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第51話「姉妹の契約」


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


「皆さん、ご迷惑をかけました。本当にごめんなさい」


 翌日の『十人委員会』の会議室で。

 みんなに向かって深々と頭を下げている神無月先輩の姿があった。

 美しい大人の女性といった彼女だが、その服装は本来のエルフらしく慎ましいものに変わっている。色気のない麻のローブに、肌の露出が極端に少ない装い。妖艶な撫子色の髪も、綺麗に整えられている。


「…」


 その後ろに立っている碓氷君は何も言わない。

 大型の魔導杖を片手に、じっと先輩のことを見守っている。


「ははっ、大丈夫ですよ。もう過ぎたことですし、気にしてませんって。…へくちっ!」


 神無月先輩に声をかけながら、くしゃみをしてしまう。


「まぁ、あたしたちも色々あったからね。もうしないって約束してくれれば、それでいいんじゃない。…へくしょんっ!」


「うむ。この世界に来て戸惑うのは皆同じだ。手を取り合っていかねばならんな。…ぶあっくしょんっ!」


「源次郎の言うとおりです。これからは連携を取り合って問題を解決していきましょう。…は、は、はっくしょんっ!」


 ミク、ゲンジ先輩、誠士郎先輩と立て続けに、くしゃみを連発する。寒気に肩をブルブルと震わせて、熱で思考が停止しそうだ。

 …氷付けにされたボクたちは、もれなく風邪をひいてしまっていた。


「はははっ。意外に皆って、体が弱いんだね」


 ただ1人、アーニャを除いては。

 彼女だけはいつものように、猫耳パーカーにホットパンツという軽装のままだった。…なんで、この子だけ無傷なの?


「じゃあ、話を戻すぜ。神無月先輩と碓氷は『十人委員会』に合流するってことでいいんだな?」


 鋭い口調でジンが2人に問いかける。

 薄情にもボクたちを置いて逃げたこの狼男は、何食わぬ顔で会議に参加している。いつか絶対に仕返ししてやる。


「はい。不肖、神無月有栖。『十人委員会』のために身を尽くす所存です。…この世界にいるまでは」


「…」


 碓氷涼太は何も言わない。

 だけど、神無月先輩に同調するように、こくりと頷いた。


「…と言われもなぁ。悪いが、ちょっと信じられないっつうか」


 ジンが言葉を濁しながら頭をかく。

 仲間を裏切ったような行為に、まだ納得できていない様子だった。


「また、いつ心変わりするかわかったもんじゃないぞ」


「…大丈夫じゃない? 今度は碓氷君がちゃんとついていてくれるし。こんなことは二度と起こらないよ。…へくちっ!」


 ボクは親友を諭すように声をかける。

 すると、それまで黙っていた神無月先輩が、ある提案を持ちかけた。


「ふふっ、陣ノ内君が言っていることはもっともです。ですので、私の能力に制限をかけて、『十人委員会』の許可なく使用できないようにしたいと思います」


「能力に制限? そんなことができるの?」


「はい。わたくしの魔法を応用すれば可能です。この場合は、ギルドマスターである優紀君が適任ではないかと?」


「…ボクは構わないけど。皆はそれでいい?」


 ぐるりと見渡すけど、誰も反論しない。

 唯一、渋い顔をしていたジンも、口をへの字に曲げたまま何も言わなかった。


「…じゃあ、神無月先輩がそれでいいなら。えーと、先輩の能力に制限をかけてボクの許可なく使用できない。これでいいんだよね?」


「はい」


 神無月先輩は短く答えると、楚々とした足取りでこちらへ向かってくる。


「それでは、優紀君。両手を出してください」


「こう?」


 ボクは言われたとおりに、先輩に向けて両手を突き出す。


「それでは、わたくしの後に続けて唱えてください。…黒い茨よ。彼の者を我がものとせん」


「えっと、…『黒い茨よ。彼の者を我がものとせん』」


「汝、我が隷となるならば、服従の言葉を示せ」


「…『汝、我が隷となるならば、服従の言葉を示せ』」


 …あれ?

 …この詠唱文。どこかで聞いた気がする。


「ここに【姉妹】の契約が成立した。汝は我が【妹】であり、我は汝の【姉】である」

「あっ、えっと、…『ここに【姉妹】の契約が成立した。汝は我が【妹】であり、我は汝の【姉】である』…って、ちょっと待って!」


 …え、なに!?

 …【姉妹】!?

 …【妹】に【姉】!?


 なんだかものすごく嫌な予感がして、慌てて両手を振りほどく。

 だが、…すでに遅かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] これ以上反逆するつもりはない、が妹はもらっていく そういうことかw
[一言] ちゃっかり姉妹の契りをしてるのw草w
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