ほどの自信から見るに、それはなさそうだ。
「ふふ~ん。見る? 見ちゃう?」
軽く鼻歌を歌いながら、彼女は1枚ずつカードを見せていく。
…『クラブ6』。
…『スペード7』。
…『スペード8』。
…『ダイア9』。
…『ハート10』。
数字が順番に並ぶ『ストレート』が成立していた。
「おっ、アーニャ。すごいね」
「でしょ!」
アーニャが自信満々に胸を張る。
「どうよ。これだったら、皆にも負ける気がしないよね。…なんだったら、何か賭ける?」
「…王女様が自分から賭け事を始めるのは、どうかと思うけど?」
「別に、お金を賭けるわけじゃないよ。でも、何かご褒美があったほうが盛り上がらない?」
「まぁ、…そうだけど」
確かに、チップもなしに『ポーカー』をやっても、どこか味気ない。
「ふむ。だったら、こういうのはどうだ?」
ゲンジ先輩が皆のカードを集めながら口を開く。
「次の勝負。勝者には、ユキから『ほっぺにチュー』をしてもらえる、というのは?」
ボクの尊敬する、ゲンジ先輩が。
とんでもない事を言い出していた…




